
トンネルにはロマンがあると私(佐藤)は考える。たかが山に開けた穴かもしれないけど、入口と出口で景色が一変することがあるからだ。かつて川端康成が「トンネルを抜けると、そこは雪国」だったと、名作『雪国』の中で記している通りに、こちらとあちらをつなぐ、いわば「異世界への道」。それがトンネルなのである。
そんなトンネルがたくさんある場所が、千葉県茂原市にある。押日(おしび)という地域には素掘りのトンネル(隧道 / ずいどう)が集中して点在する「押日素掘り隧道群」と言われるところがある。実際に行き、いくつかの隧道を通ってみたら、まるで冒険している気分。異世界に到達した感覚を味わえた。
・旅を指南する老賢者
トンネル好きの私としては、その地域の隧道を制覇したい気持ちがあったが、なにぶん場所がわかりにくい。GoogleMaps上にその名前は記されているものの、そこまでの経路は出ていないのである。
2つ並んだ隧道近くまで歩いてきてみたものの、はたしてこの先に道が続いているのかさえもわからなかった。
逆側から行くのが正解だったのか? 立ち止まって考えていると、向こう側からおじさんが来た。こりゃ聞くしかない、そう思い声をかけた。
佐藤「すみません、この先に隧道はありますか?」
おじさん「え? あるよ」
佐藤「ありがとうございます!」
お礼を言って先に行こうとしたところで、歩き出したおじさんは振り返ってこう教えてくれた。
おじさん「右に行くとね、明るい隧道がある。左に行くと暗い隧道があって、そっちは暗いからみんな怖がって通ろうとしないよ」
佐藤「そうなんですね。じゃあ、右が明るい狸谷隧道で、左が暗い花立隧道ですね。ありがとうございます!」
おじさん「うん、気を付けてね」
そう言って、再び歩いていった。おじさん、ありがとうございます! 後ろ姿がなんかカッコいい!! 見知らぬ世界に足を踏み入れる勇者に、旅の指南をする老賢者みたいだ。まあ、ここでいう「勇者」とは私のことだが。
・狸谷隧道
では、行こう。この辺は自然豊かでとても良い場所だ。子ども時代を過ごした、島根の田舎を思い出す。小学生の頃なんか、こんな感じの何にもない場所で遊んでたんだよなあ。ファミコンすら発売されていない時代に。山に入っていって、秘密基地なんか作ってね。なんでも遊びになったよな。
間近で見る名前も知らない花さえも美しい。年取るとこういう景色がよく見えてくるもんなんだなあ。
都会育ちの人が「田舎暮らしに憧れる」っていうけど、田舎出身者としては「何がいいんだか」なんて思ってた。でも、初老になったら静かに暮らすのも悪くないなんて思っちゃう。今になってその気持ちが少しわかる気がする。
この辺の隧道は明治時代に掘られたものが多く、農家が田畑に行くために切り開いたものなのだとか。したがって、その多くは狭かったり暗かったりするそうだ。
さて、分岐に来た。先ほどの話だと、右が狸谷隧道で左が花立隧道ってことになる。
まずは右に行ってみよう。少し歩いたら立て看板があったけど、長年ここに設置されていたために読めない……。多分、頭上注意とか書いてあったんじゃないかな。
おお! これだ、素掘り隧道。入口からして渋い! これぞロマン!! 抜けた先に何があるのかな? オラ、ワクワクすっぞ!
中は結構明るいな。長さも短いので、向こう側も見通せるぞ。
その昔、近隣に住んだ人たちがこれを掘ったのだろうか。
照明があるから、夜でも歩けそうだな。
車の轍(わだち)がある。車幅いっぱいのこの道を抜けるのは、結構怖い気が……。
向こう側の景色を見て再び引き返し、今度は花立隧道の方へ。
・花立隧道
そういえば、おじさんは「左は獣道みたいになってる」って言ってたな。たしかにこっちは荒れてる。人通りは少ないんだな。
折れた竹が倒れかかっていて、ワイルドだなあ。この先に行って本当に大丈夫か?
こういう場所でビックリした顔で自撮りすると、ちょっとドラマチックになります。参考までに……。
おわっ! こっちはたしかに暗い。向こう側の光がかすかに入り込んでいるだけで、ほぼ真っ暗だ。
暗がりのなかを恐るおそる歩いて行きました。転んだら大変だったかも……。
長さにしてわずか50メートル、時間にして約1分だけど、恐ろしく長く感じたぞ。暗闇を歩くって、本当に怖いなあ。
西側から入ったけど、東から入ると日の光が入り込んでもっと明るかった。
・細田隧道
徒歩で行ける範囲でもうひとつ別の隧道へ。約10分ほど歩いた先にある細田隧道へ向かった。ここも隧道までの道が地図に出ていないけど、多分ここから入っていくんじゃないかな?
上にあるのは八幡神社というらしい。
その下に隧道の入口がある。
ここは天井が高くて奥に照明が見える。暗くないだけで、ホッとひと安心。
補修工事が計画されているのかも。あちこちに赤くマーキングされている。先の隧道と同じ頃に造られているとしたら、100年以上は経過しているから、劣化してても不思議じゃないもんなあ。
向こう側に出た。青い空と緑の山、家屋があるのを見えると、そこに人がいる安心感がある。たかだか数十メートルでも、違う世界にたどり着いた気持ちが味わえるから、トンネルは楽しいなあ。
ここ以外にもまだいくつか素掘り隧道は存在するらしいので、あらためて訪ねて異世界感を楽しみたいと思う。トンネルは楽しいぞ! みんなも異世界に到達した感じを楽しんでくれ!!
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]
佐藤英典























【普通乗用車は通行不可】静岡県掛川市・全国最小クラスのトンネル「岩谷隧道」を徹底調査してみたらヤバすぎた
岡山県高梁市のギリギリ過ぎるトンネル「羽山第2隧道」は〇〇時代に建設! もちろん大型車は通行不可!!
【怖すぎ】軽い気持ちで山中のトンネルを歩いてはいけない理由
【実話】絶対に目を合わせてはいけない観音像を見てしまった結果「なんか赤かった」→ その夜怖すぎる出来事が…… / 福井県『雄島隧道』
【ぶらり循環バスの旅】池袋駅西口・東口周辺循環「IKEBUS」で駅・サンシャイン60周辺を満喫しよう
【実録】東南アジアで仕入れたものを日本で売れば素人でも利益が出せるのか? 2年間の戦いの結果
回転寿司の「チーズ創作寿司」が深いから食べ歩いてみた結果 → 密かにぶっ飛んでるチェーンがあった
【4コマ】魔王軍はホワイト企業 1833話目「勇者アルティ㉙」
最強のコシ? かつてないほど強い麺腰にビビった【家そば放浪記】第289束:西友で買った、柄木田製粉『信州 喉越しの八割蕎麦』322円(1人前161円)
ココイチの期間限定「マル得コンボ」は夢の揚げ物オールスター! と思いきやカレーソースが巨大すぎて笑った
【本日発売】「ローソンの福袋」(2160円)があまりにパンパンに詰まってて、持って帰るのちょっと恥ずい
中国の「渡航自粛勧告」から2週間、現在の「奈良公園」で目の当たりにした意外な光景
【中国渡航自粛】ガチ中華だらけの上野・アメ横に行ってみたら → 取材拒否の連続に…
【値上げ検証2025】スーパーとコンビニで「全く同じもの」を買ったら価格差はいくらになるのか → 絶望が待ち受けていた
【抽選結果速報】ケンタ福袋2026の抽選に編集部20人で応募してみた → さすがに泣いた
中国「渡航自粛要請」から2週間が経った京都市内「祇園」「清水寺」「錦市場」の様子を見に行ってみた
中国「渡航自粛勧告」から1週間経った、東京・浅草を見に行ってみた
【納得】ガストの「ジョブチューンで唯一不合格だった」メニューを食べてみた → 不合格にする気持ちがわかった
【検証】10年間ほぼ毎日飲んでる「コーヒー」を1週間断ってみたらこうだった
【は?】楽天で見つけた「在庫処分セール半額おせち」を買ってみた結果 → 届いた数日後にブチギレかけた
【雑草対策】カインズで598円「撒くだけで防草できる人工砂」の効果がヤバ過ぎた / お財布にも環境にも優しい超画期的アイテム
【検証】「スタバはどのサイズを頼んでも量は一緒」という動画が出回る → 実際に試してみた
【事故】楽天で買った『訳ありB級フルーツ福袋』を開封した翌日、妻から信じられないLINEが来た「メロンが…」
【ぶらり循環バスの旅】大船駅東口交通広場発・着「鎌倉湖畔循環」で大船・北鎌倉を満喫しよう
ロケットニュース読者の怪談 寄忌耳(キキミミ)外伝第1話「隧道」
【私的ベスト】記者が厳選する2021年のお気に入り記事5選 ~ 高木はるか 編 ~
【一点突破】ネットで「関東最恐」と言われる『縁切榎』が怖すぎるので逆にディスってみた結果 → 予想外の事態に……!
【今夜は十五夜の満月】 静岡県浜松市にある「世界で一番月に近い場所」へ行ってみた
千葉県の無人駅から徒歩7分の「理想郷」がある!? 軽い気持ちで行ったらとんでもないことになってしまった…
【実体験】銭湯で遭遇した不安をかき立てられるオジサン3選
【心霊スポット検証】北陸新幹線の車内誌に載ってた「日本最古のトンネル」に行ったらヤバイことになった…… 敦賀『小刀根トンネル』
最強の秘境駅「小幌駅」に行ってみた! トンネルとトンネルの隙間に一瞬見える幻の駅、降りるには……
幕張パーキングエリア(上り・下り)に徒歩で来た! / 歩いて訪ねるSA・PA第5回
【心霊スポット検証】都内有数の心霊トンネル『千駄ヶ谷トンネル』で “謎の地図” を発見 → 解析してみた結果