ロケットニュース24

新宿・歌舞伎町は本当に「龍が如く」の “如く” なのか? その道のプロに聞いてみたら、意外な事実が判明した!

2022年12月5日

SEGAの人気ゲーム「龍が如く」は2005年に1作目が登場し、現在まで世界中で支持されるヤクザをモチーフにしたアクションアドベンチャー作品である。その舞台は、新宿歌舞伎町をモデルにした「神室町(かむろちょう)」という架空の街なのだが……。

現実の歌舞伎町も「龍が如く」のごとく、危険が渦巻いているのだろうか? 気になったので、歌舞伎町で働く皆さんに危険エピソードを尋ねたら、リアルな街の姿が見えてきた!

・リアルな歌舞伎町はどうなのか?

佐藤ゲームの設定とはいえ、神室町って危険すぎるんだよなあ。チンピラにめちゃくちゃ絡まれるし、闇取引とか爆発とか頻繁に起きるし。ミレニアムタワー(ハイライトでよく登場する建物)は何回破壊されてるんだか……。

リアルな歌舞伎町もそんな感じなのかな?


佐藤「そうだ! その道のプロ、夜の街の人たちに聞いてみよう! おい、亀、聞き込みに行くぞ!


亀沢「私? そりゃ、シリーズ全部プレイしてますし、真島の兄さん(作品に欠くことのできない重要人物)、大好きですけど~」


ドンドン!

ロケットニュース24 亀沢郁奈


佐藤「よし、行くぞ! 準備万端だ。死にてえ奴だけかかってこい!

「まさか、桐生さんのつもり?」


ドンドン!

ロケットニュース24 佐藤英典


亀「ちょっと待ってくださいよ! え~~~! そのベルトは……」


紐! ビニール紐!!


佐藤アマゾンで2780円で買ったスーツにベルトが通らんかったから仕方なく……」


~ 第一章 飲んだくれの宿命 ~



ここが歌舞伎町だな。ゲームでいうところの「神室町天下一通り」だ。こうして改めて街を見ると、ゲームの街の再現度の高さにビビる。


区役所通りのクラブのママが歌舞伎町に詳しいという情報を得た。まずはそのママに会いに行かなければ……。



ここのクラブだな。たしかお店の名前は「クラブ春」


ママの名前は「春香」と聞いている。「はるか」といえば、ゲームに欠くことのできない人物の1人だったな。かなり有力な情報を得られそうだ。


この扉の向こうにママがいる。準備はいいか? よし、「スタミナンXX」(ゲーム内アイテム)を2本持ってるから大丈夫だろう。ちなみに俺は「タウリナー」(ゲーム内アイテム)を使わない主義だ。いくぞ!


佐藤「ママはいるか?」

スタッフ「どちら様でしょうか?」

佐藤「ママに用がある。待たせてもらうぞ」

スタッフ「え、あ、はい……」


春香ママ「お待たせしました。あなたが佐藤さんですね」


ドンドン!

CLUB春 ママ 伊藤春香


ママ「私で良ければ、あなたの知りたいことにお答えできるかもしれません」

佐藤「よろしく頼む」


佐藤「歌舞伎町は神室町のように危険なのか?」

ママ「ここ数年はそうでもないかしらね。昔はケンカなんて日常茶飯事だったわよ


佐藤「なにッ! それはいつ頃のことだ」

ママ「私、20歳から5年間、キャバクラを経験してんだけど、当時は毎日みたいにケンカに遭遇していたわ。お客さん同士が気に入った娘を取り合ってケンカしたりね」


佐藤「知らない客同士でか?」

ママ「いえ、たしかVIP席だったと思うけど、一緒に来たお客さん同士だったかしらね」


佐藤「つまんねえケンカだな!」

ママ「そうね、お酒の力に負けちゃったのかしらね」


佐藤「楽しくお酒を飲むはずが、仲間内でケンカを始めるとは……。必ずしも、楽しい酒席になるとは限らない。それも飲んだくれの背負った宿命かもしれないな」

ママ「そうかもね。あなたも気を付けるのよ」


佐藤俺はこう見えて、全然酒が弱いから大丈夫だ。すぐにウーロン茶に逃げる」

ママ「意外と頼りないのね、フフフ……」

佐藤「ハア~……(溜息)」

ママ「そういえば、この通りの並びにある星座館のホストクラブ「AWAKE(アウェイク)」のNARUSEさんなら、もう20年以上も歌舞伎町にいるから、何か知ってるかもしれないわよ

佐藤「そうか、ありがとう。ママ、NARUSEに会いに行ってみるよ」



NARUSEは次のページで待っているぞ!!


~ 第二章 灰色の闇へ ~



歌舞伎町ダイカンプラザ星座館。なんともハイカラな名前の建物だな……、ここにNARUSEがいるのか。


NARUSEはたしか、19歳から歌舞伎町で生きてきたホストだったな。約20年もの間、このきらびやかな街で活躍を続けるホストだ。2002~2022年までの間に、何度も景気を揺さぶる波が起きている。その波を乗り越えてきたとは……。


この扉の向こうにNARUSEがいる。準備はいいか? よし、スタミナンXXはもう1本あるから大丈夫だ。


佐藤「NARUSEはいるか?」

スタッフ「え? 何ですか、あなたは?」

佐藤「NARUSEに用がある。待たせてもらうぞ」

スタッフ「え? ちょっと困るんですよ」


スタッフ「何なんですか?」

●●「まあ、いいじゃないか。僕に用があるんでしょ?」

スタッフ「で、でも……」


NARUSE「お話はうかがってます。佐藤さん? ですよね」


ドンドン!

ホストクラブ「AWAKE」 プロデューサー NARUSE


NARUSE「春香ママから聞いてます。僕とお話したいんですよね?」

佐藤「ああ、歌舞伎町について教えてくれ」


NARUSE「何をどこからお話したら良いんですかね? 歌舞伎町についてと言われても」

佐藤「そうだな、昔のことを教えてほしい。きっと昔の歌舞伎町は今よりもずっと危険な場所だったはずだ」


NARUSE「そうですね。僕らの仕事についてお話すると、僕がこの仕事に就いた頃はもっとホストもイケイケでしたね。酒を飲んでなんぼみたいなところありましたし、ホストのケンカも絶えなかった気がします

佐藤「なにッ! ホスト同士でケンカだと!? 客の取り合いか?」


NARUSE「ええ、昔はガラの悪いヤツばっかりでしたからね。店同士の揉めごとはしょっちゅうだったし、売掛でもめることも多かったんですよ」

佐藤「売掛というのは何だ?」


NARUSE「売掛とは、お客さんの持ち合わせが足りなかった時に、担当したホストが立て替える仕組みです。後日お支払い頂くことになるんですけど、その売掛を残したままほかのお店にお客さんが行ったりした場合に店同士、というかホスト同士で揉めるんですよね」

佐藤「なるほど、売掛を支払わないまま他のホストにお金を使われたら、その担当ホストは気が悪いな」


NARUSE「そうです。外でお客さんとバッタリ会ってその時に別のホストを連れてたりしたら、ケンカになりますよね。金払えって。この例はお客さんに非があるパターンですけどね。最近はケンカするようなホストはほとんどいませんね

佐藤「昔は時代も荒かったしな」


NARUSE「時代といえば、昔はホスト自ら客引きしてましたね」(※「新宿区公共の場所における客引き行為等の防止に関する条例」の施行前)

佐藤「あ、そうだ。ドン・キホーテの前あたりにたくさんホストがいた覚えがある。カラスなんて呼ばれたりして」


NARUSE「そう、ドンキの前は激戦区で、一応テリトリーがあったんですよ。それをはみ出して声をかけるとケンカになったり、怖い人がわざとに自分の連れの女を歩かせて、声をかけてきたホストに「俺の女に何してんだ」って脅されたりね」

佐藤「怖すぎ……、昔の歌舞伎町は修羅場だ。……ってことは、今は安全になったんじゃないのか?」


NARUSE「う~ん、そうですね。以前は怖いものは目についたんですよ。怖いけど、わかりやすかった気がします。厳しいルールはみたいなものはあったけど、それを守ってる限りは安全だったと思うんです。一応ケンカにも筋はあったし、男気みたいな理屈が通っていた時代だったと思います」

佐藤「じゃあ、今は……」


NARUSE「怖さが見えづらくなりましたよね。たとえば不意打ちで殴られたって話を聞いたり、イタズラでSNSに晒されたり。怖い人がほとんどいないから、ムチャクチャなことをするヤツが出てきた気がしますね」

佐藤「闇の部分がはっきりとした黒ではなく、灰色に変化したみたいだ」


NARUSE「そんな気がしますね」

佐藤「何でもかんでも取り締まれば、街はクリーンになるとは限らないと……」

NARUSE「そうだ、そういうワイルドな話を聞きたければ、「FERSEN(フェルセン)」の副店長の斎藤さんがよくご存じですよ。彼も20年以上歌舞伎町にいますから

佐藤「ありがとう。さっそく行ってみるよ」



斎藤は次のページで待ち構えているぞ!


~ 第三章 修羅の街 ~



亀「あの~……、佐藤さん。いつまでこの「龍が如くごっこ」に、私は付き合わなきゃなんねえんですか?


佐藤「なにッ! 最後まで付き合えよ。それでもゲームファンか!


「う~ん……、ファン心理を逆手にとって、撮影係に利用されているような~……」


佐藤「ごちゃごちゃ言うな。着いたぞ、ここが斎藤のいる「SMAPPA! HANS AXEL VON FERSEN(スマッパ・ハンス・アクセル・フォン・フェルセン)」だ。店の名前、長いな……」


佐藤「斎藤はいるか?」

スタッフ「佐藤さんですね。聞いてます、おかけになってお待ちください」

佐藤「お! すんなり入れた」


斎藤「佐藤さん、お久しぶりです」


ドンドン!

ホストクラブ「SMAPPA! HANS AXEL VON FERSEN」 副店長 斎藤工

※訳あって、加工画像です。


佐藤「お前は!? ホストの源氏名の時に話を聞いた斎藤!」

斎藤「斎藤工です。昔の歌舞伎町の話を聞きまわってるそうじゃないですか。僕もこの街で20年以上やってますので、多少はお力になれるかと」

佐藤「ぜひ、聞かせてくれ」


斎藤「いまでこそ、歌舞伎町は割と安全なイメージが定着しつつありますけど、僕が若い頃は危なそうな人があちこちにいましたよね。とくに僕らのような仕事は、目をつけられることも多かったですね」

佐藤「いつ頃から今のような雰囲気になったんだ」


斎藤「正確な時期は忘れちゃいましたけど、2012年の「新宿区暴力団排除条例」頃が境だったと思います。あの頃はまだ「ケツ持ち」とかあった時代ですから、その手の人たちも幅を利かせていました。お店でいやがらせを受けるなんてこともありましたね」

佐藤「どんないやがらせを?」


斎藤「昔いた店なんですけど、イカツイ感じの男性3人が来て、どこから持ってきたのかしらないですけど、ゴ■■リをグラスに入れたみたいなんですよ。それでケチつける訳ですよ

佐藤「「どう落とし前をつけるんだ」と脅すと」


斎藤「そう。その時の店の代表は、強者だったんですよね、よく心得ていて「これですか? 大丈夫、飲めますよ」っていって、そのグラスを飲み干したんですよ。あれはカッコよかったなあ」

佐藤「なにッ! その人、めちゃくちゃ肝が据わってんな!」


斎藤「そこまでやられると、相手も黙るしかないですよね。それでその時は、事なきを得ました」

佐藤「脅す方も脅す方なら、脅される方も黙っていうこと聞いたりしない。まさに修羅の街だったんだな」


斎藤「そうですねえ。そうだ、こんなこともあったっけ。いつだったか忘れちゃったけど、深夜にコンビニに行こうとしたら、目の前に大型のワゴン車が止まって、覆面をして警棒を持った5人くらいの男が出てきたんですよ」

佐藤「え!!」


斎藤「それで近くのお店に入っていって、しばらく様子を見ていたら、ドカンドカンとデカい衝撃音がして人の叫び声とか聞こえてきたんですよ

佐藤「ゴクリ……」


斎藤「少ししたら覆面のヤツらが車に乗り込んで走り去って、そのあと黒服が血を流しながら出てきてました。「警察呼べ」って言って

佐藤「現実にあんの! そんなこと!? どっちかというと、その出来事は「龍が如く」よりも「キムタクが如く」(JUDGE EYES・LOST JUDGMENT)っぽいな」


佐藤「あんた、よく今日まで無事でいられたな」

斎藤「だいたいそういう時、自分は当事者じゃないですし。昔の話ですからね、今はそんなこと絶対ないですよ。それに、ホストも昔と違いますしね。昔のホストは元ヤンキーばっかりで、人としてヤバいヤツが多かった。営業時間も深夜1時から朝まででしたし」


佐藤「今は風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)で午前0時までの営業だったか?」

斎藤「そう、働きやすくなりました。学歴の高い子も多いし。求められるホスト像が昔と今でずいぶん違います。今のホストについては、「BOND」ってお店の代表水波さんがわかると思います。彼に話を聞くといい」

佐藤「そうか、ありがとう。昔のイカツイ話はもうお腹いっぱいだから、今の話を聞きにいくとしよう」



今の歌舞伎町・ホスト事情を知る男、水波は次のページにいる!!


~ 最終章 如くじゃない! ~


ここか、今の歌舞伎町、今のホストを知る水波がいるホストクラブ「BOND」がある建物は。今回は店の名前が短くて覚えやすい。


水波もまた歌舞伎町歴約15年のベテランホストだ。しかもお店の代表という責任ある立場にいる。昨今の事情に詳しいはずだ。


佐藤「水波に会いにきた。邪魔するぞ」

スタッフ「佐藤さんですね、こちらでお待ちください」

佐藤「うむ」


水波「お待ちしてましたよ、佐藤さん。水波です」


ドンドン!

ホストクラブ「BOND」 代表 水波涼


水波「昔の話はずいぶん聞かされたんじゃないですか? NARUSEさんや斎藤さんに」

佐藤「ああ、昔の歌舞伎町は危険地帯だったことがよくわかった」


水波「ハハハ、ある意味そうだったかもしれませんね。僕も13年やってますけど、いろいろありましたよ」

佐藤「一応聞こう、どんな経験をしてきたかを」


水波「そうですね。2部制のお店でシャンパン20本空いたとき……」

佐藤「すまない、2部制ってなんだ?」


水波「あ、営業時間です。1部は夕方から深夜0時まで。2部は日の出からですね。日が出てからお昼までの営業のことを2部と言います」

佐藤「なるほど。続けてくれ」


水波「2部でシャンパン20本空けたことがあって、みんなベロベロなんですよ。それで、ホスト同士で「アイツは飲んでない」みたいないざこざが始まって、腹を立てた1人が包丁を出してきたなんてことがありましたね」

佐藤「グダグダに酔ってても、一瞬で覚めるレベルのハプニングだな」


水波「昔は血の気が多いヤツが多かった気がしますね。ヨソの店のホストが飲みに来て、その場でケンカになるなんてこともありました」

佐藤「やはり、誰に聞いても昔はケンカばかりだったんだな」


水波「そうですね、武闘派が多かったのはたしかです」

佐藤「では、今はどうだ?」


水波穏やかで大人しめの子が多いですね。コロナの影響もあって、客層もずいぶん変わってきてるんですよ」

佐藤「コロナ? コアなお客さんだけが残って、新規は来ないとか?」


水波「いえ、逆です。出かけられない間にライブ配信に力を入れていた子とかいるんですね。在宅勤務とかで配信を見るじゃないですか。すると、配信を通してホストを身近に感じられるようになって、自粛明けでお店に会いに来てくれるようになったんです

佐藤「意外!? コロナの外出自粛が結果的に宣伝につながったと」


水波「そういうことです。「推し活」的にホストを好きになる子が増えたんです。ホストの方でも、お酒飲まずに良い成績を残す子とかもいますしね」

佐藤「飲んでなんぼじゃなくなったのか!」


水波SNSを積極的に活用して稼ぐ子が増えました。もう武闘派ホストなんて出る幕ないですよ。酒の強さは問題じゃなくなりました。もちろん、ケンカの強さなんて自慢にならない。嫌がられるくらいでしょうね」


佐藤「ということは要するに、今の歌舞伎町は全然「龍が如く」の如くじゃない!

水波「そうなりますかね」


佐藤「あの世界観はファンタジーだったんだな……」

水波「そうみたいですね」

佐藤「ありがとう。勉強になったよ」


安全安心な街へ変わりつつある歌舞伎町。実際ゲーム内でも、街の変化を示唆する描写は多く見られるようになっている。少なくとも、ホストの世界では、昔ながらの力でのし上がるやり方は通用しなくなっているのかもしれない。


来年、2023年4月には国内最大級の超高層複合施設「東急歌舞伎町タワー」がオープンする。


この2年間沈んでいた街の活気も、外国人観光客と共に戻りつつある。


国内随一の歓楽街は、これからどう変わっていくのか? 街のこれからと、2024年発売予定の「龍が如く8」が気になるところだ。


~ 完 ~


取材協力:Smappa!Group
CLUB春 新宿区歌舞伎町1-2-13新光ビル5F 営業時間 19:00~24:00 定休日 日・月
AWAKE 新宿区歌舞伎町1-2-7 歌舞伎町ダイカンプラザ星座館 地下1階 営業時間19:00~24:00
SMAPPA! HANS AXEL VON FERSEN 新宿区歌舞伎町2-28-15 サチビル地下1階 営業時間19:00~24:00
BOND 新宿区歌舞伎町2-25-2 荒生ビル5F 営業時間20:00~24:00

執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
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