ロケットニュース24

史上初の「児童向けムー」が出版されたので読んでみたら、いくら何でも怖すぎた / でもやたら面白い

2022年7月21日

皆さんは雑誌「ムー」をご存知だろうか。多くの方がご存知だとは思うが、念のため公式の説明を引用しておくと、世界の謎と不思議に挑戦するスーパーミステリーマガジンである。

もしかしたら世の中には、この「ムー」を自分の子供に読み聞かせて英才教育を行っている親御さんもいらっしゃるかもしれないが、2022年6月9日以降、その必要はなくなった。なぜなら同日、史上初の「児童向けムー」とも呼ぶべき本が発売されたからである。

その名も「ムー認定! 最恐!! 都市伝説ビジュアル大事典」。児童向けの商品には「超絶」とか「爆裂」といった過度な修辞表現が使われがちゆえ、この「最恐」もその類かと思いきや、興味本位で読んでみたら大人でも怖すぎることが発覚したのでレビューしたい。

・本当に「児童向け」か

改めて詳しく書くと、月刊「ムー」編集部と、怪異の研究を行っている作家・朝里樹氏がタッグを組んだ結果生まれたのが、この「児童向けムー」だ。価格は1540円である。

口さけ女やトイレの花子さんなどの古典的なメジャーどころから、きさらぎ駅やコトリバコといったインターネット発の都市伝説、さらにはもっとマイナーなものまで、漫画やイラスト付きで丁寧に解説されている点が特徴だ。

児童向けとあって文体は平易ながら、しかしじっとりと恐怖を醸し出してくるし、前述のビジュアル化のおかげで、どの項目も臨場感あふれる仕上がりとなっている。そして、とりわけ筆者が恐怖に見舞われたのがこちらの項目だ。


トイレの花子さんである。



怖すぎる。


いくら何でも怖すぎる。筆者がこれまで他のメディアを通して見てきた花子さんも怖くはあったが、この花子さんからは何と言うか、別格の凄みを感じる。実際に遭遇してしまったら、その瞬間に絶命する自信がある。

こんなもの子供に見せていいのだろうかと案じる一方で、こんなもの大人だって怖いので震えざるを得ない。加えて、この花子さんがトップオブトップとはいえ、それに追随するビジュアルが「児童向けムー」には多数収録されている。たちが悪い。

しかしあまり「怖い」とばかり連呼していては、皆さんをこの本からただただ遠ざける結果になりかねない。なのでここからは少し趣向を変えて、筆者が同書の中でも特に興味深く読めた項目を5つほど、大人目線も交えつつ紹介してみようと思う。


・1. 白い手赤い手

まず最初に、「白い手赤い手」と呼ばれる都市伝説だ。「学校に存在する怪異」として掲載されている。ある学校のトイレで、真っ白な手と真っ赤な手が便器から出てくるのが目撃された。手はトイレに入った児童の尻をするりと撫でたという。

さらに「白い手がいいか、赤い手がいいか、青い手がいいか」という声が聞こえることもあるそうだ。そもそも尻を撫でられる時点で嫌すぎるので、撫でられた側にしてみれば「手が何色か」なんて最早どうでもいいのではないかという点が印象的だった。不思議な怪異である。


・2. ヒップホップババア

次にこちらは衝撃的な怪異である。昔、仲の良い老夫婦がいたが、おばあさんが亡くなってしまった。おじいさんは彼女の遺言通り、死んでも寂しくないようにと、その亡骸を家の壁に埋めた。

やがて壁から「じいさん?」と呼ぶ声が聞こえるようになった。おじいさんはそのたび「ここにいるよ」と返した。ある日、おじいさんは出かける用事が出来て、近所の若者に留守番を頼んだ。

すると壁からおばあさんの声が聞こえてきた。若者が「いない」と答えるや、おばあさんの幽霊が壁から現れ、「じいさんはどこだあ!」と恐ろしい形相で叫んだ。直後、スポットライトが輝き始め、おばあさんの幽霊はラップを歌い出したという。何で?


・3. メリーさんの電話

言わずと知れたメリーさんの都市伝説だが、一応説明しておくと、ある少女がメリーさんと名付けた人形を捨てたことをきっかけに、その人形から電話がかかってくるようになるというものだ。「わたし、メリーさん。今あなたの後ろにいるの」のフレーズは有名である。

このメリーさんの何が印象に残ったか。同書に掲載されている漫画において、メリーさんの声を聞く少女の持っていた電話がスマートフォンだったのである。「メリーさんと言えば固定電話」と思い込んでいた筆者は、何だか別の意味で怖くなった。隔世の感とはこのことである。


・4. 時空のおっさん

これもある意味、時代の変化を感じさせる怪異と言えるかもしれない。いつもと同じ風景なのに、やけに静かで誰もいない。そんな現実とよく似た異世界にまつわる、ネット発の都市伝説だ。

異世界に迷い込んでしまった時、どこからともなく作業着やスーツを来た「時空のおっさん」と呼ばれる謎の人物が現れるという。彼は「ここで何をしている」「どうやって入ってきた」と声をかけてきて、そこに迷い込んだ者を元の世界に戻してくれるそうだ。

日本では古来、神隠しに遭った者を山の神や天狗が元の世界に戻してくれたという伝説が残っているが、現代ではその役を担うのはおっさんらしい。おっさんが人ならざる者扱いされているわけではないと信じたい。


・5. お風呂ぼうず

夜の8時半頃に風呂場に現れるという、上半身が人間、下半身がロボットの姿をした怪人。何で? 下半身がロボットなのは何で?


・子供も大人も

さて、ここまで紹介すれば、この本がただ怖いだけのものではないことがおわかり頂けたかと思う。やたら面白いのだ。要するに怖さにおいても読み物としての面白さにおいても、子供と大人、両方に通用する本だということだ。

少なくとも筆者は、何だかんだ読んでいて楽しかった。きっと未知の前では、子供も大人も関係ないということなのだろう。ならば、あえてこう書こう。

本記事を読んで興味の湧いた方には、ぜひここで挙げた項目以外についても、その目で確かめてもらいたい。この本は最恐でいて、超絶面白く、爆裂楽しいのだから。

参考リンク:ワン・パブリッシング 公式HP
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.

モバイルバージョンを終了