5月18日は「ことばの日」である。「横浜みなとみらいBUKATSUDO連続講座 言葉の企画」の企画生らによって、2019年に制定された比較的新しい記念日のひとつだ。
そこで今回は当編集部のメンバー10人に、それぞれの好きな言葉を挙げてもらった。そうしたところ、おのおのの個性や意外な一面を垣間見ることができた。では、紹介していこう。
■佐藤英典 「上善如水」
「この言葉は、中国の老師が説いた教えのひとつ。『上善は水の若(ごと)し 水は善く万物を利して而(しか)も争わず』、もっとも良い(善い)ことは水のように、あらゆるものに有効に働くだけでなく、争ったりしない。
この言葉を20代の頃に知って、そんな人間になりたいと思いながら30年。無理だ……、俺にはそんな尊い境地にたどり着くことはできん。そう悟った。でも、そうでありたいといつも思うように心のどこかに刻んている。憧れに近い気持ちを持つ言葉である」
■GO羽鳥 「なにごとも経験」
「良いことも悪いことも、嬉しいことも辛いことも、極楽もどん底も、すべて『なにごとも経験』であると意識しながら生きているのでコレにした。
漫画家・ライターとして駆け出しだったハタチの頃。絵も下手だし、文章も上手くないしで、なかなか雑誌の仕事 (ページ)がとれなかった。
こうなるともう体を張るしかない。
『なにごとも経験』と念仏のように唱えながら、いろんな苦行を体験し、それをネタに仕事をとった。そしてその経験が、すべて今にも繋がっている。
なにごとも経験。これからも」
■P.K.サンジュン 「男の魅力はサービス精神」
「これは亡くなった親友の格言なんだけど、彼はその通りの人だった。人を楽しませることも、進んでイヤなことを引き受けるのも、プレイ中に大げさなリアクションをすることも、彼に言わせれば『男の魅力はサービス精神』だった。
それまで俺の座右の銘は「義を見てせざるは勇無きなり」だったから、価値観が似ていたんだと思う。彼くらい「男の魅力はサービス精神」を実行できているとは思わないけど、俺も含めて彼の友達はみんな「男の魅力はサービス精神」を胸に今日も生きている」
■中澤星児 「欲しいものは手に入らないですが、いるものが手に入りました」
「ずーっと夢を追ってきて、なりたいものになれたことがない私(中澤)。そんな私が節目節目に思い出すのが、子供の頃に見た『Cowboy Bebop』のこのセリフだ。
今でこそ伝説のアニメである『Cowboy Bebop』は、当初、放送される話も飛び飛びで、挙句打ち切り終了という問題作であった。このセリフは、打ち切りの最終話、放送全話を編集した『よせあつめブルース』のもの。お茶を濁すために入るようなまとめのヤツだ
不思議ちゃんキャラが真理っぽいことを言うのは90年代アニメのお約束だが、これも不思議ちゃんキャラである『エド』のセリフ。しかし、本編でもないおまけみたいな話のセリフを何十年も繰り返し思い出すんだから、本当に私の人生にとっての真理だったんだろうなと思う。真理はあると思って探すとないですが、ないと思って探すとやっぱりないです」
■原田たかし 「必ず誰かが見ている」
「なかなか仕事がうまくいかないなか、以前お世話になっていた上司に言われた言葉で今でも大事にしている。真摯に向き合い続けていれば周りはちゃんと見ているから評価してくれるときが必ず来るし、絶対に腐るなと教えられた。
そして必ず誰かが見ているというのは逆パターンもあるとも。一度ダメなヤツだと思われたら挽回するのに倍以上の努力が必要になるから常に頑張っていなさい。自分が思っている以上に人は見ているんだと」
■砂子間正貫 「挑戦する勇気」
「木下大サーカス社長の言葉。観客が感動するのは、アーティストたちの類まれな身体能力やアクロバティックな芸ではなく、困難な技に立ち向かう『挑戦する勇気』だと教わった。失敗を恐れず、文字通り命をかけて挑戦するその生き様に人々は胸を打たれるのだ、と。
おそらく、どんな世界にも当てはまる言葉だろう。いつまでも挑戦の心を忘れずにいたい」
■Yoshio 「ひかれてナンボ」
「学生時代によく使っていた『ひかれてナンボ』。何かチャレンジするときは、いろいろ躊躇(ちゅうちょ)する時もあるけど、そんな時にこの言葉を思い出す。『失うモノはないのだ』と楽観的に後押ししてくれる言葉だ」
■和才雄一郎 「先に殴ったら大体勝てる」
「当たり前だが、喧嘩は先に手を出した方が悪いとされる。なので常識ある大人ならば互いに怒鳴り合っていても決して先に手を出そうとはしない……と思い込んでいるところを先に攻撃する。『こりゃあ殴り合いになるな』という空気を感じたらまずやる。
相手が『マジかよ』となっている間に攻撃すれば大体勝てるから。勝ったという既成事実を作ることが何より大事。『どっちが悪いか』みたいなものは所詮教師や警察が下すクソジャッジだし、勝手に言わせとけばいい。
……的なことを中学の同級生が言っているのを聞いたときは『暴論にも程があるだろ』としか思わなかったが、実際に社会人になってみると『それも一理あるな』と思うことが多い。というか、世の中のシビアさをとらえた言葉だなと。
もちろん暴力は絶対にダメだし、自分が引いて喧嘩になる前に収めることもメチャクチャ大事だが、『社会のジャッジを恐れる前にまず自分がやりたいことをやれ』という姿勢は正しい気がしている。もう1度繰り返すが、暴力自体はダメです」
■御花畑マリコ 「薔薇がなくちゃ生きていけない」
「ムーンライダーズの歌詞より。解釈はさまざまあるだろうが、薔薇 = 生活を彩るもの だと私は思っている。本当を言えば、薔薇なんかなくたってお金とか食べ物があれば生きていける。でも、人はパンのみにて生きるにあらず。
自分自身、どっちかというと本とか音楽とかお菓子とか、生活に役に立たないけど心をときめかせるもののために生きている。まあ、私が書くものは『薔薇』というよりはペンペン草みたいなものかもしれないが、誰かの日常にちょっとでも色をつけることができたらいいなあ、なんて思いながら記事を書いている」
■あひるねこ 「無制限飲み放題」
「『当駅始発』『ポイント10倍』『台風接近による帰宅命令』と迷ったが、やはり私をもっとも高めてくれる言葉は『無制限飲み放題』をおいて他にない。ただの飲み放題ではなく、無制限飲み放題だ。
やっとモーターのコイルが温まってきたところで終了してしまうような90分ラストオーダーの2時間飲み放題では、私のこの煮えたぎる魂(ソウル)を満たすことなど到底できないだろう。好きな言葉は? と聞かれたら、即座に『無制限飲み放題です』と答えられる漢に、私はなりたいのである」
いかがだっただろうか。それぞれの性格の一端が見えたはず。いずれにしても「ことばの日」を機に、普段何気なく使っている自分の言葉を振り返ってみるのも良いだろう。あなたの好きな言葉はなんですか?
参考リンク:一般社団法人日本記念日協会
執筆:佐藤英典
イラスト:Rocketnews24