ラーメン屋のカレーって出汁を使った日本的なカレーが出てくるイメージがあった。食べ慣れた味だけど家で作るよりちょっと深いみたいな。
だがしかし、それもまたレッテルだったのかもしれない。この度、ラーメン屋でカレーを注文したところ、ラーメン屋らしからぬものが出てきたのである。何コレ凄い……!
・カレー賞で優勝しすぎ
ラーメン屋のご飯メニューをレポートする連載『ラーメシ通信』。第18回目は神保町にある「お茶の水、大勝軒BRANCHING」に訪れた。「お茶の水、大勝軒」はつけ麺の元祖である東池袋大勝軒の暖簾分けであり、公式サイトには “大勝軒本来の味” と書かれている。
この店はそんな「お茶の水、大勝軒」の系列店。しかし、興味深いのは2017年に神田カレーグランプリで優勝していること。横須賀カレーフェスティバル2019首都圏三大バトルでも優勝している。ラーメン屋なのにカレー賞で優勝しすぎだ。
・マイスター賞も
というわけで、店外にある券売機を見てみたところ、確かにカレーが5種類もある。券売機のボタンによると、「ドライキーマ(税込1400円)」というカレーがマイスター賞を受賞しているらしい。そこでドライキーマの食券を購入してみた。
ところでマイスター賞とは? 受賞しすぎて何がなんだか分からないまま食券を購入したが、店内のポスターに説明が書かれていた。ふむふむ、神田カレーグランプリで神田カレーマイスターの投票結果1位に贈られる賞なのか。と、ポスターを読んでいる時にカレーが運ばれてきた。って……
何コレ凄い。
・卵王
皿の真ん中には、おにぎりのように成形されたご飯の塊、キーマカレー、卵黄が縦に積み上げられていた。それはまるで卵黄を冠するキーマカレーの台座。その台座を取り囲むようにスパイスが巻かれており、目の前に置かれただけで香る刺激的な匂いには王の威厳すら感じる。もはや卵黄ではなく卵王。ある日森の中、卵王に出会った。
心なしか木漏れ日が射しているようにすら感じるその自愛に満ちたオーラ。俺信じられねえよ、ここがラーメン屋だなんて。っていうか、どう食べたら良いのかも微妙に分からない。おそるおそる、スプーンで端を削ってカレーとご飯だけ食べてみたところ……
キーマカレーは金沢カレーくらいドロッとしており濃厚である。そこで思い切って卵王を突き刺した。カレーに流れる卵王の液。良い王であった。
・全てが一体に
混ぜてご飯の塊をバラしてみると、量自体はしっかり一杯分あることが判明。皿の真ん中にまとめられてる料理って少なく見えるんだよね。
さて置き、革命は成った。王は自らの命で民衆に豊かさを分け与えた。国は草原に沈み残ったのは混沌。その混沌をスプーンですくい上げて食べてみると、ツーンとくるくらいのスパイスの味がした。
ひと口食べると、走馬灯のように駆け抜ける色んなスパイスの風味。ただ、それでも海外料理っぽい尖りよりも、まろやかな旨みの方が強く感じるところには日本的バランス感覚も感じる。ラーメン屋なのにカレーのマイスター賞を獲るのも納得の味だ。
・カレーだけを注文する人も
ちなみに、2017年に神田カレーグランプリで優勝したカレーは「幻のカツライスカレー(税込1300円)」なのだが、他のお客さんが注文しているのを見たところ、こちらはジャパニーズカレーという感じだった。
ドライキーマが攻めすぎているように感じる人は他のカレーという選択肢もある。事実、私以外のカレー客は「復刻版カレーライス(税込980円)」や「スペシャルカレー(税込1400円)」を注文していた。まずもってカレーだけ食べてる人が普通にいるのが凄いんだけど。
味が本格的なだけじゃなく、色んな需要に応えられるくらいのバリエーションも揃っている「お茶の水、大勝軒BRANCHING」のカレー。ラーメン屋のカレーとしては型破りなガチさに、ラーメシ界の奥深さをまた1つ知ったのであった。
・今回紹介した店舗の情報
店名 お茶の水、大勝軒BRANCHING
住所 東京都千代田区神田神保町3-10
営業時間 11:00~22:00
定休日 日曜日
参考リンク:お茶の水、大勝軒
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.