このコロナ禍でテイクアウトやデリバリーを利用する機会が増えている。コロナ前に比べて自宅でも美味しく食べられる料理が増えたけど、揚げ物はやっぱり揚げ立てを食べたいよね! でも自分でやると面倒くさいし上手くいかない。

そこで! 洋食の名店に美味しくするコツ工夫を教えてもらったぞ!

東京・四谷の『かつれつ四谷たけだ』の店主、竹田雅之さんに尋ねたところ「コストコのグレープシードオイル」を使うと良いらしい。びっくりするほどカンタンに美味しくなるその方法を紹介しよう!

・名店『かつれつ四谷たけだ』

このお店は築地市場内『洋食たけだ』の2号店として、1970年『洋食エリーゼ』の名前でオープンした。2011年以降、揚げ物に特化したかつれつ四谷たけだとして営業している。洋食の名店としてその名を知られており、昼時は近隣で働く人々が美味しいランチを求めて行列になるほどの人気だ。


竹田さんは、先々代・先代と続く “たけだブランド”を引き継ぐ3代目。揚げ物のプロフェッショナルである。2017年に「カキバター焼定食」を取材した縁で竹田さんと知り合い、今回「揚げ物を美味しくするコツ」を伺った。


佐藤「竹田さん、よろしくお願いします。家で揚げ物を美味しくするコツってありますか? 大ざっぱな質問で恐縮ですけど」


竹田さん「ありますよ、カンタンにできるものが。コストコの「グレープシードオイル」で安い肉を1日漬け込んでおくと、びっくりするほど柔らかくなりますよ


佐藤え? 漬け込むだけ? それで美味しくなるんですか?」


竹田さん「なります。ブラジル産の鶏肉とかあるでしょ。それにオイルを刷毛(はけ)で塗ってラップして1晩置くんですよ


佐藤「なるほど! 漬け込みはこちらでやりますので、揚げ方のレクチャーもお願いしたいです」


竹田さん「わかりました。ご準備頂くのは、若鶏のササミとブラジル産の鶏もも肉があれば良いでしょう。鶏肉の方が漬け込みの効果がわかりやすいと思います。あと買えたらで良いので、アメリカ産の豚ヒレ肉と国産の豚ロースがあれば良いかな」


佐藤「わかりました! 準備します!!」


・下準備(漬け込み)

使用するのはコストコで販売しているイタリア産「オッタビオ グレープシードオイル」(920g×4本 税込2380円)だ。


漬け込む肉は、近所のスーパーで購入した国内産若鶏ササミ


そしてブラジル産鶏もも肉


それと国内産の豚ヒレ肉である。ヒレはアメリカ産のものを用意する予定だったが、あいにくアメリカ産のものを見つけることができなかった。それから豚ロースは誤って「肩ロース」を購入してしまったので、また次回ご指導頂くことになってしまった……。


豚ヒレは1口大にカットする。そのほかの肉は1食分ずつに分け、表と裏に刷毛でオイルをまんべんなく塗る。


ラップで包んで食品保存用袋に入れて……。


冷蔵庫で1晩寝かせる。下準備はこれだけだ!


・なぜグレープシードオイルなのか?

翌日営業終了後にお店を訪ねて、竹田さんに解説を受けるとともに、揚げるレクチャーして頂くことになった。


佐藤「よろしくお願いします!」


竹田さん「さっそくやりましょう。肉は1晩漬けたんですよね?」


佐藤「ハイ! お伺いした通りに。はじめにお尋ねしたいんですけど、なんでグレープシードオイルに漬けるんですか?


竹田さん「うちは以前洋食店(洋食エリーゼ)だったんですよ。今でも当時のメニューを出してますけど、2011年に揚げ物中心にメニュー構成を変えたんですよね。

その時にいろいろと試作を繰り返した結果、グレープシードオイルに漬け込むと肉が1番柔らかくなることを発見したんですよね。科学的な根拠とかはわかりませんけど、グレープシードオイルはサラリとしていて無臭だから、肉の味を邪魔しませんしね」


佐藤「なるほど、研究の成果だったんですね」


竹田さん「酵素の力で肉を柔らかくする調味料もあるんですけどね。アレだと不自然な食感になる気がするんですよ。グレープシードオイルが1番自然に柔らかい食感になったので、お店でもその方法で漬けています」


佐藤「お店のノウハウを明かしちゃっていいんですか!?」


竹田さん「漬け込みだけがノウハウではないので、問題ないですよ」


佐藤「太っ腹ですね! ありがとうございます」


・揚げる時のポイント

竹田さん肉は脂や筋を切ってからオイルに漬けてください。今回はそれをやってなかったみたいですけど。それとフォークで肉をブスブス刺しておくとオイルを浸透しやすくなります。揚げる前にブスブスやってもいいですけどね。

で、衣をつける前に塩コショウで下味をつけておきます」


竹田さん「次に衣をつけます。小麦粉を軽くつけて卵をくぐらせます。まあここら辺は説明するまでもないかもしれないけど」


竹田さん「それでパン粉をつけます」

佐藤「パン粉は市販のもので良いですか?」

竹田さんできれば生パン粉が良いですね。ドライのパン粉を使うとね、揚げた時に硬くなるんですよね。ふんわりとした衣に仕上げたいなら生の方が良いでしょう」


竹田さん「で、揚げます」


佐藤「油はサラダ油ですか?」

竹田さんうちはコーンサラダ油を使ってます。最近の市販品は「キャノーラ」っていって、菜種油が多いんですけど、コーン油がいいですね。コーン油は揚げた時に香ばしくてほのかな甘さがあるんですよね


佐藤「ちなみに油の温度は?」

竹田さん「ちょうど170度です」


竹田さん「内側から泡が出てきたら、良い頃合いなので油から上げます」

佐藤「え? 早くないですか?」


竹田さん「あとは余熱で(火を)入れるんですよ。油から上げた状態で5分くらい放置します。そうするとまわりの熱でじっくり中に熱が入っていくんですよね。

「揚げ物は蒸し物」って言う料理人もいるくらいなのでね。油で火を入れるのは8割、あとの2割は余熱で入れるって感じですね」


・オイルありとオイルなし

今回比較のために「オイルあり」のササミと「オイルなし」のササミを準備してそれぞれ揚げてもらった。見比べたところ、外見に大きな違いはない。


ところが2つの断面を比べると、その差ははっきりしている。オイルなしの方は肉の繊維がくっきりと見えている


一方のオイルありは、内側から肉汁があふれて繊維が良く見えない


食べ比べると違いは歴然! オイルありが断然美味い!! ササミ特有の筋張った感触はなく、まるで鶏のテリーヌでも食べているような柔らかさだ。オイルに漬け込むだけでこうも違うのか!?


佐藤「食感が全然違いますね! ビックリするほど柔らかくなってる。自分で準備した肉ですけど、こんなにまで違いが出るとは思いませんでした!」


竹田さん「ササミは基本的に肉質が柔らかいからオイルが浸透しやすいんですよね。鶏肉は違いがわかりやすいと思います」


続けてブラジル産鶏もも肉も揚げてもらった。肉の下処理をしていなかった都合で、オイルなしは私が準備したものを。オイルありはお店で漬け込んだものを揚げてもらうことになった。

もも肉はササミほど見た目に大きな違いはなかったが……。



食感には大きな差が出た。やはり肉質が柔らかくなっており、オイルありは衣のザクザクとした歯ざわりが引き立って感じられる。牛カツやトンカツに比べて鶏カツは格下のように思っていたけど、これを食べてその価値観が変わった。鶏カツ美味いやん!


最後の国産豚ヒレ肉は鶏肉ほど大きな違いは感じられなかった。だがオイルの効果で肉質が柔らかくなっているのはたしかだ。竹田さんによればアメリカ産の豚ヒレを漬け込むと、しっかりと効果を感じられるそうだ


・揚げ物(ササミ・鶏モモ・豚ヒレ)を美味しくするコツ、まとめ

竹田さんにお教え頂いたポイントは以下の通りだ。


1.肉にグレープシードオイルを刷毛で塗ってラップをして1晩漬け込む
2.パン粉は生のものを使う
3.揚げ油はコーンサラダ油がオススメ
4.温度は170度
5.揚げて火を入れるのは8割、残りの2割は余熱で入れる


肉の下ごしらえだけを尋ねたつもりが、パン粉や油、揚げ方まで教えて頂くことができた。面倒な揚げ物だけど、美味しくできるコツがわかればその面倒も苦じゃなくなるはず。参考にして美味しい揚げ物に挑んでみてくれ!


・取材協力

店名 かつれつ四谷たけだ
住所 東京都新宿区四谷1丁目4-2 峯村ビル1F
時間 11:00~15:00 17:00~20:00(短縮営業中) 土曜日11:00~15:00
定休日 日・祝日

執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24