2017年10月26日発売の週刊新潮で報じられる “とある話” が話題になっている。なんでも東京屈指の観光地・浅草寺と雷門を結ぶ「仲見世商店街」の家賃が16倍アップになるというのだ。
家賃が16倍とはエゲツない気もするが、果たして不動産のプロはこの件をどう見ているのだろうか? 今回は浅草寺のある台東区エリアで7年ほど不動産会社に勤めていたという男性に話を聞いてみたのでご紹介したい。
・元々の家賃は破格
一連の流れのそもそもの経緯について、まずは週刊新潮から引用しよう。以下が仲見世商店街にある店主の1人の証言である。
「仲見世通りの土地は浅草寺の所有ですが、上物は東京都のものだった。だから我々は家賃を東京都に払ってきましたが、7月に浅草寺が上物を都から買い取った。で、安かった家賃を周辺並みにするというのです」
仲見世通りにある89店の家賃の平均は月2万3000円で、16倍になれば約37万円という計算になる。確かに元々の家賃が安すぎる気もするが、果たして不動産のプロはどう思っているのだろうか?
今回話を聞かせてくれたのは、2年ほど前まで台東区にある不動産会社に勤めていたAさん(30代男性)である。自社物件の多くが台東区にあり、浅草にも物件を所持していた会社に勤めていたというから、今回の話を聞くにはうってつけの人物と言えるだろう。以下でAさんとのやり取りをご覧いただきたい。
──単刀直入にお伺いしますが、不動産のプロとしては今回の件をどう思われているのでしょうか?
「うーん、2年前までの感覚なんでそこはご容赦いただきたいのですが、まあそもそもの家賃が2万3000円ってのは安すぎますよね。そういう意味で浅草寺の要求はあたり前なのではないでしょうか?」
──なるほど。あの辺りでの家賃相場はいくらくらいなのでしょうか?
「それは住宅なのか事務所なのかそれとも店舗なのかによっても違いますし、一概には言えません。ビルグレードによっても違いますしね。ただ路面店(1階の店舗)であれば、それなりに取れるエリアではあります」
──ふむふむ。
「しかも、絶対的な人通りが約束されている仲見世商店街ですからね。2万3000円なんてあって無いようなものだと思いますよ」
──そもそもの家賃が安すぎると?
「それは間違いないと思います。だって浅草寺の年間来訪者数は3000万人とも言われていますからね。その多くが仲見世商店街を通るわけです。商売をする立地としては文句のつけようがないですよ」
──確かにそうですね。
「確かに16倍と聞くとインパクトはありますが、37万円でしたっけ? それも不思議ではないと思いますよ」
──そうなんですね。
「要するに家賃が破格だからこれまでは撤退する店舗なんて滅多になかったのでしょう。空家にならないと新規参入は出来ませんから、ある意味で既得権益ですよね。仲見世商店街の店子さんたちが守られすぎてた感は否めません」
──なるほど。では家賃が16倍になって店舗はやっていけるのでしょうか?
「それはわからないです。十分にやっていけるところもあるでしょうし、潰れる店も出て来るでしょう。でもそれが自由競争ですからね。本来あるべき姿になっただけではないでしょうか?」
──ふむふむ。
「間違いなく言えるのは、あの立地でダメならどこで商売しても上手く行くハズが無いってことです。広さや設備を見てないので37万円が適正かどうかはわかりませんが、的外れな数字だとは思いませんね」
──確かに “周辺並の相場にする” ということらしいですからね。
「むしろ37万出しても入りたい企業はたくさんあるのではないでしょうか? ただ基本的には狭いですし設備がメチャメチャ整っているとは思えないので、カフェなどの飲食店は難しいでしょう。団子屋やクレープ屋などのテイクアウト専門店が向いてるのかな?」
──なるほど。話をまとめると決して法外な金額ではないということでしょうか?
「個人的にはそう思いますね。外国の企業が参入して風情が失われるという声もありますが、それはオーナーである浅草寺が判断すればいいだけの話です。競争が生まれればこれまで以上に活気づく可能性だって十分にありますから、少なくとも観光客にとってデメリットはないかと思いますよ」
16倍という数字だけを聞くと法外な要求だという気もしたが、これまでの家賃や仲見世商店街の立地条件を考えるとメチャメチャな話でもないらしい。この一件についてあなたはどう思うだろうか?
参照元:デイリー新潮
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
▼確かに元々の家賃2万3000円は破格である。