かつては子どもたちの憩いの場であった「デパートの屋上遊園地」が全国に5か所しか残っていないというニュースが話題になっている。

昔はデパートの屋上といえば遊具があって、うどんや焼きそばを売る売店があって、ときおりヒーローショーが開かれて……というのが当たり前だったので、このニュースには驚いた。デパート自体が各地で閉店しているし、少子化もあるし、仕方がない流れなのかもしれないが切ない。

実は、その5つのデパートのうちひとつは、私の地元・長崎市にある浜屋百貨店である。子供の頃の思い出の地を数十年ぶりに訪れてみたら……そこには驚きの光景が広がっていた。

・長崎を代表する百貨店

長崎市の繁華街・浜の町アーケードにある浜屋百貨店は、長崎市民なら知らない人はいない老舗百貨店であり、町のランドマーク的な存在である。さすがに老朽化していて昔ほどのキラキラ感はないものの、今でもそれなりに買い物客で賑わっている。

浜屋のおもちゃ売り場とサンリオコーナーを見て、屋上の遊園地で遊んで、地下でお菓子を買って帰る……というのが子供時代のもっとも楽しい休日の過ごし方であった。未だに浜屋と聞くと楽しい気持ちになる。デパートってそんな場所だよね。

子供の頃、屋上でヒーローショーに行ったときの写真や遊具で遊ぶ写真が残っていた。

いつも大勢の人で賑わっていて、遊具は順番待ちだったなあ……。

食料品売場やファッションフロアには今でもよく行くけれど、中学生になってからは屋上遊園地には行っていないと思う。ドキドキしながら、屋上のプレイランドへ行ってみる。



・想像を絶するほど「そのまま」

屋上遊園地が残っているとは言っても、ゲームや乗り物が数台あるくらいだろう……と思っていた。

ところが、そこには信じられないくらい年季の入った遊具が並んでいたのである。

あまりにも昔のまますぎて、一歩屋上に入った瞬間に、時空が歪んで子供時代にタイムスリップしてしまったのかと思った。

イマどき、初代ガンダムの遊具が稼働しているところなんて他にあるのだろうか?

というか、私が子供の頃ですら「この屋上はちょっと古い乗り物が並んでいる」という印象だった。

それが30年以上経ってなお、現役で動いているということに驚きを隠せない。

しかもさらに驚くべきことに、プレイ料金が昔のまま据え置き。1回10円で遊べる遊具などもあるのだ……。10円ではもう「うまい棒」すら買えないというのに。



・ゲームコーナーがさらに衝撃的

すでに懐かしさで胸がいっぱいなのだが、青いテントのゲームコーナーに入ると、さらに驚きの光景が広がっていた。

薄暗いテントの中には古いゲームがところ狭しと並んでいるのだ。それは「レトロ」なんて言葉では言い表せないくらいだった。

83年生まれの私が生まれる前から、この屋上にあったに違いないゲームの数々……。

ちなみに、見た瞬間に息が止まりそうになったのが「Dr.スランプ アラレちゃん」の遊具。まず、なんとも言えないアラレちゃんの表情がいい。

さらに後ろ姿の作り込みも細かい! 乗りたかったけど、遊具は20kg以下の子供限定だった。

そして「おかあさんといっしょ」で放映されていた「こんなこいるかな」のバスがあり……

なんと、一部の世代にしか伝わらない『ポコニャン』のエンディングで流れていた「ポコニャンスロット」が実際にできるゲームまであった。

「ポコニャンスロットにゃ〜ん! 今日は誰かにゃん?」というアニメのままの懐かしい声とともに、ボタンを3回押す。やってみたが、難しくて当てることはできなかった……。当たったら鉛筆がもらえるとか。

残っているキャラクターのセレクトが渋すぎてクラクラしてくる。この中では、あの「ワニワニパニック」すら新参者の部類である。



・従業員の方に話を聞いてみた

閉園前の時間帯ということもあって、従業員の方が1台1台、熱心にメンテナンスをやっておられたので話を聞いてみた。

ほとんどの遊具はもう部品などもなく、修理が非常に難しいそうだ。

UFOキャッチャーは、中身のぬいぐるみを入れ替えるのすら難しくなっているとか。

どうりで懐かしいキャラクターたちが多いわけだ。

ちなみに、おそらく園内で一番古いのは「コンバット」という戦車と、「レッドバロン」という戦闘機の2台のマシンだそう。

赤い飛行機は十字マークが独特だな……と思って調べたら、第一次世界大戦のドイツの飛行機がモチーフとなっているようだった。

画面のデザインなども時代を感じさせる。



各地のデパートの屋上遊園地は減少傾向にあるけれど、今のところ閉園する話などは出ていないとのことだった。

土日になれば今でも子どもたちが遊んでいるという。実際、取材に訪れた日も意外なほど屋上は賑わっていた。

しかし、こうした古い遊具が今でも現役なのは、従業員の方の丁寧なメンテナンスのたまものだと思う。

ここまで懐かしい遊具がそろっている場所も今どきなかなか無いと思う。長崎旅行の際にはぜひ浜屋の屋上を訪れてみてほしい。どうかいつまでもこの場所がありますように。

※2024年5月6日に地元の人々に惜しまれながら閉園しました


参考リンク:長崎浜屋
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.

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