外出自粛要請を受けて、人々の自宅生活を支援するべく、様々な企業が自社のコンテンツを無料公開し始めている。純粋に有難い限りだ。「タダより高いものはない」とは言うが、なんだかんだ無料は至高である。無料こそ心の安らぎなのである。

というわけで、今回はそうしたコンテンツの中から、筆者が個人的に気になったものを5つほど挙げようと思う。この春は無料の恩恵を心ゆくまでしゃぶっていきたい。

・国立科学博物館の「かはくVR」

まずは誰もがときめくであろうコンテンツからだ。現在臨時休館中の国立科学博物館が、2020年4月24日より、展示室全体の3DビューとVR映像を「かはくVR」と名付けて公開している。休館中に撮影した画像をもとに作ったものだそうだ。

このサービスを利用すれば、まるで実際に博物館の中にいるかのように展示鑑賞を楽しめる。使い心地を例えるなら「Googleストリートビューの博物館版」といった感じだ。

自宅にいながらにして鑑賞できる点に加え、誰もいないバーチャルな博物館を1人で回れるという点もポイントが高い。実質貸し切りのVIP待遇なので、とても気分が良い。知的好奇心と自尊心を同時に満たしてくれる稀有なコンテンツである。

今のところ公開終了時期は明記されていないが、興味のある方は早めに覗いてみるといいだろう。なお3DビューはPCやスマホで見られるが、VR映像を見るには専用の機器が必要なので注意だ。


・株式会社UZUZの「プログラミング学習動画」

続いて紹介するコンテンツも大変興味深いものだ。人材紹介事業を運営する株式会社UZUZ(ウズウズ)が、プログラミング学習動画を自社のYouTubeチャンネルで無料公開している。

「就活生や新入社員向け」と銘打たれてはいるが、元エンジニアの方が講師をされているだけあって、その道を志していない全くの初心者であっても非常にわかりやすい内容となっている。

例えば筆者のようなド文系の門外漢からすると、プログラミングは分野が違い過ぎて難解極まる世界に思えがちだ。「隣の芝生は青く見える」ならぬ、「向こうの畑は何やら怖い」状態である。だがこういった機会に「向こうの畑」の案内を受けることで、新たな知見を得ることができる。

動画公開期間は緊急事態宣言が解除されるまでの予定(基礎レベルの動画は解除後も引き続き公開)とのこと。余裕をもって視聴されることをお勧めする。


・スターダンサーズ・バレエ団の「ドラクエバレエ」

皆さんは、あの国民的ゲーム「ドラゴンクエスト」がバレエ化していたことをご存知だっただろうか。「ドラクエバレエ」に携わったスターダンサーズ・バレエ団が、2019年7月にパリのジャパンエキスポで披露した舞台をYouTubeにて動画公開している。

恥ずかしながら筆者は今回初めて知ったので動画を見てみたところ、衝撃を覚えた。勇者が踊りながらモンスターを倒していたり、何ならモンスターも踊っていたりと見どころが多い中で、とりわけ注目すべきは楽曲部分だ。

原作のゲームと同様に、このバレエの伴奏にもすぎやまこういち氏の作曲した音楽が使われているのだが、氏の壮大かつ優雅な音楽とバレエとの親和性が尋常ではないのである。聞いているうちに元からバレエ音楽だった気がしてくるという逆転現象まで起こるレベルである。

この舞台を見なければ、ドラクエのそんな側面に気付くことはなかっただろう。ちなみに動画の内容は本来の公演より短い特別版なので、フルで見たい方は次回公演を要チェックだ。また動画の公開終了時期は明記されていないが期間限定のため、早めに視聴してほしい。


・「LEON」のバックナンバー

言わずと知れた大人の男性向けファッション雑誌「LEON」のバックナンバーも、2019年4月号から2020年4月号までのものが無料公開されている。

ひとたびページを開いたなら、目次の段階から「モテ」という単語が洪水のように押し寄せてくる。読み進めれば網目のように張り巡らされた「モテ」のロジックにとらわれ、読み終える頃には脳細胞のことごとくが「モテ」の思想に染まる。

極限まで研ぎ澄まされた「モテ」の学術書、それが「LEON」だ。男性の方は自粛期間中に同雑誌を読み込み、モテ倒すための準備を始めるべきだろう。無料公開の終了時期は6月25日予定とのこと。


・「コロコロコミック」のバックナンバー

最後に取り上げたいのが、小学生向け漫画雑誌「コロコロコミック」だ。2020年1月号から4月号までのバックナンバーが現在無料で読めるようになっている。

雑誌名を聞いただけで懐かしい思いを抱く人も多いはずだ。筆者も少年時代は毎月お金を握りしめて「コロコロコミック」を買っていた。

大人になった今読んでも面白い内容だろうかと思ったが、いざフタを開けてみるとあの頃と変わらず「ズコーッ」と言いながらキャラクターがズッコケていたり、何ら遠慮なく排せつ物をネタにしていたりして、思わず笑顔になってしまった。

「LEON」から続けて読むとギャップで頭がクラクラしてくるものの、それもまた一興だ。懐かしいあの頃を思い出したければ必読である。こちらも公開終了時期は不明だが、ぜひお早めに。


・自粛期間の今こそ

さて、ここまで紹介してきた5つの無料公開コンテンツの中で、皆さんの心に響くものはあっただろうか。自宅生活を彩る一助になっていれば幸いだ。今後もさらなるコンテンツが公開される可能性は大いにあるので、常にアンテナを張っておきたいところである。

「タダより高いものはない」とは言うが、タダより気安いものもない。今こそ、自分の世界を広げていくチャンスなのかもしれない。

参照元:国立科学博物館「かはくVR」株式会社UZUZ「UZUZ就活チャンネル」、Twitter @SDB_ballet@web_LEON@corocoro_tw
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.