まぐろやアワビ、カニなどと並ぶ海の高級食材、それが「伊勢海老」だ。記者のような一般市民は滅多に口にすることの出来ないセレブ食材だが、それでもこれまでの人生で何度かは伊勢海老を食べたことがある。お味はもちろんウマかった……ハズだ。
それはさておき、当編集部内で最近やたらと伊勢海老に憑りつかれている男がいる。中澤星児だ。彼はことあるごとに「伊勢海老食べてみたいな~」と口にしているのだが、残念ながら伊勢海老を奢ってあげられるほどの余裕はない。何とか中澤に伊勢海老を食べさせてあげたい……そこで思いついたのがザリガニである。
・伊勢海老病の中澤
最近の中澤の “伊勢海老愛” は異常だ。「伊勢海老って食べたことあります?」「どんな味がするんですか?」などと頻繁に聞いてくるし「伊勢海老 格安」……などとハードル高めのワードをたびたびググったりしている。
──そもそもなんでそんなに伊勢海老食べたいの?
「いやー、ボリュームありそうじゃないですか。エビのプリプリ感を口いっぱいに感じられるなんて考えるだけで最高ですよね。昔、ラピュタでロブスターを食べるシーンを見て以来、本当に憧れなんですよ」
……なんと可愛く純粋な思いだろうか? 彼は幼い頃からの憧れで「伊勢海老を食べてみたい」と言うのだ。彼は編集部に入るまでケンタッキーも担々麺も食べたことがなかったが、この際それはどうでもイイ。彼の中で伊勢海老は “幻の恋人” なのだろう。
・中澤に伊勢海老を
何とか中澤に伊勢海老を食べさせてあげたい……とは思ったものの、不甲斐ないことに私(P.K.サンジュン)には金銭的な余裕が一切ない。どうにもならないのだろうか……? 諦めかけたそのとき、頭に浮かんだのが「アメリカザリガニ」である。
淡水や海水の違いはあるものの、基本的には同じ甲殻類、味はかなり似ているハズだ。聞けばフランスや中国では大人気食材だというから、もしかしたら伊勢海老より美味しい可能性だってある。そして何より捕まえればタダ……! みんながハッピーになるためには、もはやザリガニ以外考えられない。
いても立ってもいられず、やって来たのは東京都練馬区の石神井公園である。こちらの三宝池には多くのアメリカザリガニが生息しており、一部エリアではザリガニ釣りもOKとのこと。なんなら売店でザリガニ釣り用のエサまで売っている、都内屈指のザリスポットだ。
自慢ではないが、幼い頃は大量のザリガニを仕留めまくっていた私。何なら近所の小学生たちに交ざって高1くらいまでザリガニ釣りをやっていた。20年以上のブランクはあるが「入れ食い待ったなし!」と鼻息荒く久々のザリ釣りに臨んだ。
……んが、石神井公園のザリガニは異常に人間慣れしており、目の前にエサを置いても一向に食いつかない。な、なんて用心深いザリガニなんだ……! 俺の知っている貪欲なザリガニたちとは明らかに違う……ぜ、全ッ然釣れねェェェェエエエエエエ!!
前日の雨で水面はかなり濁っており、池のコンディションは最悪。それでも朝から2時間半かけて、何とか3匹のアメリカザリガニをゲットした。元々は食用として輸入されただけあって、超至近距離から見ると伊勢海老っぽく見えなくはない……というか、伊勢海老みたいなもんである。
あとは中澤に美味しくザリガニを食べさせてあげるだけ……! 待ってろよ、セイジくん!! 果たして中澤は喜んでくれたのか? 味はどうだったのか? そもそも野生のザリガニは食えたのか? 気になる続きは後半へGOだ!
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
【検証】「いつか伊勢海老を食べてみたい」という後輩に “野生のザリガニ” をご馳走したらこうなった(2ページ目)
釣ってきたザリガニをそのまま中澤に食べさせる……わけはもちろんなく、今回は美味しくいただくための工夫をいくつか施した。まずは “泥抜き” である。池の水を水道水と入れ替えて丸1日置き、その間も水が濁って来たらこまめに交換する。これで泥臭さはかなりなくなるハズだ。
次に調理する直前には日本酒をふりかけ、追加の泥臭さ対策を行った。調べたところ、アメリカザリガニはかなり生命力が強いため、海外では丸1日酒漬けにする店もあるらしい。さらにさらに、編集部内で唯一「野生のザリガニを食べた経験」を持つGO羽鳥も調理に立ち会ったので、味対策も万が一の寄生虫対策も万全だ。
GO羽鳥によればザリガニは本来、サッと火を通した方がプリプリ食感も楽しめてウマいという。だがそれは養殖されたザリガニの話。今回は安全を喫して「10分間ボイル」で調理することにした。果たして中澤は喜んでくれるのだろうか?
そしていよいよ調理開始! 少々胸は痛んだが「ありがたくいただきますので!」と心の中で念じ、熱湯の中にザリガニを放り込む。みるみるうちに真っ赤になっていくアメリカザリガニ……これぞマッカチンや。あとは10分待つだけだ。
茹であがったアメリカザリガニは完全にエビ──。伊勢海老とは大きさこそ違うものの、普通にウマそうな茹でエビではないか。これは中澤の狂喜乱舞待ったなしである!
──セイジくん、セイジくん。実はセイジくんのためにザリガニを調理したんだ。
「え? あのベランダにいたヤツですか?」
──ほら、伊勢海老食べたいってしょっちゅう言ってるじゃない? 代わりと言っては何だけど、ザリガニをご馳走するよ。
「イヤですよ。僕は伊勢海老が食べたいんです」
──似たようなもんだよ? せっかく捕まえて来たんだから食べてよ。今までゲンゴロウとか普通に食ってるじゃん?
「あれはプロが調理してるでしょ? 素人の調理とか危険過ぎません?」
──いや、調理師免許持ってて、なおかつザリガニを食べたことがあるGO羽鳥も立ち会ってるから絶対に大丈夫。
「いや、そもそも羽鳥さんが調理師免許持ってるって誰が見たんですか? だいたい……」
──いいから食えよ。
まさか中澤が拒むとは予想していなかったが、口にすればきっと感激するハズ。だって元々が食用よ? 中国では大人気食材よ? フランスでは高級料理店でも出てくるのよ? まずい理由が見当たらない。
それでもなかなか手を付けたがらない中澤のため、私はザリガニの殻を優しく剥いてあげた。すると……小ッさい身が出てきた。それでも形は紛れもなくエビ。そしてようやく中澤がザリガニを口に運んだ……!
──どう? 味はどうなのセイジくん?
「味……しないッス。でもプリプリはしてます。うーん、あと奥の方に若干の泥臭さはありますよね。でもザリガニって言われなければエビだと思っちゃうかも……ウマくはないけど」
なんと食わせ甲斐のない男だろう? もっと喜べや! よほどマイナスイメージがあるのか、ザリガニでは中澤の伊勢海老欲を満たすことは出来なかった……。
なお、余ったザリガニを数名で試食した結果「めっちゃ美味しい!」「エビ!」「普通にウマいよ」……などと大好評だったことは記述しておきたい。私も食べてみたが余裕でエビであった。伊勢海老ではなかったけど。
というわけで、中澤を喜ばせることには失敗してしまったが、野生のアメリカザリガニは普通に食えるし、何ならウマいと判明した今回の検証。興味がある人は、まずザリガニ釣りに出かけてみてはいかがだろうか? 久々のザリガニ釣りは信じられないくらい楽しいぞ。
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
▼絶対にウマいと予想されたザリガニの味噌汁は、3匹だと少々ダシが足りなかった。
▼余すことなくいただきました。ザリガニさん、ありがとう。
▼食べるかどうかは別にして、久々のザリガニ釣りは超楽しいぞ!
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