2016年2月28日『東京マラソン2016』が開催される。一般応募の倍率は10倍以上があたりまえ、日本一の人気を誇るマラソン大会であるが、筆者は運よく2012年の同大会に参加する機会に恵まれ、人生初のフルマラソンを経験した。
結果としては6時間9分かけてなんとか完走。それ自体にも感動したし、沿道の人たちの応援や東京の街並みにもイチイチ感激したが、最も思い出深く残っているのは、マラソン中に起きた「とある出来事」である。
・フルマラソン未経験で参加
先述したように、筆者は当日がフルマラソン初挑戦であった。ぶっちゃけ長距離走は苦手だが、6時間40分という制限時間が筆者の気持ちを楽にした。3時間でゴールしろと言われたらとても無理だが、6時間40分なら時速約7キロで走ればいいのだ。
時速7キロなんて小走り、なんなら早歩きである。もし42.195km先で家族や大事な人が困っていて「俺が行かないとヤバい!」 となったら俺は行く、というか行ける。そう自分に暗示をかけ、ロクに練習もせずに当日を迎えた。
・コスプレランナーたちの多さに驚く
スタート地点である新宿でのこと。ゼッケンを付けストレッチをしていると、周囲にはやたらとコスプレをしている人が多い。ご存じの方も多いだろうが、東京マラソンにはコスプレをしながら走るランナーが異常に多く、それは同大会の見どころの一つになっているほどだ。
実は東京マラソンをじっくり見たことがなかった筆者は「こいつらナメてんな」と内心思っていた。それはそうだろう。ちょっとした飾りつけや衣装くらいならまだイイ。中には「絶対に完走する気ないだろ!」というほど大掛かりなコスプレを施すランナーがいるのだ。その中の1つが、2人組のASIMO(アシモ)である。
・ロボットASIMOの2人組
アシモとはHONDAが誇る人間型ロボットのこと。そのコスプレの精度は極めて高く、顔を含めて全身はスッポリとプロテクターで覆われている。筆者はこのアシモペアを、スタート地点から間もない市ヶ谷付近で追い抜いた。アシモペアのスピードは、ちんたら走る筆者よりもさらに遅いのだ。
そしてスタート地点から約30キロの日本橋付近。体力は十分に残っていたが、筆者のヒザに限界が来た。それまではゆっくりながらも走っていたのだが、もう無理。ヒザ痛すぎ。だが幸いにも時間は十分に残っていたので、残り10kmは歩いても間に合うだろうと考え、徒歩でゴールを目指した。
・ゴール付近での出来事
それから1時間ほどが経っただろうか。ゴールまで5キロを切った豊洲付近でのことである。この時間にこのエリアを通過する参加者は、ほぼ全員が歩いているのだが、それでも沿道の人たちからは優しい声援が。「ヒザも慣れてきたし走ろうかな?」と思ったその瞬間! 筆者を追い抜く2つの影が……そう、アシモペアである。
全身を覆う衣装のせいで、動きづらいだろうし呼吸だって苦しいに違いない。それなのにアシモペアは黙々と、ただひたむきに走り続けていたのだ……! これにはメチャメチャ感動した。鼓動が早くなった。涙さえあふれ出しそうだった。アッパレASIMO! さっきは「ナメてる」とか思っちゃってゴメンよ!!
その後、筆者は無事に完走しフルマラソンを走りきったという事実にも高揚したが、今でも一番心に残っているのは豊洲付近で見かけたアシモペアの後ろ姿である。もう間もなく開催される東京マラソン2016。今年も現場では様々なドラマが起こるに違いない。
参考リンク:東京マラソン
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
▼完走したランナーにのみ贈られるメダル。