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【スペイン三大祭】燃え尽きるほどファンタジーな『バレンシア火祭り』に参加してみたら … 「大人が命がけでやってる学園祭」みたいだった

2021年9月7日

おはようございま〜す! スペイン第3の都市・バレンシアに来ていま〜す! バルセロナから特急で3時間半かけ、私がわざわざここへ来た理由はひとつ。バレンシア最大の祭り『Fallas(火祭り)』を取材するためだ。

中世の時代から続くバレンシア火祭りは、本来なら毎年3月15日〜19日の5日間で開催されるならわし。しかし昨年は新型コロナの影響で中止、今年は延期となっていたものが9月1日〜5日に変更になった。9月開催は火祭りの歴史において異例中の異例なのである。

火祭りというからにはスペイン人が口から火を吹いたり、火の中に飛び込んだりするのだろうか? ちょっと怖い気もするが、これも経験だ。それではいくぞ……!

・「お祭り」の気配

私がバレンシア入りしたのは祭りの10日前。

しかし街はすでに、いたるところで祭りの気配を感じる雰囲気!

バレンシア火祭りの大きな特徴は『ファジャ』と呼ばれる張り子人形の集合体がバレンシアの街中に出現すること。

祭りまでの期間中、市民が1年がかりで制作した人形が少しずつ組み立てられてゆく。

それにしても想像していたより1000倍くらいクオリティが高い。この強烈なファンタジー。ほとんどディズニーランドの世界ではないか。

バレンシアの人々はファジャが少しずつ完成していくのを嬉しそうに眺めつつ、祭りに向けて徐々にテンションを高めていくのである。道路のド真ん中に建設されるファジャたち。もちろん全面通行止めだ!


・痛恨の大ミス

さて……「で、いつ “火” が登場すんの?」とお思いの読者もいることだろう。ここで正直に告白しておくと、実は私、火祭りの趣旨を勘違いしたままバレンシアへ来てしまったのである。

5日間に渡って開催される火祭りでは、街中に設置されたファジャ(今年は全部で523カ所)の中から1つだけ最優秀作品を選出するというルール。そして祭り最終日には、なんと「最優秀作品意外の全てのファジャを燃やしてしまう」らしい。

つまるところ、祭りに火が登場するのは最終日のみ。最終日こそが祭りの本チャンであり、現地の人に言わせると「最終日を見なければ意味がない」と言っても過言じゃないのだそうだ。そういう意味の “火” だったのか……。

そうとは知らぬ私の立てた取材プランは、祭り初日と2日目のみ。慌てて延泊を試みるも、ホテルが満杯状態のため不可能だ。あまりにも痛恨……記者人生最大のミスである。


・気を取り直して……

ま、こうなってしまった以上は全力でファジャ巡りを敢行するより仕方ない。バレンシアの情報サイトから街中に点在するファジャの位置を確認することができる。

マップに点在するポイントのうち、青色のものが「スペシャルなファジャ」だ。祭り初日、私は全10カ所のスペシャル・ファジャを全て回ってみることにした……徒歩で。


・一挙公開

ちなみにファジャには大小様々なサイズがある。

こちらが最も小さいタイプ。

これは中くらい。

こちらは大きめサイズ。そして……


これがスペシャル・ファジャだ!!!! デカイ!!!!


ファジャとは『ニノッツ』と呼ばれる人形の集合体。スペシャル・ファジャともなれば数十体の人形で構成されており、360度どの角度から見ても違った表情が楽しめる。今回はこの最も東側にあるスペシャル・ファジャからスタートし、反時計回りに巡るルートをおおくりしよう。

2体目は赤ん坊を抱く聖母……

……の裏側は気絶した女子をお姫様抱っこする金髪男。どういうコンセプトだというのか。

3体目は中心部から最もはずれた場所にあり、何度か道を間違えながら到着。海賊一家ってところだろうか?

これまでと比べるとダークな雰囲気。まだ未完成にも見えるが、あまり気にするな。

そこからバレンシア中心部へ向かい、4体目は「とにかく陽気な人たち」って感じ。

こちらも完成まであと一歩。色々と事情があるのだろう。

おや!? 5体目はこれまでと明らかに作画が異なる感じだな!? どうも現地の報道を見る限り、この女性像が「祭りの顔」的存在らしい。

ちなみにこちらが祭り5日前のようす。どうやってくっつけたんだろう……。


・ちと休憩

ふぅ……それにしても暑い。淡々と書き進めてはいるが、スタートからここまでおよそ5時間が経過している。スペインのいいところは、とにかくカフェがどこにでもあるところだ。疲れたらこまめに休憩しよう。

ところで火祭り期間中はいたるところにスイーツの屋台が登場しているのだが、驚くべきことに全ての店で同じものを売っている。

ドーナツっぽい何かとチュロス。

このドーナツっぽいやつ、ビックリするほどおいしい(7個入り3ユーロ)。スペイン人いわく名前は「Rosquitas」といって、祭りなど限られた場所でしかお目にかかれないそうだ。みんなもチャンスがあったら絶対に絶対に逃さないでくれよな!


・閑話休題

さて休憩終わり。続く5体目は……

完全に途中やん!

まぁ「これが初日の醍醐味」ってとこか……てっぺんの女性が美しい。

6体目はスパイっぽい女性の像。

ファジャには風刺や世情を反映したものも多い。「何かのメッセージが込められているのだな」とは気づきつつも、難解でイマイチよく分からない。スペイン語さえ理解できたなら解説文を読むだろうに……!

7体目はスペースヒーロー風。

狭い街の中は撮影が難しい。

命がけで車道から撮影した8体目。

おフランス風エレガントな9体目。

皇帝としもべたち風の10体目でフィニッシュ! ここまで7時間半! のべ4万歩! クタクタで初日終了!


・しっぽり2日目

初日に撮れ高は確保したので、2日目は宿泊先周辺エリアで市民の雰囲気を感じてみることにした。

火祭りの仕組みは地区ごとに町内会的なチーム(カサール・ファジェール)が結成され、チームごとに祭りを進行していくというもの。集会所やファジャの周りには柵が設置されているが、もしかするとコロナ対策の一環なのかもしれない。

街の人たちはバレンシアの民族衣装を着用し、楽器を持って周辺を練り歩いたりする。実にスペインらしい。アメージング。お祭り最高。

街の中では一瞬「撃たれた!」と思うくらい、激しい爆竹の音が1日中鳴り続けている。子供やお年寄りがビックリしちゃうのでは……と心配になるが、そこは全然オッケーらしい。

オモチャや小物を売る屋台も多数。

「コロナ禍での祭り」とあって心配していた部分もあるが、これは要するにチームごとの小規模な祭りが集合している感じなのだな。心配するほど密状態になることはなさそうだ。

夜になると信じられないような爆音で音楽が鳴り、チームごとにパーティーが始まる。バレンシア市民たちの熱気と祭りにかける情熱、なんだか高校の学園祭を思い出すなァ〜。

ファジャはライトアップされ、昼間とはまた違った表情を見せてくれる。

日付が変わっても火祭りは終わらない。


・心残りがあるくらいが良い

火祭り3日目、私は後ろ髪を引かれる思いでバレンシアを後にした。最終日(9月5日)にはスペインのテレビ局もこぞって火祭りの特番を放送。ファジャが燃える様子は各自「Fallas 2021」で検索してみてほしい。

またスペシャル・ファジャ以外にも素晴らしいファジャがたくさんあったので、選りすぐりの画像は以下にご紹介しておく。今回私が散策したのはバレンシアのごく一部のエリア。バレンシア火祭りを堪能し尽くそうと思えば5日間でも足りないくらいだ。

火祭りへ来たのに火を見られなかったことは残念だが、今回の2日間だけでも私は十分すぎるほど祭りを堪能することができた。そう……逆を言えば「またここへ来る理由ができた」ということなのだ。旅は心残りがあるくらいがちょうど良い。下調べが甘かった自分、グッジョブ! ってことで現場からは以上です!

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

▼選りすぐりのファジャたち

▼実は祭り初日の夜、台風並の暴風雨がバレンシアの街を直撃。多くのファジャが被害にあってしまった。無念……!

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