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【読書の秋】ロケットニュース24記者がオススメする「この秋読んで欲しい本」13選

2016年10月17日

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北海道では初雪が観測され、そろそろ肌寒くなってきた日本列島。食欲の秋、運動の秋、そして『読書の秋』である。ちなみに読書の秋は、中国の詩人 “韓愈” の「燈火稍く親しむ可く」に由来しているとされ「秋は過ごしやすいので夜は明かりを灯して読書をするといい」という意味だそうだ。

そこで今回は、ロケットニュース24のライター陣がオススメする「読書の秋に読んで欲しい本13選」をお伝えしたい。それぞれに思い入れのある作品ばかりだから「何を読もうかな~」という人は参考にしていただけると幸いだ。

・P.K.サンジュンのオススメ「水滸伝 / 北方謙三」


歴史小説が大好き、しかも長編であればあるほどイイ。そんな私、P.K.サンジュンのオススメは北方謙三氏の「水滸伝」である。文庫本で全19巻というボリュームでありながら、とにかく引き込まれっ放しの展開のため、体感としてはあっという間に読み終わってしまうハズ。

読めば、男の生き様と死に様。そして「男はその魂を激しく震わせることで漢(おとこ)になる」ということがわかるだろう。熱き漢たちの咆哮に、全身の血が沸き立つこと間違いなし! 括目せよ!!

・沢井メグのオススメ「“ジョーカー・ゲーム” シリーズ / 柳広司」


第二次大戦前の日本が舞台。陸軍中枢の反対を押し切って設立されたスパイ養成機関「D機関」出身者のスパイ活動を軸に展開されるミステリー小説だ。短編小説集でありながら、どの話にも痛快な大どんでん返しが待ち受けている。

D機関に欺かれるのは、作中の敵国や軍部だけではない。読者も完全に裏をかかれてしまうだろう。何も考えずに読んで、ハッとさせられるもよし。結末を予想しながら読むもよし。疲れて回らなくなった頭をシャキっとさせてくれること請け合いだ。

既刊4冊出ているが、私は第1作『ジョーカー・ゲーム』収録の「ジョーカー・ゲーム」と戦前上海を舞台にした「魔都」が好き。余談だけど上海を「魔都」と名付けたのは日本人作家の村松梢風。中国人に教えるとビックリされる豆知識なので覚えておこう!

・中澤星児のオススメ「スクールアタック・シンドローム / 舞城王太郎」


良い小説は数あれど、心の中に突き刺さって抜けないトゲのような小説にはなかなか出会うことができない。舞城王太郎の「スクールアタック・シンドローム」は、そんなトゲを集めたような短編集。特に「ソマリア、サッチ・ア・スウィートハート」を初めて読んだ時の衝撃は忘れられない。

ポップでキャッチーな文体で展開される物語は軽やかなボーイ・ミーツ・ガール……かと思いきや、時おり顔を出す狂気が半端ねェェェエエエ! そして、猛スピードで明後日の方向へ転がり続けた末、やってくる負け惜しみのようなラストに胸キュン。なんで感動してるのかわからないジェットコースターのような91ページ。心臓の弱い人はご注意を。

・佐藤英典のオススメ「ジェノサイド / 高野和明」


急死した父親から送られてきた1通のメール。創薬を勉強している大学生はこのメールをきっかけに、思わぬ事態に巻き込まれて行く。一方、特殊部隊出身のある傭兵は、極秘の暗殺任務を請け負うのだが、そのターゲットはアフリカで誕生したとされる進化した人類だった。別々のはずの2人の物語は意外な形で交わっていく……。

映画を観ているようなリアリティあふれる描写に、グイグイと引き込まれ、寝るのも忘れて読書に没頭してしまう。怒涛の展開に一気読みしてしまうこと間違いなし。

・りょうのオススメ「死刑でいいです 孤立が生んだ二つの殺人 / 池谷孝司」


ミステリー小説が好きだけど、ノンフィクションの犯罪小説にはいつも頭を殴られるような衝撃を受ける。テレビでは報道されない、事件の真相を深く追求した作品……中でも、私がオススメするのは池谷孝司氏の「死刑でいいです 孤立が生んだ二つの殺人」だ。

凄惨な殺人を繰り返し25歳で絞首刑となった元死刑因 。彼がモンスターになっていく過程が緻密な取材によって明かされてゆき、背筋が凍るほどの恐怖を感じる。だが、作者の熱意、エネルギーによってページをめくる手が止まらない。悲劇を繰り返さないためにも、この本が訴える問題から目を背けず、向き合っていこうと深く感じた作品だ。

・K.Masamiのオススメ「遠野物語 remix / 京極夏彦」


かの有名な柳田國男の「遠野物語」を小説家の京極夏彦が再構成した一冊。「再構成? 現代語訳して奇麗に並べただけ?」……いやいや違う。もちろん口語訳をしたでもなく、かといって丸っと新しい物語というのでもない。原作の魅力と素材を全て使い、柳田國男らしい「遠野物語」を京極さんの力でえぐり出した作品なのだ。

今でこそお堅いイメージのある柳田だが、きっと妖しい話が大好きで、遠野に棲まう目に見えないモノたちの姿にワクワクした青年だったに違いない。そんな柳田の姿がチラリとのぞくのも、同書の魅力のひとつだ。「遠野物語ってなんぞや?」という人も、柳田のオリジナル遠野物語が大好きな人にも読んでほしい一冊だ。

・砂子間正貫のオススメ「アルケミスト 夢を旅した少年 / パウロ・コエーリョ」


世界中でベストセラーになった小説なので読んだことがある人も多いだろう。「宝物のありか」を示す夢を2度見た羊飼いの少年は、夢に従って羊をすべて手放しアンダルシアの平原からエジプトのピラミッドへと旅に出る物語だ。

少年は出会いと別れを繰り返す中で大切な人生の知恵を学んでいくのだが、砂漠の小さな村で出会ったファティマとのやり取りがあまりにも美しく「砂漠で旅をしてみたい」と、私も夢を見てしまった。すべての文章がキラキラと輝いていて何度読んでも心が洗われるに違いない。

それぞれの思いを込めた1冊。あなた好みの本は見つかったかな? まだまだ続くライター達がオススメする読書の秋に読みたい本の数々。残りの6タイトルは2ページ目へGOだ!

Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

【読書の秋】ロケットニュース24記者がオススメする「この秋読んで欲しい本」13選(2ページ目)

・GO羽鳥のオススメ「金網の青春 / ブル中野」


女子プロレス界の女帝、通称「ブル様」が1991年に出した自叙伝。学生時代から全女入門、獄門党時代から、伝説の1990年11.14横浜文体での「金網ギロチン」あたりまでの心境を包み隠さず書いた内容なのだが、読めば読むほど「プロとは何か」や「負けてたまるか」といった気持ちになるので、ファンでなくても必読だ。

ちなみに、新人苦労時代の食生活を書き綴った『第11章:ゴミ箱の中のきゅうり』は特に秀逸かつ、号泣必至。私はこの本を読んで、「紅しょうがゴハン」を食べ続ければ強くなれると勝手に信じ、学校に行く前に紅しょうがゴハンを食べ続けた。

・Nekolasのオススメ「食べて、祈って、恋をして 女が直面するあらゆること探求の書 / エリザベス・ギルバート」


ジュリア・ロバーツ主演の映画『食べて、祈って、恋をして』の原作がオススメ。正直なところ、映画の出来がイマイチな感じだったため、原作の評価が低くなるのではと心配になってしまったほどである。本作は、夫と離婚して人生の転機を迎えた女流作家エリザベスが、1年かけてイタリアとインド、バリを旅する実話を綴った作品だ。

原作は、人生を見つめ直すエリザベスの心境が繊細に描写され、人生で壁にブチ当たったことがある人なら、誰でも共感できる内容となっている。そして、自分の生活や人生に大きな変化を起こしたいけれど、なかなか重い腰を上げられないという人が読んだら、きっと触発されてしまうこと間違いナシだ

・K.ナガハシのオススメ「枯木灘(かれきなだ)/中上健次」


複雑な家庭環境のなかで生きる青年「竹原秋幸(たけはらあきゆき)」の身の回りに起こる出来事や心の葛藤を、これでもかというほどリアルに描いた中上健次の長編小説。

テーマが重いうえに、本中の家系図を確認しながら読み進めないと理解出来ないほど難解な物語だが、その強烈な世界観に一度引き込まれたらもう後戻りは不可能。ぜひ読んでみていただきたい一冊である。

・マミヤ狂四郎のオススメ「電脳アジアコピー天国 / クーロン黒沢」


ロケットニュース24でも、たまーに記事を書いてくれるクーロン黒沢氏の処女作。出版されたのは1994年で、その当時、フリーマーケットめぐりを趣味にしていた中学1年生の私は、たった100円でこの本を入手。「こんな世界があったのか!」と衝撃を受けると同時に、物書きとして行きていくことを決意した運命の書

危ないゲームの世界に興味を持ったのも、怪しい海外に興味を持ったのも、数年経ってから実際にアジアに旅立ったのも、そして今に至るのも、すべてはこの本がきっかけだ

・原田たかしのオススメ「逆境を笑え / 川﨑宗則」


日本だけでなく、アメリカでも愛されているムネリンこと川﨑宗則。ムードメーカーでおもしろいイメージが先行している彼だが、この本では真面目な一面も見ることができる。

プロフェッショナルとは何か。野球好き以外でも一読する価値がある。当然のようにイチロー愛が炸裂しまくっているが、共感できる部分も数多く、自信を失った時や元気がない時に読むとパワーをもらえる一冊

・小千谷サチのオススメ「ストリート・キッズ(ニール・ケアリーシリーズ)/ ドン・ウィンズロウ」


「犬の力」や「失踪」など、日本でも人気の高いドン・ウィンズロウ。ウィンズロウの新作が発表されるたびに胸が躍るが、それでも何度も読み返してしまうのが彼のデビュー作「ストリート・キッズ」だ。

プロの探偵として育て上げられる元ストリート・キッズが、家出少女を探す本作は軽妙なハードボイルド。内容のコミカルさに笑顔になりつつも、主人公のナイーブな気持ちに切なくもなる。

主人公ニールと相棒グレアムの組み合わせの素晴らしさ。創元推理文庫の表紙も素敵。「探偵ニール・ケアリー・シリーズ」は全5冊あるので、ハマればじっくりとこの世界を堪能することができる。

──以上である! 普段から読書をする人もしない人も、記者たちが自信をもってオススメする渾身の1冊だから、ぜひ参考にして欲しい。ハマりすぎて寝不足になってもいいじゃないか。「燈火稍く親しむ可く」なのだから。

Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

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