田舎で音楽活動を続けるのは、とても難しい。まして、離島となるとコンスタントに演奏をする場所がない。そもそもライブそのものが難しいのに、無謀にもフェスを開催したのが、島根県の隠岐島である。
2013年4月に、10日間も野外音楽イベントを開催。その参加費がたったの9800円という、まったく意味不明のフェスを開催した。このフェスを主催した旅館「紺屋」にはこれまでの4年間で100名のアーティストが出演したという。旅館でライブ? しかも100名も出演しただと? まったく意味がわからない……。
・過去4年100名以上のアーティスト出演
実は隠岐島前での無謀なアコースティックフェスは、2013年と2015年の2回開催されている。いずれの主催も紺屋によるもので、これ以外でも、旅館で定期的にライブを開催しているのだ。これまでに出演したアーティストは実力派ぞろいで、離島の小さなのはずなのに、都会の老舗ライブハウスに負けないラインナップ。以下がこれまでの出演者たちである。
・旅館「紺屋」の主催ライブに出演したアーティスト(順不同)
中村まり・藤岡藤巻・竹原ピストル・藤原さくら・森恵・うつみようこ・いとうせいこ・宮川剛・中山うり・べべチオ・古澤剛・スーマー・sakurai yoshiki・浜崎貴司・KAN・近藤房之介・加藤エレナ・りりィ・斎藤洋士・深沢剛・浜田ケンジ・SASAKURA・寺尾紗穂・高島悠達・とんちぴくるす・矢野絢子・RIKUO・三上寛・遠藤ミチロウ・山根万理奈・小山田壮太・Black bottom Brass Band・ticobo・田島貴男・踊ろうマチルダ・寺田町・大江健人・星村麻衣・井上フヂオ・伊藤保・takuya nagabuchi・よしととひうた・門脇大樹・森田さやか・関取花・福岡史郎・青谷明日香・大久保由紀・森下滋・東しょうた・トクマルシューゴ・安斎孝明・岡崎倫典・アシガルユース・野口あつし・皇甫 純圭・ワタナベイビー・安藤明子・Predown・おおはた雄一・中沢ノブヨシ・極悪イチゴ団・ハッチハッチェルオーケストラ・長津宏文
・食堂や広間をステージに
竹原ピストル、浜崎貴司、KAN、近藤房之介、三上寛、遠藤ミチロウ、田島貴男などなど。驚いたことにかなりの大物アーティストが出演者に名を連ねている。繰り返しになるが、ここはただの旅館である。ライブができるような立派なステージがある訳ではなく、食堂や広間をその都度ライブ仕様にして、即席ステージにしているのだ。
当然防音設備が整っている訳ではない。旅館の周囲に音が漏れる。事前に近隣にご挨拶をして、理解して頂けるように努めているそうだ。最近ライブが行われた時には、離島らしくお魚を配って「よろしくお願いします」と挨拶まわりをしたという。
・主人「儲からない」
旅館の主、中村徹也さんにライブを継続していることについて話を聞くと、次のように答えてくれた。
中村さん 「忙しいのに儲からん。逆がいい」
とのことだった。そりゃそうだろう、小さな旅館でライブを行っても、ライブハウスのように大勢収容できる訳ではない。したがって儲けも限られるに決まっている。ではなぜライブを続けるのか? その点を尋ねると……。
中村さん 「(ライブのおかげで)島が豊かになってるって、周りの人が言うので、役立ってるなら続けて行こうと。でも、忙しいのにうちは儲からん」
とのことだった。紺屋の儲けはさておき、ライブを続けることで島が豊かになるのなら、やっている意味があるだろう。たとえ中村さんが儲からなくても、できる限りライブの開催を続けて欲しいと思う。がんばれ、中村さん!
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24