「日本の技術は素晴らしい」「日本には世界に誇る文化が数多くある」……確かにそういう一面もあるだろう。昔から奥ゆかしく自己PRが下手とされる日本人は、損している面も多いに違いない。だがしかし、本当に現代日本は “おもてなしの国” にふさわしいレベルといえるのだろうか?
以前の記事で「最近わざと優先席に座っている理由」というコラムを書いた。簡単にいえば、優先席ですら必要な人に譲れない人ばかりだから、わざと座って必要な人に譲っている……という内容だ。賛否両論、多くの反響をいただいたが、実際のところ「本当に席を必要としている人たち」は、どれくらいの確率で着席出来ているのだろう?
・妊婦4名でリサーチ
今回、記者は妊婦4人の協力を得て、11日間、合計100回電車に乗ってもらった。彼女たちはお腹が目立つ妊娠7カ月以上の妊婦で、まだ産休に入らず仕事をしている人や専業主婦など、環境は各々違う。そして詳細な調査内容は以下の通りである。
・最初から席が空いていて座れた回数
・途中から席が空いて(譲ってもらわずに)座れた回数
・席を譲ってもらって座れた回数
・最後まで立っていた回数
なお、本来は妊婦が譲られるべき優先席付近に立ってもらおうと思ったのだが、「優先席とはいえ、既に座っている人の前に立つのは勇気がいる」との声があったので、あくまで調査条件は “乗車” だけとした。そして、気になる結果は以下の通りだ。
・最初から席が空いていて座れた回数:「27回」
・途中から席が空いて(譲ってもらわずに)座れた回数:「31回」
・席を譲ってもらって座れた回数:「9回」
・最後まで立っていた回数:「33回」
つまり、「最初から席が空いていて座れた回数」を除き、純粋に席を譲ってもらえた確率は、わずか「12.3%」ということになった。先述したように、4名ともポッコリとお腹が出た “一目で妊婦とわかる女性” たちである。「多くはないだろうな」とは予想していたが、正直ここまで低いとは思わなかった。
・衝撃的な結果……
もちろん、路線や時間帯、地域や調査回数により数字に変化はあることだろう。だが妊婦たちが「もう最初から電車で座れると思っていない」「帰りはまず座れない」「座れないならともかく、押しのけて座ろうとするのは危ないからやめて欲しい」と語るように、残念だが「本当に必要な人に席が譲られていない」のが現状らしい。
記者も1日だけ妊婦の密着取材を試みたが、妊婦が乗車しても多くの乗客は視界にすら入らないようだ。それは偶然乗っていた「杖をついた老人」に対しても同じで、若者も青年も中年サラリーマンも、その場にいた全員が誰一人としてアクションを起こさずにいた。
そしてその日、記者が目撃した、妊婦に唯一席を譲ってくれた人は「欧米人らしき白人女性」1人だけ。この結果を日本人として、“おもてなしの国” に住む一人の人間として、あなたはどう思うだろうか?
・席を譲れない人に贈る言葉
最後に、席を100%譲れる人間である記者から、席をどうしても譲れない全ての人たちにこの言葉を送りたい。
『義を見てせざるは勇無きなり』
「人としてすべきことを知りながら見て見ぬふりでしないのは、勇気がない臆病者である」という意味の格言だ。記者も人間だから、ついつい “義” を見過ごしてしまおうとすることもある。そんなときはすぐにこの言葉を思い返し、自分を奮い立たせているのだ。
個人的な価値観だが、記者は人から「馬鹿」と呼ばれようと「変態」と呼ばれようと構わない。だが「臆病者」はイヤだ。もしあなたが電車内で席を本当に必要としている人を見かけたら、ぜひこの言葉を思い出してほしい。日本が世界をおもてなしする東京オリンピックは、あと4年後に迫っている。
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
▼スマホもいいけど、ちょっと周りを見てみよう。
▼そしてこの言葉を思い出してほしい。