皆さんは家系ラーメンはお好きだろうか。私(西本)はと言えば、誰かに「家系ラーメンおごるよ」と言われたらその人に手放しで心酔するくらいには好きである。あの独特の濃厚スープと太麺に骨の髄まで魅了されている。
しかしこうまで書いておきながら、家系発祥のお店であり呼び名の由来ともなった吉村家には行ったことがない。一度その事実について考えだしたら、自分がとても無為な日々を過ごしていたように思えてきた。行くしかない。
・本家本元が教えてくれたこと
というわけで、さっそく現地の横浜に向かった。もうすぐ吉村家だというところで、天下一品と一風堂が視界に入った。飛び散る火花が尋常ではなさそうな立地である。
ともあれ、今回の目当てである家系の総本山に到着。家系信者にとって吉村屋は聖地であり天竺にも等しいので、実質このレポートは西遊記である。
……などと言っていられないくらいの人口密度だった。
「天竺じゃなくて夏祭りの休憩所……?」と思えるような光景だった。店先に設けられた複数のベンチはすでに満員で、そこに収まりきらない人たちが並んでいる。行列というより、もはや人混みである。平日14時過ぎの昼下がりだが、30~40人はいるだろうか。
さすがは一大文化を築き上げた有名店。そもそもベンチが用意されている時点で一線を画している。
並ぶ前に食券を買うシステムとのことなので、「ラーメン(710円)」の券を購入したのち順番を待つ。待機人数は多いものの回転が早い。晴れやかで喜びに満ちた顔をして店を出ていく人を目の当たりにし、「やはり天竺なのでは」という気がしてきた。
20分ほどで店内に通される。店員さんに麺の硬さなどをどうするか聞かれたが、初めてなので全て普通にしておいた。そしてまもなく丼が登場した。
正直、見た目に驚きや衝撃は感じない。自分が出会ってきた家系ラーメンと、様子が大きく異なるわけではない。だが、そんな「出会ってきた家系ラーメン」の源流を前にして、心の内に深い感動が湧き上がっていた。
このお店のラーメンがあったからこそ、今の家系がある。ひいては今の私がある。偉大な名店の味はどんなものなのか……などと加速度的にハードルを上げながら、スープにレンゲを沈ませる。
スープを口に含んだ瞬間に豚骨の味わいがガツンとやってきて、悠々とそのハードルを乗り越えていった。鋭い醤油の味も含め、極めて正統派だ。上品でさらりとしていたり、あるいはドロドロしていたりもしない。それらは他のお店に任せればいいと言わんばかりだ。
奇をてらわない王道ぶりが、オーソドックスかつ濃厚な風味に表れている。さらにはつるりとした太麺が、その切れ味を倍増させている。後味がジーンと舌に残り、食べるごとに積み重なり、1口目よりも2口目、2口目よりも3口目の方が美味しく感じるのだ。
箸が止まらずに進んでいく。これが家系の本家本元、総本山の味か。自分はすでに家系に染まりきっていると思っていたが、まだこんなに「魅了される余地」が残っていたとは。
自分と同じように源流を求めてこのお店を訪れた多くの人々も、同じことを思ったに違いない。重みのある後味には伝統と威厳が感じられた。まさしく聖地の味と呼ぶにふさわしい。
家系という文化がなぜこれほど広まったのか、吉村屋を訪れたことで再認識できた。味わっても味わっても、まだまだ魅力が尽きない……それが家系だろう。ただここまで創始者が力強いとなると、他のお店はなかなか大変かもしれない。
・今回紹介した店舗の情報
店名 吉村家
住所 神奈川県横浜市西区南幸2-12-6
営業時間 火〜日 11:00~22:00
定休日 月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.
▼行列というより人混み
▼王道の家系
▼本家本元の味には重みがあった