
情のある人間ならば、人からの頼みごとは多少の無理をしても聞いてあげたいもの。それが亡き大親友のお母さんからの頼みごとであれば尚更であろう。……が、私(サンジュン)はそれを1秒でお断りしてしまったことがある。
いま思い出しても胸がチクりと痛む……と言いたいところではあるが、冷静に考えてもあのリクエストに応えることは出来なかったハズ。そう、あの日あの時あの場所で、亡き大親友のお母さんからされた頼みごとは、どう考えても無茶だったのだ。
・9年間
大親友が亡くなったのは、今から9年前のこと。以来、私は彼の誕生日である11月に毎年広島にある墓を訪れている。9年も経てば様々な感情も消化できたが、それでもあいつがいないせいで俺の人生は5%くらいつまらなくなっちゃったなぁ。……あいつめ。
それはさておき、広島には何人かの友人と一緒に訪れ、彼のお母さん、そして2人の妹さんと食事をするのが恒例。普段はほとんど連絡は取らないものの、今では1年に1度の楽しみとなっている。
そしてつい先日も、広島県に足を運んできた。そこでお母さんたちと食事をしている際、思い出した話がある。それが「亡き大親友のお母さんの頼みごとを1秒でお断りした話」だ。
・亡くなって間もない頃
あれは彼が亡くなってから数カ月後、私自身も彼のお母さんとは初対面だったと記憶している。私も友人ももちろんお母さんも、いわゆる “喪中モード” での出会いであった。
確かあれは翌日に控えた「食事会」の前日。食事会は彼のご家族が3名、私を含む彼の友人が10名ほど参加する比較的規模の大きなもので、なんとなく幹事的な立場にいた私は事前にお母さんに挨拶しておこうと考えていたのだ。
・歌声喫茶
指定されたのはお母さんのご職場。お母さんは「歌声喫茶」を営んでおられ、そこに友人らと3名ほどでお邪魔したのである。私は「参列したら事実を認めたことになる」という理由で葬儀には出席しておらず、お母さんともこの日が初対面であった。
「よく広島までお越しくださいました」と、丁寧な挨拶をしてくださったお母さん。「騒がしいところですけど……」と、我々はお店の中に誘われた。店は繁盛しており、10人以上のお客さんがいたハズだ。
私も初めてだったが「歌声喫茶」とは1つの大きなカラオケBOXと考えれば良く、小さなステージの上で歌を歌う。それ以外のお客さんはテーブルでお茶やお酒をたしなみ、自分の番になったら歌を歌うシステムだ。
印象的だったのは、ステージに上がる全てのお客さんがハンパなく美声だったこと。おそらく60代以上の方がほとんどだったと思われるが、男女ともにビブラートが効きまくっていた。……が、我々もお母さんも “喪中モード” である。
・頼みごと
お客さんたちの歌声が響く中、我々はお母さんと彼のことをポツリポツリと語っていた。その中で「あなたがサンジュンさんですか。みなさんからお名前はよく聞いていました」と仰っていただいたことをよく覚えている。
その間、数杯のビールをいただいたものの、気分が上がるワケがない。どうしても途切れ途切れになってしまう会話。そんな時であった。おそらく間を埋めようとしてくださったのだろう、お母さんから驚愕のリクエストがあったのだ。
「どうですか、サンジュンさんも1曲?」
いや無理無理無理無理!!!!!!!!!!!!!!!!
このシチュエーションで「そうですか。では聞いてください、彼も大好きだった曲です……Tomorrow Never Knows」とか言えるほど私のハートは強くない。亡き大親友のお母さんからの頼みごとなら極力応じたい気持ちはあるが、そればっかりは無理ですよ、お母さん……。
・ご自愛ください
結局、翌日の食事会で私は彼が亡くなって以来、初めて涙を流し、ワンワン泣き、周りが心配するくらい号泣し、そしてお母さんとは「毎年来ます」と約束をして今に至っている。
情のある人間ならば、人からの頼みごとは多少の無理をしても聞いてあげたいもの。ただ喪中モードでの歌声喫茶で1曲は、亡き大親友のお母さんからの頼みごととはいえ応じることは出来なかった。お母さん、来年も広島に伺いますので、どうか健康でいらしてください。
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
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P.K.サンジュン




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