全国展開だと思っていたものが、実は一部地域のみでのローカルアイテムだった。そんな経験をしたことがある人は意外と多いんじゃないだろうか。

筆者にとっては『せみ餃子』がそう。当たり前のように全国のスーパーのチルドコーナーに並んでいるものだと思っていたのだが……えっ!? これって関西限定の商品だったの~~ッ!?!?

・関西ではお馴染みです

こちらが『せみ餃子』。

関西人にとってはもはや説明する必要がないほどスタンダードな商品で、ピンクとブルーの鮮やか&レトロなパッケージが目印。冷蔵タイプのチルド餃子だ。

一番の特徴は、おそらく価格であろう。すべてが値上がりするこの時代においても、筆者の自宅近くの(激安でもなんでもない普通の)スーパーで10個入り税込95円でゲットできた。


1個当たり10円以下。それだけでも十分ヤバいのに、なんとタレまで付いているというホスピタリティの高さ。

一体どうやって利益を出しているんだろうか? 無理してない?? ちょっと心配になるレベルである。


思い返してみると、お金のない学生時代は本当にせみ餃子にお世話になった。

筆者は昔から餃子が大好きだったが、自分一人で手作りするのは面倒くさい。でも、店で食べるのは高くて無理。冷凍餃子も(今では考えにくいが)安くないしコスパが悪い。

そんな時に500円あればお腹がはち切れそうになるまで食べられるせみ餃子は、まさに救世主だったのだ。


・ネーミングはシャレから

せみ餃子を製造しているのは、京都市に本社を置く『珉珉(みんみん)食品株式会社』。

勘のいい方は既にお気づきかもしれない。


せみ餃子のネーミングはみんみん → ミンミンゼミという、逆に笑っちゃうようなベタなシャレから来ているのである!

パッケージには記号的なセミのイラストが描かれている。もちろん原材料にセミは含まれないので、虫嫌いの方も安心してくれよな。


ちなみに珉珉食品は、関西を代表する餃子チェーン店『珉珉』とかつて同じ会社だったということ。珉珉でも自宅で焼く用の生餃子を販売しているが、こちらは30個入り税込2200円とちょっぴり高級品だ。


・懐かしくなる味

せみ餃子の焼き方はごく一般的。熱したフライパンに油を敷いて焼いたら水を入れ、


フタをして蒸し焼きにする。


水がなくなったら出来上がり。フタを開けた瞬間の餃子味の水蒸気ってたまらないよね!


皿に並べると、ちょっとヘニャッとした感じが足袋(たび)みたいで可愛い。


懐かしいな、この軽さ。福岡の餃子は小さいと聞いたことがあるけど、たぶんそれよりさらに軽量級だろう。


うん、普通に旨い。

正直に言うと、世の餃子通が認める絶品餃子といった味ではなく、アッサリしていてパンチは少なめ、皮は薄くてへヨッとした食感だ。

世の流行からは間違いなく外れている。しかし「旨いか?」と聞かれたら迷いなく「旨いね」と答えちゃう。


例えるならば、久々に地元に帰って近所のカウンター席しかないラーメン屋に来た時みたいな、古き良きと言うべきか、どこか懐かしい味と言うべきか、心の故郷的なエモさを感じてしまうのである。

よくあるグルメレポートのように「絶品なので是非お試しあれ!」とはまとめない。せみ餃子は故郷の味。私は大好きだし、たぶんこれからもずっと好きだ。

執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.

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