器集めが趣味なのだが、長く使っているうちに欠けてしまった器がいくつかある。前から興味があった「金継ぎ」をやってみようと思ったのだが、市販の金継ぎキットは1万円ほどして高いうえに、工程が多く非常に難しい。

以前、K.Masami記者が本格的な金継ぎにチャレンジしていたが、なんと10日もかかったという。記事を見て「自分のような不器用モンは無理だ」と思っていたのだが……。

初心者でも金継ぎができるという「大人のおしゃれ手帖特別編集 簡単! おうちで金継ぎ」なるムックが出ている。価格は4800円。高いけど、他の金継ぎセットに比べるとこれでも約半額……。

・実はロングセラームック

この「大人のおしゃれ手帖特別編集 簡単! おうちで金継ぎ」ムックが発売されたのはコロナ禍の2020年8月。すでに発売から4年が経っているのだが、増刷を繰り返している実用系ムックとしてはかなりのロングセラーである。

キットに含まれているのは

・合成うるし
・うすめ液
・金の粉(真鍮)
・銀の粉(アルミニウム)
・竹串

の5つ。ただし、このセットでできるのは器のヒビの修復だけ

割れた器や欠けた器の修復には他に道具が必要なので要注意。

私は「欠け」を修復したかったので本の説明に従い「エポキシパテ」と「紙やすり」、「カッター」を用意した。



・器の欠けを修復する

ムックの説明によると ヒビ→割れ→欠け の順で金継ぎはレベルが上がっていくらしい。私が金継ぎしたい器は全部で5個。

湯呑類はまだカンタンそうなのだが……。

難しそうなのが、フチがヒラヒラした輪花皿。角が多いので、引っ越しなどでぶつけて欠けてしまったのだ。


ちなみに、ムックで紹介されていたのは「エポキシパテ」を使った欠けの修復だったのだが……。

実はこのエポキシパテは食器などには使えないということが全ての作業が終わったあとに発覚。食器に使うなら、食品衛生法に適応したエポキシパテが必要らしい。

そういうことはしっかり本に書いといてほしかったよおおお!!!!

私は食器に使用してしまったが、みなさまは観賞用の器、花瓶などに使うようにしてほしい。

さて、「エポキシパテ」はボンドのようなものを練り合わせて、器の欠けた部分にパテを貼る。

このパテを小さく練って欠けに貼り付ける作業が意外と難しい。なんか欠けた部分よりもパテを貼った面積が大きくなってしまう

しかし、さらに難しかったのがフチがヒラヒラした輪花皿の修復。

輪花皿は欠けやすいんだけど、これ素人がやっていいもの? フチのカーブに合わせてパテを貼るのが難しい。

いろいろ不安に思いつつ、エポキシパテが乾燥するまで1晩乾かします。

ちなみに、本来の金継ぎだと欠けの修復に漆塗り、刻苧(こくそ)付け、錆漆付け……などの作業が必要なうえ、その都度で乾燥に数日かかり、トータルだと1週間以上かかるのだ。ひえええ。



・乾いたパテを削る

一晩経って、パテが完全に乾いて固くなっているのを確認したら、はみ出したパテを削り取る。

ムックには「カッターなどで削り取る」と書いてあったのだが……。

乾いたエポキシパテはガッチガチなので、カッターだとめちゃくちゃ力がいる。指を怪我しそうだし怖すぎる。

どうにかできないかと美術道具専門店の世界堂に行ったところ、彫刻用品のコーナーになぜか「もんじゃ焼きのヘラ」があるのを発見。

これなら安全に固まったパテを削れるのでは……という私の予想は大当たり。カッターよりはずっと削りやすかった。

とはいえ、ガチガチのエポキシパテを削るのは根気がいる。多めにパテを貼り付けてしまうと、削るのがめちゃくちゃ大変だったし見栄えも悪くなる。

ある程度削れたら、紙やすりで仕上げて表面をなめらかにする。しかし、どのくらいの粗さのヤスリが必要なのか分からない……。世界堂にあった「神ヤス」という細かい部分を削れるスポンジ+布ヤスリの詰め合わせパックを購入。

結果として、粗めの#120で削りはじめて、#240、#400……と目の細かいもので仕上げていく感じに。

欠けが大きい輪花皿の修復はやっぱり難しかった。

花びら型のカーブに合わせて不要なパテを削っていく作業が難しい……

そして、絵付けの湯呑は釉薬にヤスリの跡がついてしまった……トホホ。

あと、削りとヤスリの作業でめちゃくちゃ肩が痛くなってしまった……!



・ようやく金を塗る!

ここまでやって、ようやく金を塗れるようになる。

キットに入っていた金粉(銀粉)と合成うるしを1:1で混ぜ合わせ、うすめ液を数滴たらして色を作っていく。

ちょっとしか使わないので、金粉と銀粉の調整が難しいな……。あと、どれくらいの粘度が正解なのかもよくわからない

とりあえずできた気がするので、竹串を使って、修復した部分に塗っていくのだが……。

パテを塗りすぎたせいで、金を塗る範囲が広くなりすぎてしまった。

自分の中では、チョンっと小さな金の点があるくらいが「粋(いき)」だなと思っていたのだが、「ここ、金継ぎしましたよ〜!」って全力で主張している感じに。

とくに欠けが大きかった輪花皿はめちゃくちゃ金の主張が強くなってしまった。作家ものの皿だったので、自分が台無しにしてしまった感もあって辛い。

雑誌に載ってるみたいにかっこよく「継ぐ」のむずすぎる!

そして、余った金粉の処理方法が書いてなかったので、最初は小皿や手から金粉が取れなくなって焦った。セットについていた薄め液を洗浄にも使うらしい……。

とりあえず、ここまでやったら1〜2日乾かして完成ということになる。


・かんたんだけど、かなり簡易版

本来の金継ぎは10日ほどかかることを考えると、このキットで紹介されているやり方なら3日ほどでできるのでかなりカンタンだと思う。

なかなか楽しかったけど、本当に簡易版のやり方だし、ムックの説明があまりにも短すぎて、ポイントがよく分からないので初心者にはやや不親切なように思う。特に、エポキシパテに関する説明などはちゃんと書いておいてほしかったな。イケアの家具の組み立てくらい説明は簡素である。

ちなみに、安さの理由は金粉は真鍮粉、銀粉はアルミニウム粉になっているからだと思われる。金の価格上昇がすさまじいので、本物の金粉はほんの少量でも1万円近くするのだ。

楽しかったけど、個人的には、失敗したら処分してもいいくらいの器で練習するのがいいかな〜と思う。

うまくやるにはコツがいろいろとありそうなので、大事な器の修復は、金継ぎ教室でプロに指導を受けてやる方が安全かと思うのでした。

参考リンク:Amazon
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.