それは秋の気配を感じる9月のある朝のことだった。抜けるような青空を見上げながら、いつものように新宿駅南口から編集部に向かって歩いていると、向こうから来る1人の男性が目に入った。
彼は素知らぬフリをして、電柱の後ろの隙間に紙切れのようなモノを突っ込んでいるように見えた。あら？ 何をやっているんだ？ これはナニか怪しい匂いがする……。
そして彼が去った後に電柱の後ろを見てみると、謎の電話番号の書かれた紙切れが挟んであるではないか！ これは一体……。
・立て看板のある電柱
どうやら彼は、すべての電柱に紙切れを挟んでいる訳ではなかった。立て看板が縛りつけてある電柱だけを狙って、電話番号が見えるようにして挟んでいたのである。そっと近づいて、よ〜く見てみると……
丸みをおびた文字で書かれた「042」で始まる電話番号。わざわざハートマークまでつけている。怪しい！ まるで女子が書いたように見えるじゃないか。さらに、その番号が書かれた黄色い紙は……
どういうわけだか「通学定期券購入申込書」だった！ ……なぜ？ どうして わざわざこんな紙に電話番号を書くんだ？ メモ紙でも良いだろうし、コピー用紙などを使っても良いだろう。だが、そうではない。
となると……意図してこの紙を選んだのではないか？ ひょっとして……JKやJD、あるいはJCといった女子学生を装うために、この紙を選んだんじゃないのか!? だって「通学 → 「丸文字」→「JC JK JD」だし!!
う〜ん、ますます怪しい！ これは絶対にナニか良からぬことを企てているに違いない!! けしからん！ 善良なオッサンを騙す気満々だろ。事実、私（佐藤）もオッサンだが、たしかに私はヤツを見た。紙を挟んでいたのは間違いなく男だ。JG（女子学生）を装うなんて外道の所業!! けしからーんっ！ と、怒りに震える私だったが……
突然ふと、あることを思い出した。そういえば……そういえば最近、「042」で始まる電話番号を、迷惑メールで見た覚えがある。つい先月、スマホのショートメッセージ（SMS）に、「Yahoo！」をかたる怪しいメッセージが届いていたのだ。
そのメッセージには「会員登録の未納料金が発生しております。本日中にご連絡がない場合、法的手続きに移行します。Yahoo カスタマーセンター 042-×××-××××」と書かれていたのだ。
「Yahoo カスタマーセンター」ってなんだよ。しかもヤフーが電話で未納料金を催促するなんて聞いたこともない。もしや電柱の電話番号は、これと仲間なのでは──!?
・ソレ系の専門家に聞いてみた
念のため、迷惑メール評論家で編集長のGO羽鳥に意見を求めてみた。
佐藤「コレ、何だと思う？」
羽鳥「なんだコレ？」
佐藤「怪しげな男が、電柱の後ろに挟んで去って行ったんだけど」
羽鳥「どこで見つけた？」
佐藤「新宿駅の南口」
羽鳥「それは怪しい。ヤバい筋の連絡先かも……」
佐藤「マジか、怖えな」
羽鳥「いや、でも、目的がわからん……」
さすがの羽鳥も、紙を見て黙り込んでしまった。これはマジでヤバいのかも……。2人で話しあった結果、「電話してみるしか真相を確かめる手はない」という結論に。
・実際に電話をしてみた
ということで、さっそく電話をかけてみることに。このような場合、できれば非通知発信をしたいところ。自分の電話番号が怪しげな相手に知られるのは避けたい。だが、「非通知やIP電話からだと相手が電話に出ない可能性が高い」と羽鳥が言うので、ノーガードで電話をしてみることにした。
はたして、電話の向こうにはどんな相手が待っているのか？ すると、なんと……
電話の向こうには、絶対に誰もが予想できない想定外すぎる相手が待っていたのだ！ 次のページに急げーーーーーッ!!
Report：佐藤英典
Photo：Rocketnews24
発信すると、呼び出し音がする。番号は生きているようだ。
トゥルルルルル、トゥルルルルルと、コールを繰り返す。電話口の向こうには、どんな人物がいるのだろう。男性か女性か？ 若者か？ 年配なのか？ 受話器を握る “誰か” の姿が頭をよぎる。誰なんだ？ お前は一体、誰なんだ!?
トゥルルルルル。
3度コールを繰り返した後、電話がつながった！
（▼たった79秒の動画なので、ぜひとも動画で会話の一部始終を確認してほしい）
女性の声「お電話ありがとうございます。○○郵便局、郵便の□□です」
え!?
電話は郵便局につながった。紙に書かれていた番号は、郵便局（日本郵便）のモノだったらしい。
なぜだ!? 悪徳な架空請求業者じゃないのか？ JKやJDやJCなどのJG思わせといて〜〜〜からの〜〜〜〜「JP（Japan Post）」でしたー！ ってギャグなのか？ そんなことより、とりあえずこの場を取り繕わねば……。ど、どうしよう……
「あ、間違えました！」
そう言って間違い電話であることを装うのが精いっぱいだった。謎の番号の真相を追求するはずだったのに、どうして自分が間違い電話を装っているんだ!? ……ワナ？ これは完全なるワナ？ 俺はもしかして、ハメられたのか……？
なんだろう、この途方もない敗北感は。なぜかわからんけど「負けた！」と思った。
しかし、より一層、謎は深まった。どうしてあの男は郵便局の電話番号を、電柱の後ろに挟んだのだろうか。なぜ通学定期券購入申込書にわざわざ丸みを帯びた文字を書いて、人目を忍んで隠したりしたのか……。その答えは、彼のみぞ知るところだ。
いずれにしても今回の手口は、一般的に知られる悪徳業者よりも、ある意味 悪質と言わざるを得ない。女子学生に思わせるところも罪深いし、こうして探究心の強い私のような男から、謎の間違い電話がかかってきてしまう郵便局が一番の被害者であろう。
もうこんなイタズラ、やめなさい。
Report：佐藤英典
Photo：Rocketnews24
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]