神仏は人間とは異なる次元の存在。私達はなんとなーくそんな風に思いがちなので、神仏の像に顏がたくさんあろうと多少手が多かろうと、驚くようなことではないだろう。
でもこの神様には度肝を抜かれた! 目から手。目から手がニョキッ。中華世界には思わず二度見してしまう神様が存在する。
・神様のインパクトがエゲつない
その謎めいた風貌の神様の名は「甲子太歳金辨大将軍(こうし たいさい きんべん だいしょうぐん)」。
以前、日本のテレビ番組で台湾のお寺でまつられている様子が紹介されたため「台湾の神様」として広まったが、正確には「中華圏における神様」だ。大陸のお寺にもいらっしゃる。私の甲子太歳金辨大将軍との出会いも北京あたりだ。
長い名前も印象的だが、最大のインパクトは何といってもビジュアルだろう。そのお姿は日本では「目から手」と言われがち。だが中国や台湾では「手中有眼(手のなかに目がある)」と表現されることがある。よく見ると目から伸びた手の平に眼球があり、この世界の全てを見ているのだ。
・何の神様なの?
で、彼は何の神様なのだろうか? ややこしい話なので、めちゃくちゃ省略して1行でいうと
甲子の年 担当の神様
なのだそうな。甲子(きのえね)とは日本でもおなじみの「十干十二支(じっかんじゅうにし)」の1つ。60年で1回りするアレだ。直近だと甲子の年は1984年。担当の年は結構前に終わっているのね。次回は2044年だ。
そして、災いを避け安寧をもたらす運命の神様でもあるという。甲子の年生まれの人はよーくお参りしておくといいかもしれない。
・なんで目から手が生えてるの?
なんとなく金辨大将軍のことはわかった気がするが、最も気になるのはコレ。「目から手が生えている理由」ではないだろうか。実は金辨大将軍には2人のモデルがおり、ビジュアルのベースになったのはモデルのうち1人があった災難「目ン玉くり抜かれ事件」。
そのモデルとは、殷王朝を舞台とする小説『封神演義』に登場する人物・楊任(ようじん)だ。
彼は、大変な暴君となった紂王に忠言したところ怒りに触れてしまい、目玉をくり抜かれて殺されてしまったのである。しかしここはファンタジー。仙人が楊任を助け、空洞になった目に秘薬 “金丹” をハメこむと、なんと手がはえてきた……! というエピソードからあのビジュアルが採用されたと言われているのだ。
・神様に会える場所
そんな甲子太歳金辨大将軍は、中国大陸や台湾のお寺で出会うことができる。太歳信仰は現在では大陸より台湾の方が盛んなので、台湾の方が出会いやすいかもしれない。
ただ小さなお寺だと拝観エリアにはその年担当の神様の像しか安置されていない可能性があるので、大きめのお寺が狙い目だ。有名なのは新北市にある地獄寺こと「石門金剛宮」あたりだろう。
生で見たときのインパクトといったらない。ひしひしと異文化を感じることだろう。そして、金辨大将軍だけでなく自分の生まれ年の神様にもお参りしておくといいことがあるかもしれない!
Report:沢井メグ
Photo:Rocketnews24.
▼北京あたりで出会った金辨大将軍様。フルカラー仕様
▼こちらは台湾の高雄の関帝廟で
▼他の59人の神様はわりと普通のビジュアルだ
▼異彩
▼ 金辨大将軍のエピソードは漫画『封神演義』なら萌えること間違いなしかも
▼ありがたい