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【実話】「仕事がデキる女性社員 VS 仕事はダメだが容姿端麗な美人社員」の対立で会社が潰れかけた話 / クズ社長が押してしまった爆破スイッチ

2017年5月2日

bangongshi

会社を退職する手段は、大まかに2種類ある。円満に退社する方法と、円満ではない雰囲気のなか退社する方法だ。そして、辞める側にとっても会社側にとっても、なるべく前者の “円満に” という方向で退職の話を進めたいところだろう。

……が、現実的にそうは言ってられない場合だってある。例えば、辞める側が「うおおおお! こんな会社、潰れちまえ!! ボケ、コラァァッ!!!!」となってたら、話を円満に進めるのはなかなか難しい。それどころか、場合によっては退職者の怒りが会社を倒産の危機に追い込むことだってあるのだ。こんな風に……

・ブラック企業で起きた話

というわけで、実際にあった「退職者の怒りが会社を潰しかけた話」を以下で紹介したい。まず、最初に言っておかなければいけないのは、その会社はかつて私が在籍していた会社だということ。そして、大手を振りながら堂々と労働基準法を破りまくる超ブラック企業だったということだ。

ひと月あたり平均して150〜200時間くらいの残業時間があり(残業代なし)、社長から「こいつはダメ」と思われたら、採用から1〜2カ月で有無を言わせずクビ。そこをクリアした人も、長時間労働と低賃金、社長の人格についていけず、長くても3年以内にほぼ全員が退社するような編集プロダクションである。

・社長自身が告白

なお、その事件は私が会社に在籍している時期に起きたわけではなく、入社前の出来事。それをなぜ私が知っているのかといえば、当事者である社長から私が直接聞いたからだ。

といっても、私がその社長から気に入られていたわけではない。後で聞けば、ある程度 会社に慣れた人には誰にでも話していたようだ。吐き出さずにはいられないほど、社長にとっては、“その事件” がショックだったのだろう。

ただし、聞いている側からすれば「ショックっていうか、お前が悪いねん!」と思わずにはいられないものがあった。前置きが長くなってしまったが、当時の状況から説明していこう。

・女性社員だけの少人数体制

事件勃発前、会社には社長(男性)、女性社員のAさん、女性社員のBさん、同じく女性社員のCさんがいたらしい。社長以外は全員女性である。理由は、扱っていた出版物が女性向けだったから……ではなく、社長の「好み」により女性しか採用していなかったからなのだが、それは一端置いておこう。

とにかく、そんな会社を引っ張っていたのは、有能なAさんとBさん。社長いわく「見た目はアレだが、仕事はデキる」というAさんとBさんは、クライアントの依頼をバリバリとこなし、会社に多大な売り上げをもたらしていたという。

一方のCさんは……これまた社長の言葉を借りるなら「愛想がよくて、アヤヤ(※松浦亜弥)に似てて可愛いけど、仕事はデキない」とのこと。社長の評価としては、「顔は良いけど、仕事はダメ」だったようだ。

・社長の圧倒的ひいき

そしてここがまず問題なのだが、社長はその3人に同じ態度で接するのではなく、ルックス最強のCさんをあからさまに可愛がっていたという。それは社長自身も認めており、「Cは一緒にいると楽しくなるタイプで、ミスしても可愛かった」と言っていたので、社長はCさんに相当メロメロになっていたと思われる。

——するとどうなるのか? もはや “あるある” だが、A&B国とC国は、メチャクチャ仲が悪くなってしまったそうだ。

ちなみに、社長は自分のお気に入りの社員だけボーナスをこっそりと出したりしていたので、A&Bさんよりも、Cさんの方が収入面でやや上だった可能性もある。この辺り、確証はないがそういうことが起こっても不思議ではない会社であった。

・ついに全面戦争へ

話を戻そう。そんな険悪な雰囲気が続いていたある日、冷戦なんてヌルい争いは終わり、ついに戦争が始まったのである。仕掛けたのは、武力最強のA&Bさんタッグ。何かのきっかけでついにキレてしまったA&Bさんは、社長に直談判。そこで、Cさんや社長、会社に対する不満をぶつけ、最後にこう言ったという。

「こんな状況が続くのだったら、私たち2人で一緒に会社を辞めます」

——クビを賭けて、決めに行ったのだ。それを聞いた社長は、A&Bさんタッグを一端下がらせて、Cさんを呼び出した。そして……とんでもないことをCさんに告げたのである。そこで放たれたまさかの発言が、会社を倒産の危機に追い込むことに! それは……次のページへGO!!

執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.


「Cさん、悪ぃ、会社 辞めてくれ」


——これである。先述の通り、社長はアヤヤ似のCさんをとても可愛がっていた。しかし、会社の稼ぎ頭であるA&Bさんに辞められたらヤバイと思ったのか、もしくは単純に人間関係のいざこざが面倒になったのかは知らないが、社長はCさんに突然のクビ宣告をしたのである。

・社内の勢力図が変わる

そしてここから、事態は社長が予測しない方向に急展開する。クビ宣告をされたCさんは、なんと今までの宿敵・A&B国に泣きついたのだ。事情を聞いたA&Bさんは、Cさんをクビにするという方法で問題の解決を図ろうとした社長に対して、「ありえねええええええええええええ!」となったもよう。

結果……なんと、今まで対立関係にあったA&B国とC国の間に同盟が成立。社長をぶっ潰すためのABC包囲網が完成したのである!!

A&B国からすれば、今までC国に対して持っていた不満のベクトルが、社長にズドーンと向くことに。またC国は、突然のクビ宣告で社長に抱いていた信頼が完全に無。もしくは、社長と仲が良かった分だけ、憎悪に変わっていても不思議ではない。

さらに、A国・B国・C国が持つそれぞれの憎しみは互いに相乗効果を生み、ABC連合軍の士気は最高潮に達していたと推測される。

・社長が最もダメージを受ける方法は何か?

ただ、ABC連合軍は「Cさんのクビを取り消して!」と社長に抗議するような正攻法は一切取らなかった。そんな甘いものではなかった。彼女たちは「どこに爆弾を落とせば社長が最もダメージを受けるか」を考え、作戦を練ったのだ。そして……それが会社に大混乱をもたらすことになる。

一方、自分のクビ宣告がABC包囲網を生んだことなど全く知らない社長。彼が状況を悟った時、すでに “詰み” だったようだ。彼女たちが落とした爆弾を1つずつ挙げていくと、こんな感じだ。


・ABC包囲網の三段爆撃

まず1つが、3人同時に突然 会社を辞めたこと。法律的にいえば、「退職するなら少なくとも1カ月前に会社へ連絡する」的な決まりがあるようだが、法律どうこうを言い出したら、ブラック企業である会社の方が圧倒的に分が悪い。それを見越した上で、3人は「いきなり辞めてもノープロブレム」と判断したのだろう。

これにより、会社にいるのは社長だけという状況に。もう会社じゃない。いち個人だ。その会社は勤務時間がメチャクチャ長かったので、当然ながら仕事量も多い。元から明らかなマンパワー不足だったにもかかわらず、膨大な業務をこなす人が社内に誰もいなくなってしまったのだ。

この時点で、会社としては瀕死である。放っておいても息を引き取りそうなものだが、連合軍の爆撃はまだまだ止まらない。どんどん爆弾を落としていくぞ。


・クライアントとの信頼関係を破壊

社長の評価によれば、「仕事がデキた」というA&Bさん。彼女たちはクライアントともパイプも太かったそうだが、ここでそのコネを利用する。会社を辞める前に「あの会社はブラックでヤバイですよ〜。私たちも辞めますしね」と、クライアントの担当者に全てぶちまけていそうだ。

編集プロダクションにとって、クライアントとの信頼関係は生命線と言っても過言ではない。それを破壊しようしたのである。


・示談金まで

さらに! とどめの一撃が……。3人は弁護士を雇い、会社に対して裁判沙汰をチラつかせたのだとか。理由は、長時間労働。今まで「当然なもの」として受け入れてきた法外な勤務時間の長さを、攻撃のカードとして使ってきたのだ。A&Bさん、仕事デキすぎだろ!!

こうして、元社員の全員から、「訴える」と言われた社長。その心理的ダメージは、いくらブラック企業を運営する経営者といえども大きかったのか、最終的に会社はAさん、Bさん、Cさんに対して、ウン十万の示談金を払うことになったそうだ。

——以上である。

ちなみに、連合軍によって徹底的に破壊された会社のその後は……瀕死の重症を負ったものの、死亡はしなかった。社長が外部ライターに電話しまくってフル稼働させ、なおかつクライアントに頭を下げまくり、ギリギリのところで倒産を免れたのだ。

そして会社は、「女性しか採らない」方針を180度転換して、急に男性社員の採用を開始。そこに私も含まれていたというわけである。なお、その話を社長から聞かされた人は、私を含め全員が「うおおおお! 惜しい!! こんな会社、潰れとけばよかったのに!! ボケ、コラァァッ!!!!」と感じる心理状態であったことは言うまでもない。

執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.

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