ロケットニュース24

白人だらけの団体旅行ツアーに「日本人が1人」で参加してみた / 悪魔的なワナにハマって不本意すぎる『イエス』を発した話

2018年1月21日

「日本人はイエスと言い過ぎる」とは昔から言われる話。あまりにもよく言われることなので、私自身「簡単にイエスと言わないようにせねば」と日頃から気をつけているつもりなのだが、「それを今まで完璧に守れているか?」と聞かれたら……極めて怪しい。

正直なところ、「今のは雰囲気に流されただけだろ!」と自分でツッコミたくなる “イエス” を何度か言ってきたように思う。そんな『不本意なイエス』の中で、自分史上最強に不本意なイエスをつい数カ月前に発してしまったので、当時の状況と合わせて紹介したい。

・ボッチは自分だけ!?

それは昨年2017年の10月頃、私がトルコのマルマリスという港町に旅行で滞在していた時のこと。夕方、港をブラブラと歩いていたら『古代のお墓を見に行くクルージング』という、なんとも魅力的なツアーを発見したのである。

その場にいたスタッフに話を聞いてみたところ、丸1日楽しめてランチもついてくるのに、値段はそんなに高くない。確か、日本円で3000円前後であったと記憶している。「こりゃあ行くしかないぜ!」という訳で、参加を即決。翌日、ツアーの集合場所である船の甲板に向かったのである。すると……

そこには大体200人くらいの参加者がいた。さらに、その200人近くはほとんどが家族連れで、残りはカップルといった感じ。後でわかったのだが、1人で参加していたのは私だけだったのだ。

そしてもう1つ後で分かったこととして、ツアー参加者の95%以上が白人であった。ただし、そこに人種差別的な空気など全く無かったことを最初に言っておきたい。実際に一組だけではあるが白人ではない家族連れがいた上に、そもそも私がバリバリの黄色人種である。

マルマリスはヨーロッパで人気のリゾート地なので、どうしても白人が多く集まっただけだろう。

・ボッチでも余裕で楽しめるツアー

さて、そんなツアーでは最初から最後までフレンドリーな空気が漂っていたこともあり、私は思う存分クルージングを満喫した。唯一のボッチ参加であるにもかかわらず、不愉快な思いどころか、気まずさを感じることなど一切ナシ。アレを除いて……。

そのアレを手っ取り早く公開したいのだが、ツアーの概要をつかめないとイマイチ分からないので、先にツアーについて簡単に説明したい。まず、その流れを矢印で表すとこんな感じだ。

・ツアーの流れ

参加者全員が船に乗ったら、マルマリスの港を出港

東に向かってひたすら進む

途中で停船。そのまま海に飛び込んでスイミングタ〜イム!(砂浜じゃなくて沖合です)

ランチ

しばらくしたら、船が河口に到着

大型の船を降りて、ウミガメが産卵でやってくるというタートルビーチに上陸。自由時間

タートルビーチを適当にブラブラ

自由時間が終わると、参加者は小型の船に分乗して川(ダルヤン川)をさかのぼる

しばらく進むと、古代のお墓(リキア式岩窟墓)が見えてくる

そこから少し進んで泥風呂に到着

泥風呂を楽しんだら、再び小型の船に乗って引き返す

★事件発生(アレ)

河口に到着すると、最初に乗った大型の船に乗り換えてマルマリスに帰る

・2つの船がポイント

ここで覚えておいて欲しいのは、ツアー中に2つの船に乗ること。海上を移動するための「大きい船」と、川をさかのぼるための「小さい船」だ。大型の船は、参加者全員を余裕で収容できて広々〜。甲板の上を自由に歩き回ることが出来る。

一方「小さい船」は30人〜40人くらいしか乗れないサイズで、席に着いたらそこから動くことが出来ない。理由はもちろん、「動き回れるようなスペースがないから」である。

そしてこの「小さい船は動き回れるスペースがない」という特性を利用して、ツアーの主催側は仕掛けてきた……としか思えない!

・引き返すときに起きた事件

それはツアーの終盤。最後の泥風呂でキャーキャー言って騒いだあと、「じゃあ引き返しましょうか」と小型の船に乗り込んだ直後のことである。ガイドさんのアナウンスで、面倒な事態に引きずりこまれたのだ。何があったのかというと……次のページへGO!

Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.

【白人だらけの団体旅行ツアーに「日本人が1人」で参加してみた / 悪魔的なワナにハマって不本意すぎる『イエス』を発した話(その2)】

ガイドさん:「は〜い、みんな! 実は僕、ガイドの他にもう1つ肩書きがあったんだ。何かって? カメラマンさ〜。これから僕がみんなの写真を撮って回るから、家族や恋人と一緒にしっかりポーズを決めてくれよ〜。

撮った写真は、こっちでカッコ良く仕上げて後で販売する。もし要らないなら、買わなくてもOKさ。仕上がりを見て決めてくれ。じゃあとりあえず、こっちから回って行くよ〜」

……

…………え!?


──何を言ってるの? いや、お前は一体何を言ってるんだ? 私はボッチだぞ! この船の中で、唯一のボッチ参加なんだぞ!! 1人で集合写真? どんな面して写りゃあいいんだ!


私がそう思っているのとは裏腹に、船の中はめちゃくちゃ盛り上がり始めた。元々船内は「今日一日を目一杯楽しんだぞ」という満足感と、「このメンバーで一緒に過ごした」というちょっとした連帯感が漂っていたところに、上のアナウンスだ。「エンジョイ! フォトタ〜イム!!」って感じの雰囲気になったのである。

・自分の番が近づいてくる恐怖

「写真を撮るっていうだけで、こんなに盛り上がるのか? でもこういう “楽しむ心意気” ってカッコイイかも……」と思いつつも、私にとっては感心している場合ではない。カメラマン(ガイドさん)が回ってくるのだから。ボッチの元にやって来るのだから。

「はーい撮るよ〜! もっと寄って、寄って! ポーズはそれでOKかい? いい笑顔だ!」と、場を盛り上げながらカメラを操るガイドさん。それに対して参加者は、家族やカップルごとに写真に収まっていく。ガッツリ肩を組んだり手を繋いだりして、親愛の表現がダイレクトだ。

──や、やばい! いくら何でも、自分がこの場にそぐわなさ過ぎる! ボッチなんだもの!! 「俺はファミリーや恋人を愛してるぜ」って雰囲気が全開の中で、ボッチなんだもの!!!! どうしよ、どうしよ……。小さい船だから、逃げようがないやん……。

・ついに来た

と思っていたら、ガイドさんが私の目の前に立った。私と目があったガイドさんは、一瞬 言葉を選んだ(ような気がした)後、「ワン パースン(1人?)」と質問してきた。私の答えは、笑顔での「ヤァ(そうですが、何か?)」だ。

続けてガイドさんは「どんなポーズがいいんだい?」と聞いてきたので、私は船べりに腕を掛けながら、「こんな感じでお願い」と言った。そして……パシャリ。


・試練を乗り越えた後に

その後、参加者全員分の写真を撮り終えると、船は船着き場に横付けされてガイドさんだけ上陸。ガイドさんを残し、船は河口に向かうことに。「お、終わった……。でもこれで、最大の試練を乗り越えたで」と思っていたら……! 

実はまだ試練があったのだ。それからしばらく経過すると、なぜか船がまた船着き場に横付けされたのである。


い、嫌な予感……。


そう思う間もなく、岸辺に現れたガイドさん。よく見ると、抱えきれないほどの写真を持ってる。どうやらガイドさんは、写真の紙焼き作業を速攻で仕上げ、陸路で先回りして待っていたようだ……。なんという “いらんサービス精神” だろうか。

「みんな〜! お待ちかねの写真が出来たぜ〜!!」

──そう言いながら、再び船に乗るガイドさん。「イェーイ」と言いながら迎えるツアーの参加者たち。もはやガイドさんが「この写真、買うかい?」と質問するまでもない。ほとんどの参加者が「買う」と表明。中には「もっと欲しいから焼き増しして」的なことを言っている人もいる。

船内の空気は決定的だ。圧倒的な幸福感。圧倒的な購買への流れ。「買わなくて……どうするっ!」という感じである。そんな空気の中、ガイドさんが私に質問をしてきたのだ。

「君も買うかい?」

──買うわけがない! 風景写真ならまだしも、1人で写ってる記念写真なんて、単なる孤独の証明じゃないか! いるかよ! ところが……!! その時私の口から出た言葉は……


私:「ィィッィィィイイイイイイイエエエエエエエエエエエエエエエエエエススススッッッッッッッッ!!!!!!!」

……

…………


──今にして思えば、「空気に飲まれた」としか言いようがない。そして大きい船ではなく、身動きがとれない小さい船の中で写真の撮影から販売までが行われたことに、運営側の作戦を感じずにはいられない。ボッチにとっては、悪魔的だっ……!

しかし裏を返せば、1人でツアーに参加しても、ちょいキツかったのはそれくらいだったということ。あとは楽しい以外の何物でもなかった。そもそも私がボッチであることなんて、他の参加者は何とも思ってなかっただろう。本人が一番気にしちゃってるのだ。

なのでもし、「参加したいツアーがあるんだけど1人だしな……」と悩んでいる人がいたら、「そんなこと気にせずにガンガン参加した方がいいよ」と言いたい。特に旅行なんて、楽しんだ者勝ちなのだから。間違いない。オ〜イエス!

Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.

▼ちなみに、景色だけでも最高だったぞ

▼船が停まったと思ったら、沖合で始まったスイミングタイム。私も泳いだが、水がメチャクチャ冷たかった

▼澄んだ水が広がっていたタートルビーチ

▼古代のお墓(リキア式岩窟墓)が見えた時が一番興奮したな〜

▼その時の動画

▼そして、自分史上最強に不本意なイエスの末に購入した写真がコレだ

▼とにかく、ボッチでも楽しかったのは間違いない! 写真撮影をのぞいて……

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