燻製やホットサンド、ダッチオーブンなど、キャンプならではのアウトドア料理にもいろいろあるけれど、もっともインパクトがあるといえば「ビア缶チキン」だろう。
丸鶏のおしりにビール缶を突っ込んだ強烈なビジュアル、バケツをかぶせる豪快な調理法など、いかにもアウトドアなワイルドメニュー。個人的にはビールが苦手だし、ちょっとした道具も必要らしく敬遠していたのだが、実はコーラでも作れるという。そこで秋空のもと、初めて挑戦してみた。
……ら、とんでもないことが起きた。なお、本文中には丸ごとの鶏肉など、少しばかり生々しい画像もあるので苦手な方はご注意を。
・下ごしらえ
まずは丸鶏をゲット。ネットショップや精肉店のほか、大型スーパーでも取り扱っている模様。筆者は冷凍の輸入品(1kg / 税込540円)を購入した。安い!
ガチガチに凍っている状態なので、半日ほど放置して解凍する。頭や足先は最初から取り除かれている。
解凍されて軟らかくなったら、なかなかにニワトリ感のある見た目になった。毛穴や関節も生々しい。
レシピサイトによると、味が染みこむようにフォークで穴を開ける、とある。グサグサと刺していくと、皮や肉が断裂するような「ブツッ」というすごい音がする。生き物を食べているんだなぁ、という実感が改めてわく。
丸鶏を買ったのも人生初なので知らなかったのだが、すでに内臓が取り除かれている状態で、おしりに穴が開いている。ここにビール缶をさすことになる。グロテスクといえばグロテスクだが、筆者は意外と平気だった。命、美味しくいただきます。
多くのキャンパーが愛用する万能調味料「マジックソルト」で味つけ。軽くもみこんで1晩放置する。
・当日の出来事
当日、キャンプ場に移動して焼いてみる。肉を取り出すと、もうこの時点でハーブソルトのいい香りがして美味しそう! 半分ほど飲んだコーラ缶に鶏をセットする。
炭はロゴスの「ミニラウンドストーブ」。燃焼時間は約30~45分なので、途中で足さないといけないかもしれない。
ところで、鶏をかぶせた缶はそのままだとグラグラと揺れ、安定感がない。「ビア缶チキンスタンド」という専用の道具もあるようなのだが筆者はもっていない。ネット上ではアルミプレート、カップ、ペン立てなどで代用するアイディアを見かけた。今回は100円ショップの五徳(ごとく)を使ってみる。
さらに、金属製のバケツでフタをするのだけれど、同じく所有していない。このためだけに買うのはなぁ……と思っていたら、こちらもネット情報に助けられた。ボウル、植木鉢、鍋、アルミホイルで自作などのアイディアが続々。筆者は厚手のアルミホイルを鍋にあてて自作してみた。
あとは1時間~1時間半ほど加熱すればできあがりとのこと。
原理はこうだ。熱せられたビールないしコーラが蒸発しながら鶏の内部を加熱する。さらに周囲をバケツでおおっていることで蒸気が逃げず、蒸し焼き状態に。また炭火の遠赤外線効果や、炭酸が肉を軟らかくする効果で、外はカリッと、中はフワッとの丸焼きができあがるという!
20分ほど経過して、待ちきれなくて中をのぞいてみると……
いい感じに焼けている! これは1時間もいらないかもしれないな、とフタを戻す。順調順調。
……と思ったのも束の間。アルミのフタは自作なので隙間が多く、つねに蒸気が出ている。それが「ちょっと多いかな?」と思った瞬間……
コーラ缶が吹っ飛んだ────!
な、な、な、なにが起きた!? ダレカオシエテ! 筆者あぜん……
幸いにも吹っ飛んだ方向には人も道具もなく、もちろん自サイト内なので被害はなかったが、もしのぞき込んでいるときだったら大変だった。思いきりコーラをかぶった炭が、消えかけてジュージューいっている。
いったなにが原因だったのだろう? ネットで似たような事例を探してみたのだが見つからない。夏場に炭酸飲料を高温の場所に放置すると破裂してしまうという、あれだろうか。火力が強すぎてコーラが沸騰したが、圧力が逃げずに噴射した?
しかし、ここで同時に1つの奇跡が起きる。
反対方向に吹っ飛んだ鶏肉が、ちょうどアルミホイルの上に落ちたため無傷!
もう焼けているように見えたので切り分けて食べてみると……
美味い! これまでの人生で食べた鶏肉の中で1番といっていいほど美味い!
皮はマジックソルトの塩味がきいていてスパイシー。肉はジューシーで軟らかい! コーラのおかげかほんのり甘みがあるようにも感じる。先ほどの惨劇が嘘のように上手くできている。
両手を肉汁だらけにしながら、夢中でむさぼり食ってしまった。これを食べてしまうと、もうファストフードやコンビニのチキンは食べられないっていうくらい美味しい! 人生観がかわる旨さだ。
・気をつけよう
コーラ缶チキン、簡単に作れて美味しいことに間違いないのだが、こういうこともあると一例になれば幸いである。
購入した丸鶏によっては、首の位置にも穴が開いていることがあるらしい。蒸気を逃さないために首もふさぐといい、というアドバイスもあるが、逆に今回は首が閉じている肉だったために悲劇が起きたかもしれない。
いずれにしても、火を扱う以上は空間に余裕をもって設置する、グローブ着用、消火の用意、などの基本を守ることが大事だと再確認。焚き火台をほかのギアから離して設置していたのが不幸中の幸いだった。
ちなみにチキンはめちゃくちゃ美味しかった。思い出しても口の中に旨みが広がるほどである。もう1度食べたい……。
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.