京都アニメーションの出世作として知られているアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』。美麗な作画と細かい動き、そして何よりその世界観は、現代アニメの礎を築いた作品と言っても過言ではない。
しかし、古参アニメオタクによると本作は単なる大ヒット作ではなく社会を変えた作品だという。その心は?
・古参オタが感じる現代のアニメオタク
「顔出し、名前出しなし」という条件で話を伺ったのは30年以上深夜アニメを見続けてきた仮名・宅郎さん。ガチガチの古参オタである彼は、現代のオタクに人種の違いを感じているのだとか。
宅郎「今って、深夜アニメも一般的な趣味の1つとして認められている感じがするじゃないですか。GLAYのHISASHIさんはじめ有名人の方が深夜アニメについて言及したりするし」
──確かに、我々が高校生だった20年前はそんなことはほとんどなかったですね。
宅郎「そう、深夜アニメを見ていると知られたら問答無用で “気持ち悪い”。社会にも学校にも居場所なんてなかった。そのため、アニメオタクはみんな隠れキリシタンのように生きていました。
現在もそういう雰囲気が完全になくなったわけではないですが、やはり当時とは重さが違います。今は普通の人が “オタク” を自称し、うまくやれば話のタネやステータスになることもある時代ですから。見た目やキャラは普通だけど実はオタクというギャップが良いという価値観が生まれてます。
それは我々の時代のオタクにはいなかった人種。オタク界の新人類です。我々の時代はそもそも見た目やキャラが普通の人がほぼいなかった。人間関係などが、普通の人のようにウマくできないからアニメにのめり込むという入り口の人が多かったですし」
──本当に時代が変わりましたね。
・社会を変えた作品
宅郎「というか、世界が変わった気分です。まるでパラレルワールドに迷い込んだように……ある時を境にドッと新人類が増えたんですよね」
──え? いつですか?
宅郎「『涼宮ハルヒの憂鬱』からです。『ハルヒ前』と『ハルヒ後』でアニメを見る層にガラッと変化が起きました」
──確かに語り継がれる名作ではありますが、『エヴァンゲリオン』など、もっと一般層に話題になった作品は他にある気もします。なのに、なぜ『ハルヒ』だったんでしょうか?
・変わった理由
宅郎「個人的には、これにはライブが絡んでいると思います。『涼宮ハルヒの憂鬱』くらいから、アニメや声優のライブイベントが盛んになってきたんですね」
──なるほど。しかし、なぜライブが盛り上がると人種が変わるんでしょうか?
宅郎「今までのアニメオタクは基本部屋の中にいたんですが、ライブやイベントに遊びに行くアニメオタクが増えたんです。学校や部屋などのクローズドな世界ではない場所へ。
必然的に色んな人に出会うことになりますね? しかし、その人たちはみんな『ハレ晴レユカイ』を歌えるわけですよ。完全に自分だけの楽しみだったはずのアニメが、みんなの楽しみへと変革されたビッグバンはこの時だったと思います。ハルヒが世界を変えたんです」
──ありがとうございました! 作中でも無意識に世界を改変してしまう涼宮ハルヒ。気づけば猫も杓子もアニメを見るようになった現代日本が、ハルヒの影響なのだとしたら長門(ながと)もビックリの世界改変だ。
これは推論であり、実際のところ社会が変わった理由は分からない。信じるか信じないかはあなた次第な、まさに『涼宮ハルヒの憂鬱』みたいな話だ。それでも、ハルヒが多くの人の心を救ったことは間違いないだろう。フィクションの持つ力……それは時として本当に世界を変える力になりえるのかもしれない。
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.