ロケットニュース24

空飛ぶ車の展示会で見つけた、全ての空を飛ばない車に今すぐ実装したいもの / アクセルの踏み間違いによる事故を防ぐ『アイアクセル』

2020年11月14日

2020年11月4日から6日まで「フライングカーテクノロジー」と題して、空を飛ぶ車の開発に関する展示会が東京ビッグサイトにて行われていたのはご存じだろうか。

一般入場も可能だったが、開催日は全て平日。しかも、この業界に関連したメーカー向けの展示ばかりだったので、エンタテインメント性的な面では微妙。正直言って、業界に無関係な一般層がそこまで盛り上がれるタイプのイベントではなかった。

……が、会場にて空飛ぶ車には全く無関係ながらも、しかしわりとガチで既存の空を飛ばない全ての車に実装したくなる、素晴らしいアイテムの展示に出会ってしまったのだ。特に、最近運転の精度が怪しくなってきた高齢者層が所有する車に。

・フライングカーテクノロジー

最もお伝えしたい事にはほぼ無関係なのだが、一応会場となった「フライングカーテクノロジー」についても簡単に触れておこう。公式HPでは「日本初!空飛ぶ車の展示会」となっており、まあそういう側面も無くはないが、実態としてはドローンの展示や、その他関連技術の展示会だった。

会場における最大の目玉として最も報じられた(地上波の取材なども入ったようだった)のは、おそらくSkyDriveの『SD-03』という機体の展示だろうか。

カーボン製ボディの電動式な機体で、四方向にプロペラがついている。ザックリ言えばデカいドローンだ。垂直離着陸を可能とする1人乗りで、試験飛行は成功しているものの、現状はまだ5分から10分程度しか飛べないという。

公式YouTubeにてデモ飛行の様子も公開されているため、どんな感じかはそちらをご覧になって頂きたい。今はまだ実用には遠いと言わざるを得ないが、それでも凄い技術が使われているに違いなく、今後の発展を期待すべきものだろう。

が、空飛ぶ車が大好きな筆者は、ガチに車から飛行機に変形してそのまま空を飛ぶ、KleinVisionの『AirCar』のデモ動画を少し前に見てしまっていた。こちらも公式YouTubeにて視聴可能なので、是非見て欲しい。空飛ぶ車って、こういうのだろ?

ということで、展示会に来たものの、そこまでテンションのアガる展示には出会えず帰ろうとしていたのだが……空飛ぶ車とはあまり関係無さそうな展示が多いエリアで、その日最も感心させられたアイテムに出会ったのだ。


・岡山から

前置きが長くなったが、ここからが本題だ。その展示を行っていたのは、岡山からやってきた株式会社 英田エンジニアリング。宣伝しているのは『アイアクセル』なるもの。

ブースの看板には「アクセルペダルの踏み間違いによる事故を防ぐ」とある。あまり広くないブースは、体験用の車の運転席部分を切り抜いてきた感じのモノでほぼ埋まっていた。


・踏み間違え事故

ブレーキとアクセルの踏み間違えによる事故と言えば、数ある自動車事故の中でも昨今ぶっちぎりで世間の注目を集めているタイプだろう。若者も時折起こすが、高齢者がブレーキを踏んでいると思い込んだまま、実際にはアクセルをベタ踏みして事故を起こしてしまった……というようなものは、特に。

学生時代にMT車に乗っていた筆者としては「MT車ならそんな事故は……」という考えも一瞬浮かぶが、時代の趨勢(すうせい)はAT車。いまさらMT車至上主義を振りかざすよりも、AT車に踏み間違いを防いだり、踏み間違えても事故は防ぐような仕組みを搭載する方が建設的だと考えている。

さて、看板の謳い文句を見るに、この『アイアクセル』なるものはなかなか興味深い。とりあえず話を聞いてみると、これは後付け式で、元々ついていたアクセルと交換して取り付けるのだとか。


そして交換後は、普通に安全運転する範囲ではあり得ないレベルで急に踏み込むと、アクセルを自動で解除。そして、事故にならないよう緩やかにブレーキを作動してくれるらしい。

つまり、例えば急ブレーキを踏もうとして間違えてアクセルをベタ踏みした場合、通常のアクセルであれば、果てしなく加速して事故を起こしてしまう。

しかしアイアクセルに交換しておけば、たとえ本人がパニックを起こしてアクセルをベタ踏みしても、アクセルは自動で外れており、緩やかにブレーキがかかってそのうち車は止まるわけだ。完全に事故を防げるかどうかはともかく、アクセル全開で突っ込んでいくよりは救いのある結果になると思われる。

とはいえ、実際に試してみなければ何とも言えない。ということでやってみたところ……



ええやんこれ。


まずは普通にゆっくり踏み込んでみたところ、奥までアクセルを踏み込んだだけで警報ブザーが鳴った。これは、踏みすぎを警告するためのものだという。日本の公道で制限速度を守って走るなら、ここまでアクセルを踏み込むことは、急な坂道だらけの街に住んでいない限り中々無いだろう。

ベタ踏みした際にブザーが鳴って困るのは、無駄に超加速しないと気が済まない、自分の運転技術を過信している迷惑な走り屋系ピープルくらいしか思いつかない。

仮に居眠りなどでうっかりアクセルを踏み込んでしまった場合などでも、ブザーが鳴ることは事故の防止につながりそうだ。そして次に、通常ならあり得ない程度の激しさでアクセルを踏み込んでみると、「ガチャ」っと音がして、アクセルが一瞬で解除され、ブレーキが作動した

停止状態からであれば、MT車でいうところの「発進時に1速の半クラをミスってエンストさせた時」並みの速さで車は止まる気がする。つまり、車がちょっと揺れる程度で、前進はほぼしないんじゃなかろうか。

時折ニュースで目にする「駐車場でバックと間違えて前進 → ブレーキを踏んだつもりがアクセルを踏み込んで店舗に突入」的な事故は、特にしっかり防げそう。走行時に速度に対してどの程度の距離で完全に停車できるのかは不明だが、先にも書いた通り、加速し続けるよりはマシだ


・およそ15万

ちなみにこの手の踏み間違い防止装置は、ちょうど2020年の初夏あたりからホンダやトヨタ、三菱などの主要な自動車メーカーが、一気に販売や導入を開始している。だいたい値段は工賃と本体で10万もかからない程度だろうか。

それに対して『アイアクセル』は、車種にもよるが大体15万前後と言う話だったので、少し値は張るもよう。しかし、国土交通省の「ペダル踏み間違い急発進抑制装置の性能認定装置一覧」に掲載された全18種類のうち「装置の概要」に明確にブレーキを作動させることが記載されているのはこの『アイアクセル』だけだ(2020年11月13日現在)。

他社のもので一番多いパターンは、車の前後にセンサーを取り付け、障害物がある状態でアクセルを踏みこんだ場合にエンジンの出力を制御したり、ブザーを鳴らすタイプ。

障害物との距離が3メートルにならないと作動しなかったり、そもそも低速時にしか作動しなかったりする。そして停車するには自分でブレーキを踏まなければならない。これでは、どうも強制力を欠くように感じるのだ。

他社の踏み間違い防止システムを体験していないものの、少なくともこれまで自分が車を運転してきた経験において、英田エンジニアリングが作ったこの踏み間違い防止装置の性能は必要十分であり、シンプルであるがゆえに信頼できると感じた。

特に、とにかく問答無用でベタ踏みしたら常に警報。急な踏み込みは全て即解除。解除後はブレーキを緩やかにかけて、前後に障害物がなくとも作動するというわかりやすさが気に入った



それに、センサーだのなんだの複雑な仕組みではなく、機械式なのも良い。ちなみに筆者は未だにパワーウィンドウよりもハンドルを回して開閉するタイプの窓を評価し、腕時計もゼンマイ式だ。機械式最高。だって丈夫なんだもの。

ブースにいた営業の方に聞いてみたところ、地元の岡山周辺ではジワジワと売れつつあるようだが、それ以外の地域では全くだそうだ。まあ筆者も本記事を書くため公式HPを見ようと思い、「アイアクセル」でググったが、なかなかヒットしなかったもんなぁ。

知名度を広めるには、今回のようにどこかで展示をして体験させることが一番だと思うが、それもご時世的に中々難しいか。なんというか、相応の評価を得るための機会を、色々な理由で得られていない感。

と言うわけで、踏み間違い防止装置の導入を考えている皆さん、株式会社 英田エンジニアリングの『アイアクセル』も検討してみてはいかがでしょうか?

確かに知名度は低いと言わざるを得ませんが、大手メーカーのものと同様に、ちゃんと国交省の認定を受けている品です。筆者の怪しげな体感に基づく感想が信用できなくとも、国交省なら話は別でしょう。公式HPから問い合わせてみてください。

参照元:株式会社 英田エンジニアリング国土交通省フライングカーテクノロジー、YouTube[1][2]
Report:江川資具
Photo:RocketNews24.

▼『SD-03』の展示を見る数日前に見てメチャクチャ興奮したKleinVisionの『AirCar』。VTOLと言う点では『SD-03』に分があるかもしれないが……これを見ちゃたらもうデカいドローンタイプでは驚けなくなってしまうのもわかって頂けると思う。

▼冒頭で辛口の評価をしてしまったSkyDriveの『SD-03』。これも凄いことなのだとは思う。

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