オーストリアの首都・ウィーンには様々な名物スイーツが存在している。ケーキ界の大スターたる『ザッハトルテ』もウィーンの生まれだ。その元祖はどこか? という問題は法廷で争われた過去があり、結果『カフェ・ザッハ』が『オリジナル』の称号を勝ち取った。
そんな正真正銘 “元祖ザッハトルテ” をいただきに、少しオシャレにキメた私は颯爽とウィーンの街へ繰り出したのだ。裁判してまで守り抜いたオリジナルザッハトルテのレシピには、一体どんな謎が秘められているのかしら? なんだかドキドキしちゃうな!
とか思ってたら……!
・ホテル・ザッハの1階
ウィーンのド中心にそびえる5つ星ホテル『ザッハ』の1階がケーキショップ兼カフェになっている。
チョコレート色を基調としたシックな店構えだ。
平日でも行列が絶えない。
広い店内で無数に山積みされているのは全て、大小様々のザッハトルテたち!
・甘い……!
カフェの行列に並び、さっそく元祖・ザッハトルテを注文してみた。『オリジナル ザッハトルテwithホイップクリーム』のお値段は7.5ユーロ(約902円)。ホッ……よかった。想像していたよりお安い。
ケーキには「SACHER(ザッハ)」の文字がスタンプ風にデザインされていて、見るからに格式高そうである。添えられたホイップクリームとともにいただいてみると……
ウマ〜〜〜イ!!!
でもスッゴク甘ぁぁぁ〜〜〜〜〜い!!!!!
・助けて! 煎茶先輩!
ザッハトルテとはジャムとブランデーの染み込んだスポンジをチョコレートでコーティングしたもの。日本で一般的に売られているザッハトルテとザッハのザッハトルテ。見た目に大差はないが、その糖度は段違いである。
もちろん非常においしい。しかしその甘さゆえ、一口食べてはため息……といった具合でなかなかケーキが減らないのだ。先輩の協力がなければ、私はおそらく完食することができなかったであろう。本当にかたじけない……
煎茶先輩!
『SENCHA SENPAI』(5.8ユーロ / 約697円)はカフェ・ザッハのレッキとしたスタンダードメニューである。そのネーミングに引かれて思わず注文してしまった。ティーパックに湯を注ぐタイプの、いわば変哲のない普通の緑茶だ。
調べたところ「SENPAI(先輩)」は日本のアニメなどの影響で、海外で広く知られるようになった日本語らしい。だからといって「煎茶先輩」の脈略は全く理解不能であるが、いい意味で使用されていることは確かな模様。
この煎茶先輩が意外にも、甘ったるいケーキによ〜く合っちゃったんだから驚きである。異国で知る日本文化の新たな一面。こういうのって、イイよね!
・太っ腹すぎて怖い
1時間かけて煎茶とケーキを平らげ、「みやげでも買うか」と物販コーナーをのぞいていた私。すると何やら豪華な装丁の本が並べられているのを発見した。広げてみるとスイーツのレシピ本。ケーキ屋にレシピ本が売られているなんて、日本だと珍しい気がするなぁ。
パラパラとページをめくればオシャレなスイーツばかりで夢のようだ。「ケーキ作りとは縁がなかったけど、思い切って1部買おうかしら」……そんなことを考えていた私の手は、あるページでピタリと止まることになる。なんとそこには……
「ザッハトルテ」のページが確かに存在していたのだ!
・お店の人にきいてみた
裁判してまで争った「オリジナル」のレシピを1部たったの15.5ユーロ(約1863円)で無制限に販売するなど、私にはほとんど狂気の沙汰としか思えない。しかし本にはザッハトルテのレシピが詳細に記されており、「続きはナイショ!」等といった記載もないようだ。
ひょっとすると本に書かれているのは「観光客向けのレシピ」で、オリジナルとは異なるのだろうか? いや、でも表紙には「オリジナルザッハ」とあるしなぁ……。こうなったらハッキリ聞いてみるしかないだろう。エクスキューズミー……?
──これはお店で食べるザッハトルテと同じレシピなんでしょうか?
女性店員「エッ? そうですケド……」
──マジなんですね……!
女性店員「そう言われると不安になってきたワ! ちょっと待ってくださいネ」
──…………
男性店員「どうされマシタ?」
──これはお店で食べるザッハトルテと同じレシピなんでしょうか?
男性店員「なんですって? 不思議なことをおっしゃる方だナァ。 “たぶんそう” だと思うヨ〜(笑)」
・伝統と格式
カフェ・ザッハの方々がレシピに対して何の執着も持たぬ様子であるのを見て、私は自分のケチくさい考えをひどく恥じた。
重要なのはレシピではない。カフェ・ザッハが培ってきた伝統と格式を求めて客は店に集う。全く同じケーキを出す店が現れたところで、客はザッハを選ぶだろう。レシピ販売はそういった絶対的な自信のもと為せる芸当なのではないか。
う〜ん……参りました!
とはいえウィーンは日本から遠く、次にカフェ・ザッハでケーキを食べられる機会はいつになるやら見当もつかぬ。せめてその味だけでも、できれば年老いた両親に教えてやりたい。
……ということで迷わずレシピを購入!
そのレシピをここで公開することはもちろんできない。しかしウィーン旅行へ行ってレシピを購入、あるいは友達に「買ってきて」とねだる行為は全くもって合法なのである。
……以上、オリジナルザッハトルテを1度といわず「いつでも」食べることができるという超有益な情報をお伝えしたぞ!
・今回ご紹介したお店の詳細データ
店名 カフェ・ザッハ
住所 Philharmoniker Str. 4, 1010 Wien, オーストリア
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
▼遠くからも目を引くホテル・ザッハの建物
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