2024年4月5日(金)、映画『アイアンクロー』が公開される。本作は史実に基づいたノンフィクション作品であり、そのモデルはプロレスファンなら誰もが知る「エリック家」だ。
「エリック家」については後述するとして、一足先に同作を鑑賞してきた私は今なお『アイアンクロー』の余韻に浸り続けている。一言、プロレスを知らない人にも自信を持ってオススメできる「傑作」と申し上げておこう。
・呪われたエリック家
まずは本作のストーリーとは関係なく「プロレスファンが知るエリック家」について述べさせていただきたい。プロレスファンにとって「エリック家」とは、それほど印象的な一族なのだ。
始めに「エリック家」とは、父「フリッツ・フォン・エリック」と、その6人の息子たちのことを指す。“鉄の爪” と呼ばれたフリッツは、日本でジャイアント馬場とも激闘を繰り広げたレジェンドプロレスラー。その必殺技が「アイアンクロー」だ。
父、フリッツは引退後、プロモーターに転身。息子たちはプロレスラーとしてデビューするが、6人のうち5人が若くして死を遂げる(1人は幼少期に死亡)。しかもその死のほとんどが、いわゆる “非業の死” なのである。
業界を代表するプロレス一族だった「エリック家」は、いつからか「呪われたエリック家」と呼ばれるように。そんな「呪われたエリック家」をモデルにしたノンフィクション作品が、映画『アイアンクロー』だ。
早逝するプロレスラーは少なくない……どころか実はかなり多いが、こと「エリック家」は異質。プロレス界に七不思議があるならば「呪われたエリック家」は、その筆頭格と言えるだろう。
・悲しいだけの映画じゃない
そんな「エリック家」がモデルならば『アイアンクロー』も当然悲しい作品になるに違いない。そう思いつつ映画を鑑賞したのだが、結果的にはただ悲しいだけの作品では終わらなかったのである。
当然、事実に基づいた悲しみが嵐のようにエリック家を襲うが、映画を観終えた私は「これは単なる悲劇の話なのだろうか?」と感じずにはいられなかった。少なくとも、ただ兄弟たちが次々と死んでいくだけの作品ではない。
また、映画には人が生きていく上での普遍的なテーマが張り巡らされており、それが映画を観終えて1日経った今でも余韻が収まらない理由であろう。
家族とは? 兄弟とは? 父とは? 母とは? 子とは? 夢とは? 努力とは? 個性とは? 才能とは? 誇りとは? 血とは? 運とは? 時代とは? そして、愛とは──?
もちろん、私がプロレスファンであるからこそ楽しめたシーンも多かったが、きっと『アイアンクロー』は多くの人の魂を揺さぶる作品であろう。ただただ悲しいだけの作品になっていなかった点が大変素晴らしかった。
・魂を揺さぶる作品
人は誰しも何かに囚われながら生きる生き物である。それが限界に達したとき、いわゆる “呪い” が発生するのかもしれない。その呪いを解くヒントも『アイアンクロー』には隠されていた。
とにもかくにも、映画『アイアンクロー』はプロレスファンのみならず、全ての人に観て欲しい傑作である。アメリカで異常に評価が高いという話も納得の完成度だ。映画『アイアンクロー』は2024年4月5日公開。
参考リンク:映画「アイアンクロー」
執筆:P.K.サンジュン
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