ロケットニュース24

SNSで話題の「推し香水」をプロに選んでもらった結果 → 選ぶ側の「想い」も聞いてみた / 『Celes推し活』

2021年9月30日

今年の4月末頃からSNSを中心に「推し香水」なるものが話題になっていた。以前からオーダーメイドや重ね付けで楽しむ「推し香水」が話題になることはあったが、今回は自分が抱える「推しのイメージ」にぴったりなブランド香水をプロに選んでもらえるサービスが登場し、注目を集めていたのだ。

その人気ぶりは凄まじく、通常配送1~3日以内だったのが30〜35日以内となることもあった(2021年9月末現在は12日〜18日以内の配送)ほどだ。しかしそんなに注文が殺到していて、本当にしっかりと「推しのイメージ」に合う香水を選んでもらえるのだろうか。気になったので、「推し」のいる筆者が取材してみた。

・「推し」への熱い想いに応えたい

「推し香水」を選んでもらえるサービス『Celes推し活』では、自分が抱いている「推し」のイメージや想いなどを文章にして送ると、プロのスタイリストが500種類以上の香水の中からピッタリな香水を1種類選び、お試しサイズで送ってもらえるようだ。0.75ml(税込850円)か2.5ml(税込1700円)、もしくは税込500円のムエット(試香紙)が選べるようになっている。

香水を選んでもらう「推し」についての制限は書かれていない。イメージや好きなところなどを文章化できるのであれば、「推し」は二次元でも三次元でも、人物だろうとグループだろうと、物や概念でも大丈夫そう。しかも、文字数制限なしで記入することが出来てしまう。

『Celes推し活』では香りをオーダーメイド出来るわけではなく、あくまでセレクトされるのみ。香水好きなら、自ら推しっぽいイメージの香水を選ぶことも出来るだろう。にもかかわらず話題になったのは価格面などの手軽さと、香水のプロに選んでもらえるという特別感のせいだろうか。

私が抱く「推しのイメージ」を一番理解しているのは私だ。いくら香りのプロとはいえ、自分で選んだ「推しっぽい」香水よりしっくりくるものを選んでくれるのだろうか。そんなナメたことを考えながら「推し」についてや好きなところを必要最低限、厳選して書いていたら……

3109文字になった。わりと長い。400字詰の原稿用紙に換算すると約8枚分の文章量だ。今回はこの文章で「推し香水」を1本、50回プッシュ分(2.5ml・税込1700円)で注文した。

商品ページを確認すると、到着まで30〜35日かかるほど注文が殺到しているらしい。そんな中こんな長文を送って、本当にちゃんと読んでもらえるのだろうか。気になって夜しか眠れなかったため、Celesさんにお願いして香水のセレクト現場を取材させてもらった。

今回「推し香水」を選んでくれる阿部さんは香水のスタイリスト、香水選びのプロだ。しかし阿部さんは二次元にも三次元にも疎いらしく、筆者の「推し」が登場するゲームも当然プレイしていない。そんな阿部さんに、筆者が書いた「推しについて」3109文字のみを元に選んでもらう。

阿部さんはさっそく、筆者の送った「推しについて」3109文字に目を通し始めた。目の前に筆者がいるものの「普段通り」に選んでもらうため、お互いに注文内容についての質問や説明はせず、黙々と読み進めてもらう。

筆者の「推し」の見た目を、公式より公開されている画像で確認した後……

筆者が書いた「推しについて」3109文字をプリントアウトし、再度熟読し始めた。文字数が多い場合は、こうしてプリントアウトしてから精読していくらしい。ちなみに筆者の文章はA4サイズのコピー用紙4枚分になったが、このぐらい書く方は意外と多いそう。

そうして15分超、筆者がつらつらと「推し」である日本刀の付喪神(つくもがみ)という設定のキャラクターについて書き連ねた文章を、蛍光ペンで細かく確認しながらじっくりと読んだ後……

迷うことなく「推し香水」が選ばれた! 『R fragrance』というブランドの「OPAL SILK」という香水(オードパルファン)だ。

筆者の「推し」は刀の新しい時代を築き上げた存在ながら、古い時代の「折れず・曲がらず・よく切れる」刀を手本とした刀が元になっている。そのため、設立が2017年と新しいながらも豊かな日本を表現し、日本製にこだわる『R fragrance』のブランドイメージ自体は「推し」に合っている気がする。

そして「OPAL SILK」自体も、シルクロードを通じて良いものが入ってきていた古き良き日本に思いを馳せられるような香水らしい。阿部さんが書いたという『Celes』公式HP上の説明には「真の香り」など格好良さげな単語も並び、凛とした推しによく合いそう。

ただ、そうした情報から選ぶだけならば、プロでない香水好きの方でも選べそうな気がする。

しかし、実際に香りを確認してみるとナメた考えが一転した。「推し」の香りがする……! 直感でそう思ってしまった。筆者は「推し」を現代っ子なら香水などを使用しないタイプの硬派な男性だとイメージしているが、この香水は「推しの香り」だと一瞬で感じた。

まずふわりと、白檀や乳香といった、良い香りながら少し古風な印象のある香りが漂う。しかし、その奥にあるのはマスカットやヨーグルトの爽やかな甘酸っぱさ。それをローズのやや重みある甘さが土台となって支えており、芯のある香りに感じられる。古い刀を手本としながらも若く、しかし凛とした強さのある推しにピッタリすぎる。凄い……


・選ぶ側の想い

せっかくなので、阿部さんにどうやって今回の「推し香水」を選んだのか聞いてみた。まず文章から古き良き時代の日本という印象が合うことや、筆者が推しのどういったところを好きか、たとえば「格好良いのに可愛らしい」「凛としていて強い」と思っている点などに注目したそう。

送られてきた文章から「どういうイメージを抱き、どこに魅力を感じているか」などを読み取った後、実際に「推し」の公式画像を確認し、阿部さん自身が感じた「少し儚そう」という印象も加えて「推し香水」を選んだという。実際に見た印象を加えるのがポイントらしい。

筆者の「推し」イメージにある「格好いいのに可愛い」「凛々しくしてるのに隙をつくと素が出る」点に少し儚げな印象を加味して「移ろいやすい香り」に、「強さ」を「芯のある香り」に、そして「人に寄り添う優しさ」を「肌に馴染む香り」などへ変換していき、セレクトしたという。

そうして阿部さんと話していて気づいたのが、単なる香水好きではなく、香りの科学的な知識も豊富ということ。そのため、ブランドイメージや香水のストーリ、香りから浮かぶ色やイメージだけでなく、どんな成分が入っているからこうした香りになる、という具体的な知識を踏まえて語るのだ。

ちなみに、香りの知識や『Celes』で扱っている香水の背景や成分は全て頭に入っているらしい。「推し香水」は阿部さん含め、そうした香りの知識を持つスタイリスト3〜4名で分担し、1本1本セレクトしているそう。そうして既に1万本以上の「推し香水」を選び抜いてきたそうだ。

そんな『Celes推し活』は元々『Celes』で扱っていた、自分に合う香水をプロに選んでもらえる『Celesセレクト』や映画のイメージに合う香水をセレクトする『Celesシネマ』へ「推し」イメージの香水を選んで欲しいという注文がチラホラあったことから誕生したそうだ。

その他、『Celes』の代表であり映画好きでもあるソールズベリーさんがある店へ「映画のイメージに合うドリンク」を飲みにいった際、「香水だったらもっと上手く表現できるのではないか」と思った経験も反映されているという。そのため、時間はかかっても1本1本丁寧にセレクトしているそう。

これまで『Celes推し活』ではキャラクターや芸能人などの他、舞台作品や乗り物、ペットをイメージした香水などもセレクトしてきたという。どの注文にも「推し」への熱い想いが感じられ、それに応えようと必死になるらしい。中にはA4用紙10枚超の想いが送られてくることもあるとか。

一方で、注文主には小分けした香水と製品情報が載ったカードしか届けられず、選んだ側の「想い」が上手く伝わるか心配になることもあるそう。ただ、意外と感想が送られてくることも多く、その度に「伝わってよかった」と喜んでいるそうだ。リピーターさんも多いらしい。

ちなみに『Celes推し活』利用者には、初めて香水を使うという方も結構いるそう。元々『Celes』自体が香水を小分け販売することで、気楽に手軽に香りを楽しんで欲しい、というコンセプトで設立した会社なため、初めて香水を楽しんでもらえることも嬉しいようだ。

ついでに言うと、SNS上で「推しの〇〇イメージでこんな香水がきた」という感想を書くのも全然OKらしい。注文主が「推し香水」を気に入って他のお店でフルボトルを購入したり、感想を読んだ方が興味を持って他のお店で香水を買うことも「香水を楽しんで下さっているので気にしない」そうだ。

こんな大らかさが気軽さとしてあらわれ、人気に繋がっているのかもしれない。


・実際につけてみた

香水はつけてからの時間経過で香りが変わる他、肌に乗せたことでも香りが変化する。特に筆者の元にやってきた「推し香水」こと「OPAL SILK」は「肌に馴染んだ香りの移ろい」が楽しめるのが魅力の1つらしいので、実際につけてみてもイメージに合っているのか検証してみた。

阿部さんオススメのつけ方は「背中に2〜3プッシュ」とのことだったので、その通りにつけてみる。すると、つけてしばらくはやや涼しげなスンとした香りだったのが、徐々に丸みのある柔らかい甘さへと移ろいでいく。芯があるのにキツい香りでなく、たまにふわっと香る程度なのも良い。

まさに筆者が「推し」に抱く、人に寄り添い守っていこうとするイメージに合う香りだ。おまけに、凛々しくあろうとしているのに隙をつかれると愛らしい素が出てしまう、という推しの最高ポイントが香りで表現されているかのような変遷。「推し」そのものじゃないか……。

ちなみに阿部さんから「腕の内側につけて寝る」という楽しみ方も教えてもらったので、それも実践してみた。寝返りをうつときにも香って良いですよ、とのことだったが。これ、推しが隣にいる。寝かしつけてくれているのでは……? そんな幻を感じながら、心地良く眠りにつけた。

「推し香水」、自分で選んだ方が良さそう……などとナメたことを考えていたくせに、大満足してしまった。しかもその後、少しだけイメージをずらして再注文するリピーターもいると聞いていたので、同じ3109文字を使い「可愛さ強めのイメージで」ともう1本注文してしまった。

同じ推しで複数本の「推し香水」をセレクトしてもらう方や別の「推し」でオーダーする方、中にはプレゼント用にと注文する方もいるそう。到着まで少々時間はかかるが、「推し香水」だけでなく「推し」を語る楽しみなども手軽に楽しめる『Celes推し活』。気になった方は是非。

参考リンク:『Celes推し活』
執筆:伊達彩香
Photo:RocketNews24.

▼「推し香水」で幸せな幻覚を見た(?)筆者

モバイルバージョンを終了