地獄ってどんなところだろう。そのワードを聞いて個人的に想像するのは燃え盛る炎と鬼。焼かれるだけでもキツイのに、さらに鬼がいるとか地獄すぎる。でも、インターネットが世界中を駆け巡り、おばけも逃げ出すような時代になんで私(中澤)は鬼が怖いんだろう?
そんなことを考えていたところ、「地獄に通ずる穴」というものがあることを知った。ロシアなど世界中にヤバイ穴があるらしいことはネットで知っていたが、日本にもそんな場所があろうとは。というわけで行ってみたぞ。
・細かい住所はない
その穴があるのは北海道旭川市に隣接する比布町というところ。穴の住所は北海道上川郡比布町南1線になるが、『男山』という山にあり、それ以上細かい住所がないポイントなのだとか。
そんな穴の存在を教えてくれたのは現地民の木下さんである。木下さんもまた現地民から聞いた話だというこの穴。住所がないとか凄いそれっぽい雰囲気を感じる。ひょっとしたら、穴自体が都市伝説的なものなのだろうか? 噂はあるけど見た人はいない的な。
空には暗雲が立ち込めている。男山に向かう車の中で拳を握りしめた。心なしか木下さんのハンドルさばきにも熱がこもっているように感じる。ならば、我々が見つけてやろうじゃないか。都市伝説を。
・と思いきや
と思いきや、道端に思いっきり看板が立っていた。間違いなく「地獄に通ずる穴」と書かれている。別名「アフン・ル・パロ洞穴」で、どうやらアイヌの伝承の場所のようだ。
それにしても……
めちゃめちゃ道路脇的なー!
男山は思ったほど大きい山ではなく、道沿いにある崖というか、裏山オーラが半端じゃない。地獄に通ずる穴はその岩盤の根本付近に空いている横穴だった。這いつくばったらギリ中に入れそうなサイズである。
・悲報
岩盤の表面にはネットが張られており、さすがに中に入ることはできない様子。念のため、穴を覗いてみると、確かに、中は真っ暗でどこまで続いているか分からない。とは言え……
──で?
思わず穴にそう問いかけてしまうほど、凄みやオーラが感じられない。看板がなければ誰もこの穴が地獄に通じてるという考えに至らなさそうだ。っていうか……
【悲報】後ろの景色の方が壮大。むしろ、このロケーションの中であえてあの穴に伝承があるのがスゲエよ。
・なぜなのか
なお、室蘭市の発行している『広報むろらん』2014年10月号によると、アイヌの人々は「文字を持たず、言葉による言い伝え、即ち「伝承」の豊かな民族で、川や山、小さな岩にも、その特徴をつかんだ名前を付けていた」という。
また、「生活に関わる全ての物や事柄の1つ1つを神と信じていた」のだとか。なるほど。そう聞くと、この穴に伝承があること自体がアイヌセンスという感じがする。
・2度と行きたくない
明らかに壮大で伝承があるのも納得できる室蘭の観光スポット・トッカリショなどとはまた違った説得力を感じたのであった。そんな「地獄に通ずる穴」の伝承は以下の通り。
「洞窟の奥に迷い込んだふたりの老人。命からがら元の世界に戻ったが、“もう1度行ってみたい” と語った老人は、まもなくぽっくりと。“2度と行きたくない” と語った老人はとても長生きしたそうな」
──というわけで、無言で帰った私と木下さんであった。色んな意味で1度行ったら十分なスポットと言えるだろう。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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