ロケットニュース24

ライブに行ったことがない「引きこもり」をライブハウスに連れて行ったらこうなった

2020年2月21日
提供:エクシング

どうやったら人が集まるのか? この問はバンドマンならびにライブハウス関係者の永遠の課題と言っても過言ではない。売れないバンドマンである私(中澤)も例外ではなく、類友の音楽仲間やライブハウス関係者と呑むと最終的にはその話をしている。

だが、そんな話し合いはいつも宙を手でつかもうとするかがごとく堂々巡りに終わるのだ。思うに、ライブが日常と化している人が話し合ったところで、本当の問題点に気づけないんじゃないだろうか? みんなもう感覚がバカになってるから

そこで、ライブとは一切縁のない引きこもりをライブハウスに連れて行ってみた。

・西本大紀という男


──男の名は西本大紀。8年間のニート生活の末、ロケットニュース24で記者をしている無趣味・無特技・無職歴を自負する引きこもりである。


西本大紀「その説明は承服しかねる! 俺は引きこもりではない」


中澤「ほう。では、最近いつ外出したかを答えてみたまえ」


西本大紀「取材でコンビニにUFOを買いに行ったし天下一品にも行ったし」


中澤内閣府によると、『ふだんは家にいるが,近所のコンビニなどには出かける』は “狭義の引きこもり” なのだとか……」


西本大紀「広義ではなくまさかの狭義……!」


中澤「恨むなら政府を恨むんだな」


西本大紀「バ、バカな……!!」


──そんな政府に定められた引きこもり・西本大紀は、やはりライブに1度も行ったことがないという。実は、西本がロケットニュース24に応募してきた時、面接を担当したのは私なのだが、当時、彼はこう言っていた。「経験したことがないことを体験していきたい」と

それなら今からライブハウスに行ってみよう。西本の記者としての希望も叶えられるし、もし「また来たい」と思えれば引きこもりを脱却できるかもしれない。さらに、私も普段聞けない意見が聞けて一石三鳥ではないか。

・下北沢のライブハウスへ

そこで、さっそくライブハウスだらけの音楽の街・下北沢にやって来た我々。だがしかし……


西本大紀「すみません。俺はここまでが限界のようだ


中澤「まだ駅前やがな」


西本大紀「街中から “圧” を感じる。お前みたいなヤツの来る場所じゃねえって。家に帰りたい」


中澤「大丈夫。みんな西本君にそこまで興味ないよ


西本大紀「きっと俺みたいな引きこもりがライブハウスに入った瞬間、異常な数のピアスした人にボコボコにされるに決まってる!!」


中澤「そんな人は稀にしかいない。僕が守るから行こうぜ」


西本大紀「嫌です」


中澤「そう言わずせっかくここまで来たんだし……」

西本大紀「嫌です」


中澤「僕もついてるから……」

西本大紀「嫌です」


中澤「……」


西本大紀「……」



中澤なにしにシモキタ来たんだコラァッ!」


西本大紀嫌だ嫌だ嫌だーーーーー!!!」


西本大紀「ハッ……! この体勢はっ……!?」


中澤「クックック。かかったな。そう、手押し車だ


西本大紀「すみません。足をおろしてはくれまいか? あっ、押さないで


中澤「後ろの人が押すと前の人は進むしかない。それが手押し車よ。このままライブハウスまで押しきってくれるわ!」


西本大紀「おのれ謀ったな……!」


──手押し車でライブハウスに突入する引きこもり! しかし、ライブハウスにはそんな引きこもりが予想だにしない光景が広がっていた!! 地獄のライブハウス突入記は次ページからスタート!

参考リンク:みるハコ
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

・ライブに行ったことがない引きこもりをライブハウスに連れて行ったらこうなった(その2)


西本大紀「ギャインギャインドスンドスン言ってて何歌ってるか分からねェッ!」


西本大紀「ドリンクの注文すらままならねェェェエエエ!!」


西本大紀「客、普通の人しかいねェェェエエエッ!!!!」


西本大紀「バンドによるのかもしれないですが、思ってたよりライブハウスにいる人の年齢層が高めで驚きました。なんかの自治体に携わってそうな人とか普通にいるし


中澤「全然普通でしょ?」


西本大紀「いや、でも予想の2.5倍くらいうるさかったんで、ここに1時間はいられないです


中澤「あー、バンドマンの感覚がバカになってる部分の1つだね」


西本大紀「ただ、その音量のせいか腹の底に響くような臨場感があって、この場所が好きな人の気持ちもちょっと分かりました。あれはここでしか味わえない感覚かも

──「全てが予想以上だった」という西本。どうやら、ライブハウスの良さは伝わったようだが、そもそも、水が合わなかった模様。まあ、その気持ちも分からんでもない。ライブハウスは地獄を見に行く場所みたいなところあるし

とは言え、これでは引きこもり脱却の糸口にならないのも事実である。そこで、延長戦! まだまだ体験してないライブの形式はあるぞ!!

・映画館でライブ・ビューイング

というわけで、映画館のライブ・ビューイングにやって来た。これなら椅子も用意されてるし、ライブハウスよりはまだ落ち着けるはず。


西本大紀「すみません。1つ質問してもいいですか」


中澤「聞こう。言ってみたまえ」


西本大紀もう手押し車はいいんじゃないでしょうか?」



中澤え? 何? 聞こえない


西本大紀くっ、殺せ!」


──豆知識:都市部で手押し車をするとお互いの声が聞こえにくいよ。押される人は、この体勢になる前にキチンと自分の意志を伝えておこう! とんでもない場所に連れていかれるかもしれないぞ!!

さて置き、やはり椅子があり個人のスペースが区切られているのは安心するようだ。入場する前、「客のノリについていけるか」を不安がっていた西本だが、ライブ・ビューイング後話を聞くと、「案外居心地は悪くなかった」という。


西本大紀「アーティストによるのかもしれないですが、なんとなく人の質的にライブハウスよりも俺に近い人が集まってる感じがしました。ノリノリな人も確かにいたけど、普通に座って落ち着いて見てる人とかもいたのが意外でしたね。ノらなきゃ肩身狭いみたいな圧力っぽいのがもっとあるかと思ってました」


中澤「ライブハウスの臨場感と比べるとどうだったの?」


西本大紀「音で殴られてるような感じの臨場感はライブハウスの方が上でしたね。ただ、くっきりしたサウンドが聞き心地が良くて、大スクリーンの迫力も凄かったです。その上、さっき言ったノリノリの観客の歓声が混じるので、現地でライブを観るのとはまた違う臨場感がありました」


中澤「また来たい?」


西本大紀「う~ん、ただ俺にはハードルがやっぱりちょっと高いかなあ。合いの手とか、お客さんがMCに答えたりもするんですけどルールを知らないとビックリします。ビックリしたくないので多分もう行かないかな

──そっかぁ~。周りの観客の反応も障害になりえるか。確かに、ファンの間で暗黙の了解となってる振り付けとか掛け声は、ライブビギナーの時ハミってる気分になったかもしれない。かと言って、ああいうのやり始める時って、結構勇気いるしな

なんとなく西本大紀のことが分かってきた。では、それらを踏まえてもう1個だけ付き合ってもらおう。我々が最後に向かったのはカラオケボックスだ


西本大紀「実は俺、カラオケほとんど行ったことないんです」


中澤「ほう。理由を聞いても?」


西本大紀「歌うのが苦手なんですよね。恥ずかしいというか」


中澤「大丈夫。ニッシーがそういう人間だってことは理解している。だてに長いこと手押し車してないぜ。俺たちは2人で1台じゃないか


西本大紀せ、先輩……!」


中澤「考えてもみろ。俺たちは何のためにこれまで手押し車を続けてきた? ニッシーがライブを楽しめるようになるためじゃないのか!?」


西本大紀「ライブ……ミタイ……」


中澤「今ここで引きこもりを脱却することで政府に復讐するのだ!」


西本大紀「セイフ……フクシュウ……」


中澤「行くぞ!」


西本大紀「イエス……サー……」


──そう、今日ここに来たのは歌うためではない。ライブを見るためだ! 実は、カラオケボックスでライブ・ビューイングができるサービスをJOYSOUNDが2019年6月から開始しているのである。

・カラオケルームでライブ・ビューイング

サービスの名は「みるハコ」。部屋を予約し、「みるハコ」用ライブ・ビューイングのチケットをサイトから購入することで対応の店のカラオケルームでライブ・ビューイングすることができるのだ!!

見知らぬ人が隣にいることはないし、ジュースや食べ物を注文すると店員さんが持ってきてくれる。これ、ライブ見る環境としてはありえないだろ。どうだニッシー! また来たいか!?


西本大紀「ミルハコ……マタキタイ……」

──西本大紀のさまよう魂もついに約束の地を見つけたようである。その顔は、ライブを見ているとは思えない安らかな表情に見えた。

それにしても、ソファに寝転がって店員さんが運んできてくれるジュースやピザを食べながらライブ・ビューイングするなんて事実だけ並べるとセレブみたいな話である。カラオケボックスだけどな!

ちなみに、『みるハコ』で見られるのはライブ・ビューイングだけではない。TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』が無料公開されているほか、2月26日から舞台「けものフレンズ(再演)」も無料配信されるなど、さまざまな映像を見ることができるぞ。


西本大紀「エヴァだ! エヴァ見ましょう!!」

──普段カラオケに行かないという人も楽しめるに違いない。色んなライブ形式に参加した今回の記事。ライブに行ったことがない人の意見は新鮮で、私自身ライブシーンの今を肌で感じることができた。

もちろん、「目の前の臨場感」や「同じ趣味の人が集合する連帯感」などを求めてライブに行く人も多いだろう。そういったディープさはライブハウスの魅力だ。ライブハウスは人間や生き様を見に行く場所なのである。

一方、気楽に見たい人にとっては「みるハコ」はかなり大きい選択肢の1つであるようにも感じた。進化し続けるライブシーン。自分に合った参加の仕方を見つけるのも面白さの1つかもしれない。

参考リンク:みるハコ
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼なお、人気バーチャルライバーグループ「にじさんじ」のライブをはじめ、「みるハコ」独占のライブ・ビューイングも予定されており、2020年はEXILEの事務所『LDH』とのタイアップも実施されるとのこと。

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