人間、知っているつもりでも「実際は違っていた」なんてことが意外と多い。「波浪注意報」は「ハロー注意報」ではないし、「気が置けない」は「信頼できない」ではなく「信頼できる」という意味である。いずれにせよ、真実を知る瞬間まで「勝手にそう思っていた」ことはよくあることだ。
つい先日、生まれて初めて岩手県盛岡市を訪ねた時のこと──。盛岡行きが決まって以来、ぜひ食べてみたいと心待ちにしていた「盛岡じゃじゃ麺」を目の前にして私、P.K.サンジュンは面食らってしまった。なぜなら盛岡じゃじゃ麺の麺が、普通にうどんだったからである。
・盛岡3大麺の1つ
わんこそば、盛岡冷麺と並び、盛岡3大麺に数えられる盛岡じゃじゃ麺。ご当地グルメの割にその知名度はなかなかのもので「聞いたことはある」という人は多いのではなかろうか。私は桃鉄の盛岡駅に「じゃじゃ麺屋」があったことから、かなり昔から名前だけは知っていたように思う。
テレビなどでチラ見した盛岡じゃじゃ麺は、いわゆる中華系の「ジャージャー麺」とさほど変わらないイメージで、ひき肉を使用した肉味噌ときゅうりが強く印象に残っていた。味についても「まあ、ジャージャー麺なんでしょ?」と思っていたが、結果的には全くの別物と判明した次第だ。
・元祖盛岡じゃじゃ麺「白龍」
さて、今回私が足を運んだのは「盛岡じゃじゃ麺」と検索すると至るところでヒットする、老舗「白龍(パイロン)」である。こちらの初代が戦前に旧満州で食べていたジャージャー麺をアレンジしたものが「じゃじゃ麺」の始まりだというから、いわば「元祖じゃじゃ麺」のお店だ。
店は盛岡駅から徒歩15分強のところにあり、基本は一本道なので迷うこともなかった。豪華絢爛な店構えではなく、むしろ老舗の年季があらゆるところからダダ漏れている。席数もさほど多くなく、20人も入れば店はギュウギュウといったところだろうか。
私はカウンターに着席し、じゃじゃ麺の中盛り(600円)をオーダー。すぐ目の前ではおばあちゃんが麺を茹でていた。大鍋の中で茹でられている麺を「うどんっぽい麺だなー」なんて思っていたのだが、実はそのまんま うどんだったのである。
・味もちいたんたんも想定外
ジャージャー麺のせいか、じゃじゃ麺も中華麺的なイメージをしていたが、まさかうどんだったとは……! お店によってはきしめんを使用しているところもあるようだが、念のため帰京してから周囲の人間に「じゃじゃ麺がうどんかきしめんだと知っていたか?」尋ねてみたが、当編集部で真実を知る人間は1人もいなかったことを報告しておきたい。
また、味も私の想定とはだいぶ違った。甘めの肉味噌かと思いきや、白龍のじゃじゃ麺はかなりスパイシー。クセはかなり強めで、めちゃめちゃハマる人とそうでもない人の差が激しいであろう個性的な味付けである。そういう意味で中毒性はかなり高い。
またこれも知らなかったのだが、麺を食べ終わった器に生卵を溶きカウンターに戻すと、お湯を注いでくれる。さらにネギや味噌を追加すれば玉子スープ「ちいたんたん」の完成である。なんという盛岡じゃじゃ麺の奥深さ……! 麺がうどんで、ちいたんたんで締める。これが盛岡じゃじゃ麺の王道だ。
というわけで、岩手県民以外はあまり知らないと思われる衝撃事実が判明した。盛岡じゃじゃ麺の麺は、うどんだ。もしくはきしめんだ。うどんっぽく見えるがうどんであり、きしめんっぽく見えたらきしめんだ。白龍は取り寄せもしているので、興味がある人は試してみてもいいかもしれない。最後にもう1度、盛岡じゃじゃ麺は、うどんかきしめんだ。
参考リンク:元祖じゃじゃ麺「白龍」
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
▼一説によると「3回食べると中毒になるグルメ」という声も。確かにわかる気がする。