2020年6月末、東京地方裁判所が画期的な判決をくだした。ABEMA TIMESによると、「NHKだけ映らないテレビ」を購入した女性がNHKと受信契約を結ぶ義務がないことの確認を求めた裁判で、東京地裁は「契約締結の義務は存在しない」との判断を示したのだ。

つまるところ「NHKだけが映らないテレビ」であれば「受信料を支払う必要はない」ということである。この手の裁判には滅法強いNHKだけに各方面に衝撃が走ったが、果たして今から2年前に発売されたソニーの「NHKが映らないテレビ」はどうなっているのだろうか? 調べてみたところ、驚きの進化を遂げていたのでご報告したい。

・「NHKが映らないテレビ」とは

2018年8月に発売開始となった「NHKが映らないテレビ」ことソニーの「液晶モニター法人向けブラビア BZ35F / BZシリーズ」を、みなさんは覚えているだろうか? 形こそテレビであるものの、チューナーが一切付いていない同モニターは発売前から大きな話題を呼んでいた。

当サイトでも発売と同時に「BZ35F / BZシリーズ」を購入し、同モニターに搭載されたAndroidを利用して「NHKが映らないテレビとして機能するのか?」を調査。結果的に当時は「TVerなどのアプリ側がモニターの規格に対応しておらず、NHKはおろかテレビとしてほぼ機能しない」という結論に至った。

あれから約2年、事務所に置かれた「液晶モニター法人向けブラビア BZ35F / BZシリーズ」は、ゲーム専用モニターとして存在しているだけ。だがしかし「画期的な判決も出たし、ちょっといじってみるか~」と軽い気持ちで調べてみたところ、同モニターは圧倒的な進化を遂げていたのだ。

・進化その1: TV系アプリが多数搭載されていた

購入当時、民放のアプリは「フジテレビ(FOD)」しかなかったが、現在ではTVerが搭載されたおかげで「日テレ」「テレ朝」「TBS」「テレ東」「フジテレビ」……などなど、少なくとも10の民放放送が視聴可能だ。

さらに、以前からあった「ABEMA TV」や「Hulu」に加えて「Amazon Prime」「Netflix」「DAZN」などのアプリも取得可能になっていたから「映像を楽しむ液晶モニター」としては格段の進化を遂げたと言っていいだろう。

・進化その2: TVerにNHKのコンテンツが無い

勘のいい方は「あれ? TVerってNHKの番組もあるよね?」とお思いのことだろう。確かにスマホアプリのTVerでは2019年8月からNHKの一部コンテンツが視聴可能となっており、当時は「スマホからも金をとる布石か」「NHKが映らないテレビ対策か」と噂された。

仮に「BZ35F / BZシリーズ」のTVerと、スマホアプリのTVerが同じ仕様だと「NHKが映らないテレビ」として成立しなくなってしまう。……が、今回「BZ35F / BZシリーズ」のTVerで何度検索を繰り返そうと、NHKのコンテンツは確認できなかった

NHKが映る「スマホ向けTVer」と、NHKが映らない「モニター向けTVer」のあからさまな違い……! 裏でNHKとTVerがどんな暗闘を繰り返しているのかは知る由もないが「現時点でモニター向けTVerにNHKのコンテンツはない」ということだけは紛れもない事実である。

・圧倒的に進化していた

まとめると、2年の時を経てソニーの「NHKが映らないテレビ」は、NHKを映さないまま映像を楽しむモニターとしては格段の進化を遂げていた。特にTVerに一切のNHKコンテンツが無いことは「NHKが映らないテレビとして生きていく」という強い意志を感じた次第だ。

なお、冒頭でお伝えした「NHKだけ映らないテレビ」は、NHKの放送信号のみを弱くするフィルターを取り付けた改造テレビなので、ソニーの「液晶モニター法人向けブラビア BZ35F / BZシリーズ」とは全くの別物だ。「判決出たのか!」と勇み足で同モニターを購入するのは、どうか控えて欲しい。

判決を受けたNHKは控訴するとこのことなので、この先今回の判決が引っくり返される可能性も十分にある。……が、まずNHKが認めるべきなのは「現状のNHKに不満を持つ国民は多い」ということではなかろうか? 公共放送としての在り方が、改めて問われている。

参照元:ABEMA TIMESPR TIMES朝日新聞デジタルソニー「液晶モニター法人向けブラビア BZ35F / BZシリーズ」
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.