今まで何度負けてきただろう。夕暮れに染まる駅のホームに立つと、私(中澤)はこれまでの自分を顧みずにはいられない。気づけば遠くまで来たものだ。
訪れたのは京成線青砥駅。2021年2月1日、下町を臨むこの駅の雰囲気にぴったりな駅そばがオープンした。立ち食いそば屋の『三松』である。知る人ぞ知る存在の『三松』だが、駅そばとしての営業は初。そこで社長に経緯を聞いてみた。
・『三松』とは
製麺所・三松屋食品直営の立ち食いそば屋である『三松』。かつては都内に4店舗がチェーン展開されていたが、昨年2020年に三河島店が、今年、高輪店が長い歴史に幕を下ろした。
そんな『三松』の名物メニューが「しいたけそば」。トッピングはしいたけ天ではなく、煮物のしいたけだ。大きなしいたけ4つが丼にフタをする視覚インパクト大なこの一品は、青砥駅にオープンした『三松』でももちろん健在である。ちなみに、税込490円だ。
・厨房に社長がいた
しいたけから染み出す甘い煮汁とそばつゆのハーモニーは山の味。さらに、三松屋食品のペロンと柔らかい麺の軽い食感が特徴的だ。駅そばでこの個性派メニューは、ひょっとしたら駅そば好きの名物店になるかもしれない。
しかし、特に大きいチェーンでもない『三松』が、どういう経緯で駅そばを始めるに至ったのだろうか? ちょうど厨房に社長がいたため話を聞いてみた。
社長「京成高砂駅前に『新角』という立ち食いそば屋があるんですが、そこにご紹介いただきまして。最初は『新角』に話が来たんですが、新角から「うちはやらないから、どうだ?」と」
──人の繋がりですね。ちなみに、この店の営業時間は何時から何時なんですか?
社長「朝は6時30分からなんですが、こんな世の中なんで、何時まで営業するかというのはまだ決めかねてまして……」
──定休日などはありますか?
社長「それもまだ決めかねているところなんですが、柴又が再開するまでは無休でやろうかと思っています(※三松屋食品は柴又駅前で別屋号の立ち食いそば屋『新華』を経営しているが、駅前開発の関係で現在休止中)」
──ということは、再開の目途は立っているんでしょうか?
社長「一応、6月の予定です」
──とのこと。思いがけず、別屋号である柴又の話に飛び火したが、『新華』は『新華』で休止が惜しまれた名店だったため記載しておく。
・そっと寄り添ってくれる『三松』
立ち食いそばを取り囲む環境は決して甘くない。夕暮れに染まる店内で、私はまた自分を顧みてしまう。今まで何度負けてきただろう。
だが、『三松』の「しいたけそば」からは、隣に並んでそっと肩を叩いてくれるような味がした。どうしたい? なんかあったの? 大きいしいたけから染み出す優しい味がそう問いかけてくる。うん、そうだよな、そうだよ……
前を向くしかねえよな。
ボチボチ行こうぜ。
<完>
・今回紹介した店舗の情報
店名 三松 青砥店
住所 京成青砥駅構内2F上り1、2番線ホーム(京成高砂寄り)
営業時間 6:30~
定休日 無休
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼三松屋食品の麺の食感はラーメンでもとても生きている