
歴史的猛暑もひと段落の今夜、爽やかな気持ちにさせてくれる作品が登場する。2018年7月27日の金曜ロードショーは、細田守監督のアニメ映画『バケモノの子』だ。人間の子供・九太がバケモノの熊鉄に拾われる本作は絆と成長の物語。
爽やかさとじんわりと胸が温かくなる感動を併せ持つ名作だが、私(中澤)には、どうしても不思議に思ってしまうところがある。それは、「チコちゃんって結局何なの?」ということ。そこで、プロレスマニアに聞いてみることにした。ネタバレあり。
・チコちゃんとは
物語始まってすぐ主人公・九太になつく白くて小さい毛玉の生物・チコちゃん。九太がチコちゃんのいる位置に死んだ母親の幻を見たり声が響いたり、かなり重要なポジションにもかかわらず、作中でその正体は語られない。
そこで、正体を編集長のGO羽鳥(プロレスマニア)と先輩記者P.K.サンジュン(プロレスマニア)に聞いてみた。やっぱりチコちゃんはお母さんってことなんですかね?
GO羽鳥「チコちゃんがお母さん? 何を言ってるんだセイジ。そんなわけがないだろ!」
──え(突然怒られ困惑)……ち、違うんですか? じゃあ、チコちゃんは誰なんでしょうか。
GO羽鳥「長与千種だ」
──誰?
P.K.サンジュン「長与千種とは80年代の女子プロレスブームを牽引した『クラッシュギャルズ』の1人です。クラッシュギャルズ vs ダンプ松本ひきいる極悪同盟(ブル中野ふくむ)との抗争は、主にティーンエージャーの女子たちをとりこにして社会現象になりました」
──社会現象?
GO羽鳥「さらに1986年にはWWF(現WWE)のマットにもあがっていて、なんとあのMSG(マジソン・スクエア・ガーデン)で戦ったこともある。そんな長与千種がなんと呼ばれていたか知っているか?」
──知りません。
GO羽鳥「チコさん だ……っ!!」
──っ!?
P.K.サンジュン「この映画の監督である細田守さんは1967年生まれ。まさに『クラッシュギャルズ』がドンピシャだった世代です。細田守監督はこの作品を通して描きたかったんでしょうね。ライオネス飛鳥を助ける長与千種の姿を」
──ということは、主人公の九太は?
GO羽鳥「言うまでもなくライオネス飛鳥だ」
P.K.サンジュン「九太の師匠の熊鉄は、ライオネス飛鳥の師匠であるジャガー横田と考えるのが自然でしょうね。この2人は当時の女子プロ界で “ガチで強い” と言われていた2人です。そういうところも、熊鉄と九太にカブりますね。
さらに、クライマックスで九太と熊鉄が1つになるシーンがありますが、ライオネス飛鳥もジャガー横田らと、キャリアのクライマックス的な時期に『ライディーン・アレイ』を結成してます。ちょっとこの符号は見逃せない」
GO羽鳥「そう考えると、自ずと見えてくるのが九太はエンディング後どうなったのかということだ」
──え? そんなこと分かるんですか?
・プロレスマニアに聞いたエンディング後の2人
GO羽鳥「バケモノたちの世界にある都市・渋天街を出た九太は、人間の世界で大学を受験する。これはおそらく、女子プロを引退したライオネス飛鳥を示唆している」
P.K.サンジュン「ライオネス飛鳥は女子プロ引退後、芸能界デビューしました。ちなみに、最後の渋天街のシーンでヒロイン・楓が、九太に『一緒に頑張ろ!』と声をかけていることから、楓は少し前に芸能界デビューしたダンプ松本かと思われます」
GO羽鳥「だが、ライオネス飛鳥の芸能活動は長くは続かなかった。その年数は約4年!」
──大学と同じや……。
GO羽鳥「そう。そして4年が経った後、ライオネス飛鳥は再びリングに戻って来る。ということは……」
──九太も渋天街に戻って来る!?
GO羽鳥「そうだ! 『バケモノの子』のエピローグでは「2度と剣を握らなかった」というナレーションが入っているがあれは嘘だ。バリバリ握っている!!」
P.K.サンジュン「ちなみに、ダンプ松本も後に復帰し、再結成された『クラッシュギャルズ』と2004年に対戦しています。このことから、大学卒業後1度別れて渋天街に戻った九太を楓が追うストーリーがエンディング後に続くものと思われます」
GO羽鳥「まさに本作は『クラッシュギャルズ』を描いた作品と言えるだろう。しかも、あえて長与千種ではなくライオネス飛鳥にスポットを当てるあたり、細田守監督のこだわりが透けて見えるようじゃないか」
P.K.サンジュン「しかも、最も輝いていた80年代の『クラッシュギャルズ』以降もオマージュしている。これはもう間違いないですね……!」
GO羽鳥・P.K.サンジュン「細田守監督は女子プロマニアDA!」
──マジかよォォォオオオ! チコちゃんが長与千種であるだけではなく、作品自体が『クラッシュギャルズ』の話だったなんて……。だがしかし、その共通点の多さには説得力がなくもない。
後半ほとんど何言ってるか分からなかったが、細田守監督が女子プロ好きなことだけはビンビンに伝わってきた。今後もロケットニュース24編集部では、有名作品に隠された謎を追い続けていきたい。
執筆・イラスト:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
こちらもどうぞ → シリーズ「プロレスマニアに聞いてみた」
▼まさか女子プロを描いていたとは……。
中澤星児









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