できることなら経験したくない大都会の生き地獄……それが魔の「通勤ラッシュ」である。乗車率100パーセントなんて当たり前で、時に120%、それ以上の臨界点を超えて窓ガラスが割れたなんて話も聞いたことがある。そのうち破裂しちゃうかも。
そんな通勤ラッシュ時において、他の車両は見るからにギュウギュウ150%なのに、不思議と乗客ガラ空きの車両がホームにすべりこんできたとしても、「超ラッキー!」や「運が良いわぁ!」と車内に駆け込むのは非常に危険である。なぜならば、本当にウンが付くかもしれないからだ。今年の真夏に起きた、謎まみれの事件のように。
・小田急線のミステリー
今回ご紹介する未解決事件は、都内在住のOL・こけしさん(仮名)の体験談である。時は2016年8月25日(木)。時刻は通勤通学ラッシュまっただ中の午前8時30分ごろ。そして、ミステリーのはじまりは小田急線の成城学園前駅であったという。
いつものように、成城学園前のホームで、急行新宿行きを待っていたOLこけしさん。いつも乗り込むのは女性専用車両で、その日も女性専用車両の列に並んでいた。すべては、いつもどおりだった。いつもの日常だった。
ガタンゴトン……と電車が来た。いつものように、メチャクチャ混んで……いない! 他の車両は推定乗車率200%でギッチギチ、さらに言えば、その女性専用車両もギッチギチなのに、なぜかOLこけしさんが並ぶ列の前のドアだけはガラ空きだったという。
「はて? なんか変だな……」と不思議に思いながらも、いつものように車両に乗り込んだこけしさん。しかし、車内に乗り込んで2歩目あたりで異変に気づいた。ななな、なんと……車内のど真ん中に、立派なウンコがデデーンと落ちていたというのだ!!
ウンコの場所はドアとドアの間のど真ん中。太さはズッキーニほどで、長さは6〜7センチ。あまりにも立派なので、最初は「ふ菓子かな?」と思ったそうな。水っぽくもなく、硬すぎもせず、見たところ “完璧な健康体” と言っても良い、理想的なウンコ。いきなり視界に飛び込んできた非日常な光景に、こけしさんはパニックに陥ったという。
・硬度は1H
大事なことなので「一般的な柔らかい系のウンコがHB、なかなかの硬便がH、肛門ヒリヒリするレベルのカチカチウンコが2Hだとしたら、どのくらいの硬度と推定されるか?」と聞いてみたところ、しばし熟考の末、「H程度かと」との証言を得た。
さらに、そのすぐそばには、離島のように「踏んづけて、ひきずった跡」があったという。その離島サイズは「小さめの唐揚げ程度」であったらしい。念のため、実際のスケールで想像図を描いてみたが……なるほど、これはデカイ。看過できない問題である。
・冷静に考えれば考えるほど謎が深まる
だが、ここまでは、まだよい。単に “立派なウンコが電車内に落ちていた” だけの話だ。真のミステリーは、ここからである。冷静に考えてみて欲しい。カタチからして、このウンコは “漏らしたウンコ” ではないのである。目撃者のOLこけしさんいわく、
こけし「どう考えても、うっかりウンコが出ちゃって、パンツからはみ出してボトン……という形状ではなかった。もしもパンツを通過していたら、たとえHの硬度があったとしても、もっと形状が崩れるはず。と、いうことは……」
──ここまでの証言を聞きつつ、あらためてもう一度冷静に考えてみて欲しい。“女性専用車両”、しかも “通勤ラッシュ時の急行” である。様々な可能性が考えられるが、
・女性がパンツをズラして立ったまま脱糞 → ×落下の衝撃ならびに肛門の締め具合により、ウンコの形状も崩れる
・女性がノーパンのまま立ったまま脱糞 → ×同上
・女性がノーパンのまま腰を落としてガニ股で脱糞 → ○ヨガの達人ならありうる
・女性が満員車内のど真ん中で堂々としゃがんで脱糞 → ◎ありうる
・テレポーテーション(瞬間移動)したウンコが車内に出現 → ☆大穴
・人間ではない動物説 → ×ありえないと駅員さんの証言(次ページにて解説)
本命◎は「堂々としゃがんで脱糞」、大穴☆はテレポーテーション説と考えるのが自然であろう。しかしながら、朝の通勤ラッシュで堂々としゃがんで脱糞(しかも女性専用車両)というウルトラCが実現可能なのかどうかも疑問が残る。やはり瞬間移動……!?
ほかにも「一体どこで当ウンコが出現したのか?」等についても謎は深まるばかりだが、そろそろ話を先に進めたい。このウンコは、その後どうなったのか? さらにさらに、駅員さんにも当ウンコ事件についての見解を聞いてみたので、続きは次ページ(その2)にて公開したい。長い長いウンコの旅、行き着いたのは……あの駅だった!!
Report:GO羽鳥
イラスト:マミヤ狂四郎
Photo:RocketNews24.
【追跡ミステリー】謎の未解決事件「真夏の出勤ラッシュ時に小田急線の女性専用車両に乗ったら車内のド真ん中に立派なウンコが落ちていた事件」に迫る(その2)
ここからは一気に、OLこけしさんの目撃証言をもとに、時系列に沿りながら、読者のみなさんが実際に車内にいるような気持ちになれるように書いてみたい。繰り返しになるが、まずスタート地点は小田急線の成城学園前駅、急行新宿行きの女性専用車両だ。
・2016年8月25日(木)午前8:30ごろ
電車が来た。なぜかガラガラ。不思議に思いながらも車内に乗り込み1歩2歩……と歩を進めると、目の前にいきなりウンコ! まるでタンゴダンサーのごとく3歩目で思い切りターンして踏みつけはギリギリ回避。振り向くと、やはりウンコ。どう見ても人糞。
・車内に生まれたクレーター
そして、そのウンコを中心として、半径2〜3メートルほどの “誰もいない地帯” が生まれている。それはまるで、ドラゴンボールのサイヤ人が丸型の宇宙船に乗って地球に降り立ったシーンのように。こ、これは一体……!! なぜ、ここにウンコが……!!
・運転士さんが気づく
と、その時。ガラス越しに車内の異変を察知したのか、運転士さんが突如として車内アナウンス。そのセリフは「ただいま●号車の●番目のドア付近において、清掃が必要な状況になっております。足元には十分にお気をつけください。下北沢もしくは代々木上原で車内清掃を行う予定です」という感じであったという。
・急行アンド急行
誰かの腹の具合が急行になった結果のウンコによって、女性専用車両内は静かなるパニックが生じているが、それでも急行電車は止まらない。そして各駅をすっとばして下北沢に到着……と同時に、念押しの「足元にお気をつけ下さい」アナウンス。清掃準備が間に合わなかったのか、下北沢で清掃は行われず、ウンコも乗車したままドア閉まる。
・すわ往復か
はたして、このウンコはどこまで行くのか……。もしかして新宿までたどり着いて、またも清掃が間に合わず、小田原方面にUターンするのではないか……と、誰もがハラハラし始めたその時! 代々木上原到着寸前、三度目の「足元にご注意アナウンス」が。
・救世主(メシア)来たる
まさに三度目の正直。ここからの小田急線の仕事っぷりはハンパなかった。電車が代々木上原のホームにすべりこみ、「プシュ〜〜〜」とドアが開くと同時に、“両手にビニール手袋をはめた駅員さん” が乗り込んできて、あっという間にウンコを撤去!! OLこけしさんは「気の毒だな……」と思いつつも、迅速な仕事っぷりに感動したという。
──ということで、ウンコは代々木上原にて無事に下車。だが、もしかして、この話はOLこけしさんの幻覚なのでは……という可能性もあるので、実際に起きた事件なのかを代々木上原駅に電話して聞いてみたところ、実に興味深い話を聞くことができた。
・嘔吐物扱い
まず、その日のその時間、たしかに代々木上原駅にて清掃をしたという記録は残っているという。だが、日常的にしょっちゅうある「嘔吐物扱い」として簡単に処理されているそうで、「車内にウンコが落ちていました」という記録は残っていないという。
・ウンコからウンコウを守る
というのも、たとえば「妨害」などによって電車が遅延した場合は、詳細な記録を残すことにしているのだが、なんとこの日のウンコ清掃によって遅延したのは、手慣れたもので、わずか1分。まさにプロフェッショナルの仕事! 1分の遅延など、ほぼ通常通りのウンコウ(運行)ということになり、日常的な「嘔吐物扱い」になったもよう。
・動物説の可能性は限りなく低い
ちなみに、前ページにて予想した「人間ではない動物説」についてだが、駅員さんによると「まず、ありえない」という。理由は以下の通り。
通常、動物を車内に乗せるときには、女性専用車両に限らず、すべての車両で「動物をカゴに入れてもらう = 手荷物扱い」になっている。カゴに入れないで、そのまま動物を車内に入れようとしたお客さんは、「乗車前に駅員が静止する」とのこと。
となると、カゴに入れないで乗り込める動物といえば……たとえば盲導犬などが挙げられるが、訓練された盲導犬が車内のど真ん中で豪快にウンコするとは考えにくい。以上のことから、「動物が乗り込んでウンコをした」という可能性は限りなく低いという。
・超レア
となると、やっぱり人間なのか? それともテレポーテーション!? いずれにしても、駅員さんによれば「ホームに小便という話はたまにありますが……車内にウンコが落ちていたなんてことは、聞いたこともありません。かなりレアなケースです」とのこと。実際に落ちていたウンコはレアではなくてウェルダンだったもようだが、レアなのだ。
・ラッキーガール
もしもこの女性専用車両で、OLこけしさんと同様のレア体験をした女性たちは、実はかなりのラッキーガールだ。めったに見られるモノではない。一生語れる話のネタを手に入れた、逆にウンの良い女性たちなのである。ためしにウン・コを逆に読んでみよう。そこにあるのは……そう、幸運(コウ・ウン)なのだから。<完>
Report:GO羽鳥
イラスト:マミヤ狂四郎
Photo:RocketNews24.