ロケットニュース24

【検証】上司の眼鏡を凍らせてみた結果

2024年8月10日

日本で最も成り上がった男・豊臣秀吉。ある雪の降る寒い夜に織田信長の冷えた草履を懐に入れて温めておき、そこから信長に目をかけられるようになったというエピソードはあまりにも有名だ。私(中澤)も上司に気に入られたい!

とは言え、今は寒い冬どころか真夏。しかも、今年の夏は歴史に残る猛暑である。現在進行形でクソ暑い。あー、今日も今日とてアッチィーなーーー!! と、そんな時……

・Yoshioの眼鏡

ふと上司であるYoshioの机を見たところ、スペア眼鏡が置き去りにされているのを発見した。こ、これや


さっそく、無印良品にダッシュして手頃なカゴを買ってきた


このカゴにYoshioの眼鏡を設置する。


さらに、水で満たした上で……


こうだ!

ふう、これで良し。


──3日後。


冷凍庫から取り出すと、完璧に氷漬けになっているYoshioの眼鏡。氷河期のマンモスのようである。


この眼鏡にも大地を縦横無尽に走り回っている時代があったのだろうか? 雄大なる姿に、しばし、成り上がりとは別のロマンに浸った。

・本番はここから

さて置き、ここからは細かい作業になる。用意したのは発砲スチロールカッターとホットカッターだ。


共に、熱を帯びて素材を切るスタイルのカッター。こいつでいらない氷を除去して氷漬けの眼鏡の形を整えていく。


すぐには切れず、じりじりと進んでいく切れ目。氷彫刻家のように彫刻刀でいった方が早い気もするが、技術がないので仕方ない。


ただ、この方法だと時間がかかるため、当然狙っていない箇所の氷も溶けてしまう。そこで一部が完成したら冷凍庫で眼鏡を休ませる。固まったらまた作業再開。慎重に作業を進める。


部分的に削っては休ませて続きはまた明日。じりじりと、しかし確実に形状が理想に近づいていく。もうちょっと……もうちょっとだ……!


そうやって、日を跨ぎながら作業し続けて3日目、ディテールを仕上げて……


ついに完成した──。


リモートワークも多いロケットニュース24。それとなく聞いた予定では、Yoshioが出社するのは明日。ギリギリだった。しかしなんとか間に合った! 間に合ったぞ!!


そして、翌日──



Yoshio「あれ? 俺の眼鏡ここに置いてなかったっけ?」

・お探しのものはこれですか?

さっそく前の席の私に声をかけてくるYoshio。出社するなり自分のデスク周りをひっくり返して探し始める。今だ

横山やすし師匠くらい眼鏡を探すYoshioを隣の部屋に連行し、冷凍庫から例のブツを取り出す。Yoshioよ、刮目せよ。そして後世に伝えるがいい。これがロケットニュース太閤記の始まりだ。Yoshioさん、お探しのものはこれですか?



Yoshio「……」


Yoshio「違う!


遠慮すんなって。


Yoshio「目が! 目がァァァアアア!!」


ふむ、どうやら目が寒いらしい。氷に全力を出しすぎたか。それならば……


外に出ればいいじゃない。


目が寒いなら温かいところに行けばいいじゃない。幸いにして外は歴史に残る酷暑。ちょうどいいのではないだろうか。と思いきや……

Yoshio「ヤバイ! 全然関係ない!!」


・贅沢

どうやら、この熱気の中でも目が凍傷になりそうなくらい寒いらしい。周りがクソ熱い中で寒いってなんか贅沢だな。クーラーをつけて毛布をかぶるみたいな風情がある


さて置き、Yoshioが困っているのでなんとかしてあげたい。というわけで……


公園に連れて行ってみた

歴史的酷暑の中でさらに日向ぼっこ。夏の力を限界まで利用していると言える。これ以上はちょっとどうしようもないぞYoshio。どうなんだ? と、その時!


Yoshio「あ、ちょっと良いかも」

マジかよ! Yoshioいわく、氷がちょっと溶けたら良い感じになってきたらしい。「首周りから上が秋みたいな感じ」になるとのこと。このクソ暑い中で秋の快適さを得られるなんて成功と言えるのではないだろうか

・いつからだろう

なお、氷は20分くらいで溶けて、後には雨の日の野良犬みたいになったYoshioだけが残された。氷なので溶けたら当然びしょびしょになる。それだけは自然の摂理なので仕方ない。


ただ、私はYoshioの笑顔が眩しかった。びしょびしょのYoshioは太陽の光を反射していたのである

毎日が輝いていた子供の頃。夏の空は高く、夕立は大騒動みたいで楽しくて、雨上がりの虹がやけに美しかった。世界は広くなんでもありだった。いつからだろう? 世界が窮屈に感じるようになったのは。

びっしょびしょのYoshioを見て大切なことを思い出した気がした。こだまするセミの声に引き戻されるように見上げた2024年夏の空。アスファルトから立ち上る陽炎の向こう側で子供の頃の我々が笑っていた──。


小さい頃は神様がいて


不思議に夢をかなえてくれた


カーテンを開いて


静かな木漏れ日の


やさしさに包まれたならきっと


目に映る全てのことは


メッセージ


──END──


執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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