ロケットニュース24

日清の新商品 “ラーメンスープのどん兵衛” を食べてみたら、絶妙な黄金比を感じた

2023年2月28日

ラーメンが好きである。今も昔も愛し続けている。幼い頃は、水道からジュースが出てくることよりも鶏ガラスープが出てくることを願っていた。何なら今も願っているし、豚骨や煮干しスープでも構わない。そこは行政の判断に任せたい。とにかくラーメンが好きである。

そんな人間だから、例えばかけ蕎麦やかけうどんといった他の麺類を食べている時に、「このつゆがラーメンのスープであっても美味しいのでは」と妄想したことも何度もある。まさかその妄想が大企業の力によって現実のものになるとは知らずに、だ。

何の話かと言えば、2023年2月20日に発売された新商品、「日清のどん兵衛 特盛 ラーメンスープの!? きつねうどん」の話である。


名前の通り、定番のカップうどん「どん兵衛」のつゆをラーメンスープのようにアレンジしたというこの商品。むろん筆者は発売の知らせを聞くや、一も二もなく購入した。希望小売価格は276円である。

パッケージには大きく「やってみたら、うまかった」の文字。日清にこう言われると、自分は間違っていなかったのだと感じられて安心する。「どん兵衛」を通じて自己肯定感を得る日が来るとも想像だにしていなかった。

とはいえ、実際に食べずして味は語れまい。調理すべく蓋を開けると、粉末スープとお馴染みの麵がお目見えした。今のところ、普段の「どん兵衛」の雰囲気は崩れていない。

湯を注ぎ、粉末を投入して作り終える。遠目にはまだ普段の「どん兵衛」に見えなくもないが……

しかし近づけばすぐに、きめ細かに浮かぶ鶏油(チーゆ)が違和感を生じさせる。

風変わりな見た目である。例えるなら「微妙にこじれた伝わり方をした異国の地のうどん」と言うべきか、あるいは「行くところまで行ったラーメン職人が創作したラーメン」と言うべきか。風変わりだが、一方でこの何とも言えない風情に無性にそそられる。

誘われるまま、麺をすする。その瞬間、口の中で複雑な現象が起きた。急速に、それでいて流麗に、味が動いた。うどんだったものがラーメンに転じ、またうどんに戻る。そんな素早くも美しい移り変わりが、舌の上で繰り広げられた。

これはすごい。鰹だし、鶏ガラだし、醤油の合わさったスープは、確かにラーメンのそれと言われればそうなのだが、しかしうどんらしさを決して忘れていない。忘れていないどころか、つるみのある麺とスープの旨味が絡んで弾けたのち、味の揺らぎは最後にうどん側に傾く。

その要因は、意外にも鶏油だ。鶏油の優しくコクのある甘みが、ラーメンの風味を強く演出するかと思いきや、だしと醤油を不思議とうどんナイズしている。感覚的な比率で表すなら、うどんとラーメンが7:3くらいの味わいに仕上がっている。


食べる前はもっとラーメンが勝つかと思っていたが、しかしおそらく、いやきっとこれで良いのだ。この比率が壊れたら、間違いなく美味しさも破綻する。これが黄金比なのだ。絶妙なバランス感覚である。見事と言うほかない。

「やってみたら、うまかった」という、どこか偶然感漂う文言とは裏腹に、緻密な計算が積み重なっているのがひしひしと感じられる。うどん好きにも、筆者のようなラーメン好きにも漏れなく刺さる、クオリティの高い逸品だ。ぜひ多くの方に味わってみてもらいたい。

この商品が常時販売されるのかは定かでないが、できるだけ長く陳列棚に居座っていてほしいものだ。幼い頃は、好きなものを好きなだけ食べていたいと願っていた。何なら今も願っている。

参考リンク:日清 公式HP
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.

▼ちなみに「特盛」と謳っているが、普段よりやや多いくらいの量なので普通に食べ切れる

▼スープとお揚げの相性も抜群である

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