ロケットニュース24

サハラ砂漠のラクダ使いに1日密着してわかったこと「チャンスがあれば観光客をナンパ」「世界中の言葉を使いこなす」など

2017年9月19日


モロッコのサハラ砂漠には、ベルベル人と呼ばれる砂漠の民がいる。ベルベル人とはズバリ「ベルベル語」を話す人々のこと。ベルベルの語源は諸説あるが、その1つがギリシャ語の「バルバロイ」とされ、意味は「わけのわからない言葉を話す者」だそうだ。

そんな彼らは客人を大切にする習慣があり、砂漠では「ラクダ使い」としてフルに能力を発揮している。というわけで今回は、どこかミステリアスな雰囲気のあるラクダ使いの1日に密着してきたので詳しく紹介したい。

・生まれも育ちもサハラ

美しい砂漠の中に佇む小さなホテル『オーベルジュ ド スッド』で出会ったのは、いわゆる職業が「ラクダ使い」のベルベル人だ。ガチで砂漠をあちこち移動しながら生活をしているわけではないが、砂漠の小さな集落出身で生まれも育ちもサハラな方々である

彼らは「わけのわからない言葉を話す」どころか、世界中の言葉を使いこなしているので、現地では日本語オンリーの筆者の方が明らかにベルベルだ。ちなみに「ベルベルという名称は失礼」と言う人もいるが、彼らは全員「ベルベル最高!」というスタンスである。

・仕事を分担

午前中の仕事はさまざまで、あるラクダ使いは「夏は涼しく、冬は温かい」という土壁でホテル内のスタッフルームを改装し、あるラクダ使いは「アルファルファ」と呼ばれる干し草をラクダや羊に与えていた。なんでも、アルファルファは栄養価が高くて美味いらしい……この知識、一生使わない気がする。


そして休憩時に必ず登場するのが、モロッコ名物のミントティー。食事は「パンとオリーブオイル」か、肉または魚と野菜を蒸し煮した「タジン鍋」が基本だ。ちなみにパンは「オリーブオイルがあれば無限にイケる」とのこと……オリーブオイルは「ごはんですよ」と同じポジションである。

・食後にヤッラー

食後、ラクダ使いたちは何も言わずに忽然と姿を消した。アルハムドゥリラー(ごちそうさま)直後に、行き先も告げずヤッラー(レッツゴー)したのだ。マジかよ……でも昼間の砂漠は、イメージ通り鬼のように気温が上がるので外には出ないだろう。と思って、倉庫内を覗いてみると……

いた。一瞬、死体が転がっていると思ったが、気持ちよく昼寝しているようだ。平和な昼寝タイムは15時ごろまで続く……。

・夕方からが本番

夕方以降のラクダ使いはかなりカッコイイ。民族衣装にチェンジしてターバンを巻いたら完全に別人だ。予約表で観光客の国籍と人数を確認し、ラクダツアーの準備に取り掛かる。また、準備と並行して外国語の発音を確認しているようだ。チャンスがあればナンパをするため、発音練習は欠かせないという……勤勉なやつらだ。


ラクダにお客さんを乗せたら砂漠の旅が始まる。サハラの厳しい環境を知り尽くしたラクダ使いたちは、砂漠の物語をロマンチックに演出するのだ。キャンプ地でディナーを用意するのも、天然のプラネタリウムにマッチする「ベルベル音楽」を演奏するのも彼らの役割。見事としか言いようがない。


ちなみにラクダは、夜の間に逃走しないよう片足をロープで縛っておく。特にボスの足はギュギュッとキツめに縛っておくらしい。というのも、ボスが逃げるとみんながついて行ってしまうからだ。朝起きて、ラクダが全員ヤッラーしていた時の絶望感は異常である。

・太陽のぬくもり

歌って踊ってサハラの夜は更けていく……こうしてラクダ使いの1日は終わった。翌朝は、日が昇る前に起きてラクダを確認し、砂漠に昇る朝日を鑑賞してから朝食。夜明け前のサハラはとても静かで肌寒いが、朝日が昇り始めると太陽のぬくもりを感じる。なんというか、とてもありがたい。

朝食後は、暑くなる前にお客さんをラクダに乗せてホテルへ。ラクダ使いたちは水を浴びて休憩した後、再びそれぞれの持ち場へ戻っていった。

──いかがだっただろうか。ラクダ使いを少しでも身近な存在と感じでもらえたなら幸いである。アフリカと聞くと少し怖いイメージもあるかもしれないが、ベルベルのラクダ使いたちは心優しいイケメンばかりだ。もしモロッコへ行く機会があれば、サハラ砂漠にもぜひヤッラーしていただきたい。

参考リンク:オーベルジュ ド スッド
Report:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.

▼ラクダ使いの仕事はさまざま





▼庭の整備



▼夕方以降が本番











▼テントの中で生演奏を披露している

▼ラクダは逃げないように片足を縛る


▼砂漠のホテル


▼ラクダを座らせる練習

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