突然だが、きょう10月15日は『きのこの日』だ。「きのこに対する正しい知識の普及」などを目的として、日本特用林産振興会が1995年に制定したという。たしかに世の中には、その実態があまり知られていないキノコが星の数ほど存在する。
料理に使う美味しいキノコは当然のこと、食べたら危険な「毒キノコ」や、緑色した「1upキノコ」なんてのも存在するが、日本においては十数年前に麻薬指定された「幻覚キノコ」に対する正しい知識も普及しておいたほうが良いだろうと思い、正義のドラッグ事情通・ボブ麻亜礼(まあれい)氏に話を聞いてみることにした。ボブさ〜ん!!
──ボブさん、今日は幻覚キノコについて教えてもらえればと。
ボブ「おうよ。懐かしいな。通称「MM(エムエム)」こと幻覚キノコ、通称「マジックマッシュルーム」のことでいいんだよな?」
──はい。それ以外に何があるんですか(笑)
ボブ「恥ずかしながら、いまアムステルダムで流行っているらしい「幻覚トリュフ」こと「マジックトリュフ」については未体験でな……。でもマジックマッシュルームのことなら話せるゾ!」
──げ、幻覚トリュフ!! そんなのあるんですか!
ボブ「うん。オランダでも2008年にマジックマッシュルームが違法になったらしいんだけど、その代わりとしてマジックトリュフ(Magic Truffle)ってのが売られているそうな」
──さすがオランダ、寛容ですねぇ〜!
ボブ「ま、そんな未知なるキノコの話じゃなく、今回は日本でも2002年に違法となったマジックマッシュルームの話をすっぞ。まずは歴史からおさらいすっか」
──超カンタンにお願いします。
・マジックマッシュルームの歴史
ボブ「北アメリカでは紀元前9000年前から使われていた……って説もあるけれど、間違いないのはマヤとかアステカの時代、つまりは古代メキシコのシャーマンが使っていたって話だな。少なくとも約500年以上も前から、人類はマジックマッシュルームを使っていたわけだ」
──そんなに昔からあるんですねぇ!
ボブ「シャーマンってのは、目に見えない霊や神と交信する必要があるだろ。そのために、幻覚作用のあるマジックマッシュルームをキメていたってワケなのさ」
──なるほど、シャーマンの食べ物だったんですね!
ボブ「シャーマンはシャーマンでも、メキシコ系のシャーマンな。ペルーやボリビアのシャーマンになると、「アヤワスカ」っていう幻覚剤を使うのがメジャーらしい。ともあれ、マジックマッシュルーム文化の起源はメキシコといって過言ではないだろう」
──いろんな国が出てきますねぇ。日本はどうなんですか?
・マジックマッシュルームと日本
ボブ「日本ではシャーマンがらみの話じゃないけれど、平安時代に書かれた『今昔物語』に、ワライタケでキマったんじゃねえのか的な逸話が残されているそうな」
──ワライタケもマジックマッシュルームなんですか?
ボブ「ワライタケにも幻覚作用のある神経毒シロシビンが入っているから、幻覚キノコ(マジックマッシュルーム)だよ。実際、麻薬指定されているし」
──マジック・マッシュルームって、特定のキノコを指す言葉ではないんですね!
ボブ「うん。たとえばマジックマッシュルームの代名詞的な品種『シロシベ クベンシス』は「ミナミシビレタケ(南痺茸)」のことで、シビレタケ系は総じてヤバイ」
──ん? シビレタケ……なんか聞いたことあるぞ?
ボブ「するどい! 今から12年前の2005年、首相官邸の敷地内で自生していたのもシビレタケ、その名も「ヒカゲシビレタケ(日陰痺茸)」だった」
──当時、小泉純一郎首相は「食べれるのかね? 毒キノコ? 東京でキノコか、面白いね」と発言して話題になっていましたが……
ボブ「さすが小泉さん、深い発言だな。東京で幻覚キノコが自生していた……って、たしかに面白い。さすがだよ。立場的にも法的にも、小泉さんは食べちゃダメだけどな」
──でも、ボブさんは食べていたんですよね?
ボブ「ああ、食べていたよ。まだマジックマッシュルームが合法の時代にな」
・マジックマッシュルームって、おいしいの?
──どうやって食べていたんですか?
ボブ「そうだな……味噌汁に入れたりして食べてたよ。ほかにもコーンポタージュのスープとか、いろいろ研究したんだけど、最強なのは味噌汁って結論に落ちついた」
──たしかに、そのまま食べると不味いですもんね。
ボブ「そうか? 俺はそこまで不味いとは思わなかったけど、クサいとは思ってた。さすが「馬糞茸(ハブンタケ)」って感じのクソ臭さがあったよな」
──昔はションベン臭い路上とかでも売ってましたよね。
ボブ「路上のは怪しいから、俺は買わなかったよ。俺は渋谷のセンター街のど真ん中にあったキノコ屋さんで買ってたなぁ。狭い階段を降りていくと……店っていうか、カウンターっていうか、パチンコの換金所みたいな雰囲気っていうか……」
──懐かしい! たしか店主の名前は「アダムス・リー」さんでしたよね。
ボブ「そうそう。ゴム製の手袋をしながら、いつも熱心にパケっていたよね。外国人のお客さんも多かった。薄暗くて妖しくて……カオスな時代だったなぁ〜(遠い目)」
──そんな懐古話はさておき、肝心の「マジックマッシュルームを食べるとどうなるのか?」や、「なぜ違法になったのか?」あたりの話は、長くなりそうなので次のページでお伝えしよう。
参照元:日本特用林産振興会
執筆:GO羽鳥
協力:ボブ麻亜礼
Photo:Rocketnews24.
・食べるとどうなるのか?
──それはさておき、マジックマッシュルームを食べるとどうなるんですか?
ボブ「おう、そうだった。えっとね、キマり方は人それぞれだと思う。バッドに落ちたら最悪だと聞いたことがあるけど、俺は大丈夫だったな。楽しかったよ」
──どう楽しかったんですか?
ボブ「月並みだけど、まずは「多幸感」っつーか、幸せな気持ちに。でもそれよりも、視覚的な変化の方が強烈だな。一説によるとLSDよりスゴいらしい」
──どんな感じで見えるんですか?
ボブ「それも、その時のシチュエーションや対象物によって違うから、一言では表現できないよ。ほら、この前、駅のポスターで表現したじゃん。あんな感じよ」
──もっと詳しく教えてください!
ボブ「ん〜……。たとえば、家賃4万チョイの風呂なしアパートにいるはずなのに、なぜかそこが “アラビアの海に浮かぶ船の上” に感じたこともあったな」
──い、意味がわかりません……
ボブ「ん〜……。友達の顔が部屋の天井くらいまで大きく見えたり。あとは、普段の景色が綺麗に見えたり……って、言葉にすると意味不明だろ。でも、そういうもんなんだよ。それが幻覚作用ってもんなんだよ」
・なぜ違法になったのか?
──ちなみに、なぜマジックマッシュルームが日本で違法になったと思いますか?
ボブ「ま〜、「これは違法だろ(笑)」ってくらいのパワーはあるよな。初心者がうかつに手を出しちゃいけないシロモノであることは間違いないよ。この世の中、バカが多いから」
──何も知らないで手を出すバカが多い、と!
ボブ「そう。その昔、マジックマッシュルーム食べて幻覚症状を起こして錯乱したあげく病院のお世話になるという恥ずかしすぎる事件を起こした俳優の伊藤英明みたいな大馬鹿野郎が多いからな」
──ボブさん、ほんっと〜に伊藤英明さんのことが嫌いですね(笑)
ボブ「ドラッグだけじゃなく、どんなモンに対しても言えることだけど、そのモノを “ちゃんと知ること” は超重要だと思うんだ。体に入るものなら、なおさらな」
──徹底的に「検索しろ!」と。
ボブ「ただし俺のことは詮索するなよ。それはさておき、たとえばマジックマッシュルームやったら、どんな危険なことが起きるのか……ってことについても、もっとちゃんと知っておくべき」
──よ〜し、さっそくググります!
・マジック・マッシュルームによる死亡例は?
──いま「マジック・マッシュルーム」でググってみたら……1つ目にヒットするのはWikipedia。5つ目に「東京都福祉保健局」がヒットしました!!
ボブ「おう、「食べると危険!マジックマッシュルーム」ってページだな」
──あれ? 冒頭に「マジックマッシュルームが原因と疑われる中毒や事故も報道されており、中には、死亡した例もあります」ってありますが、中毒で死ぬこともあるんですか?
ボブ「え? バッドに入って錯乱して、ビルから飛び降りたりする事故死や自殺する “間接的な死亡例” なら知ってるけども、中毒死ってのは聞いたことないぞ。ちょっと「中毒の専門家」のサイトを調べてみっか……」
──中毒の専門家って(笑)
ボブ「あ〜。公益財団法人「日本中毒情報センター」で調べてみたら、たしかに昔、マジック・マッシュルームそのものが原因とされる死亡例が海外で1例だけあったらしい」
──1例だけですか!
ボブ「それも、「小児死亡例が1例あり」な」
──子供じゃないですか……
ボブ「小児といえば15歳未満の子供。そんな年齢の子だったら、マジックマッシュルームでなくても、たとえば合法の酒でさえも、過剰に摂取したら死んじゃうよ」
──なんというか、表現のマジックですね。マジックマッシュルームの話なだけに。
ボブ「マイルドなプロパガンダだわな。たしかにマジックマッシュルームは、使いようによっては危険だよ。でもさ、ちょっと表現が雑だなァ〜って感じるわな」
・マジックマッシュルームの未来
──いま、世界的に見ても違法になっている国が多いマジックマッシュルームですが、今後は大麻みたいに「合法化」になっていきますかね?
ボブ「嗜好用としては……たぶん、ないな(笑)」
──ないですか(笑) さすがのボブさんでも、ないと思いますか!
ボブ「嗜好用としては、だぞ。でも、医療用としての活用は増えてくるんじゃないかな〜と思ってる。「うつ病治療に有効な可能性」って研究結果もあっただろ」
──医療用大麻ならぬ、医療用マジックマッシュルーム!
ボブ「いろんなドラッグに言えることだけど、ここ最近、やっと研究が盛んになって、知られざる実態が解明されてる。大麻もそう。助かっている人が大勢いる」
──てんかん持ちの子供さんとか、大麻の作用で助かったりしていますもんね。
ボブ「あとは、がん患者とかもな。日本でも実際に、大麻によってがんの進行を抑えていたのに逮捕されて、大麻が使えなくなって亡くなった人もいるくらいで」
──あの一件は、「法律とは何か」を考えてしまいました。
ボブ「別に合法化を訴えているわけじゃないけれど、「違法だから悪い物」と決めつけて、その実態を何も知ろうとせず、思考停止するのはよくねえよ。合法なのに悪い物もたくさんあるし、合法なのに死ぬ恐れのあるモノも、たくさんあるだろ」
──たとえばお酒(アルコール)とか、ですね。
ボブ「たしかにマジックマッシュルームは危険な面もあるけれど、使い方によっては「死ぬ可能性」どころか「生きる可能性」が生まれるんじゃないかな。良いところも悪いところも隠すことなく、公平公正に、マジックマッシュルームに対する正しい知識の普及が進んでくれることを切に願うよ。俺から言えるのはそれだけだ」
参照元:東京都福祉保健局、日本中毒情報センター(PDF)
執筆:GO羽鳥
協力:ボブ麻亜礼
Photo:Rocketnews24.
▼冒頭に出てきたマジックトリュフについては、こちらの動画が詳しい