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【辺境音楽マニア】「武士道」「吉光」「アリガトウ」など日本風の名前が大流行しているドイツのギャングスタ・ヒップホップシーン

2015年12月1日

joshimizu

デスメタルがアフリカを含め、世界中で広まっているのは、もはや周知の事実だが、ヒップホップも世界中を席巻している。特に盛んなのがドイツ。

元々ドイツはテクノ大国かつメタル大国であり、ドイツ語話者もドイツ本国だけでなく、オーストリアやスイスなど近隣諸国にも多く存在する。そのため、ドイツのヒップホップシーンは世界の中でも規模が大きく、数々の名ラッパーを輩出してきた。今回はそんなドイツのヒップホップを紹介したい。

・シーンの背景

ドイツのヒップホップシーンで活躍するラッパーのほとんどが、トルコやアラブ諸国からの移民の2世か3世。彼らの多くがドイツ社会にうまく馴染めず、疎外感からヒップホップに傾倒していったと言われている。最近では「Deso Dogg」という名でドイツのシーンで活躍していながら、イスラム国の義勇兵としてシリアで死亡したラッパーが報じられた。

・逆オリエンタリズム

ドイツのラッパーの多くに、白人文化や西洋文明と対峙させた東洋やイスラムを美化した「逆オリエンタリズム」的傾向が見られるが、特に彼らが憧れているのが日本。

彼らにとって東であればあるほどかっこよく、サムライやニンジャ、空手などの神秘的なマッチョ文化を生み出し、アメリカに対して「カミカゼ」という自爆攻撃を仕掛けた日本は男らしさが凝縮された国に見えてしまっている様だ。

・日本語由来の言葉

そして日本に対する憧れが高まった結果、日本語に由来する言葉をラッパー名にしているドイツのギャングスタが多く発生しているのだ。そうした「インチキ日本語ドイツギャングスタラッパー」を紹介しよう。

Bushido(武士道)
ドイツをヨーロッパ最強ギャングスタラップ大国にした立役者。Facebookでの「いいね」数が180万を超える超大物。名前の由来はもちろん「武士道」。母がドイツ人、父がチュニジア人のハーフ。隠れデスメタラーとしても知られる。

Chakuza(ヤクザ)
オーストリア出身。名前は「ヤクザ」が由来。Bushidoが犯罪容疑でオーストリアに拘留されているとき、自宅に宿泊させたことから意気投合。

Godsilla(ゴジラ)
ベルリン出身。当然名前の元はあの怪獣ゴジラ。制作元である東宝から訴えられることを回避するために、2010年からは「Silla」と名乗っている。フランスにも「Godzilla」というデスメタルバンドがいたが、同様の理由で「Gojira」に改名。

La Honda(ホンダ)
現在はBero Bassで活動しているクルド系ラッパー。当初、「La Honda」は自身が立ち上げたセキュリティー会社の社名だった。2009年に殺人未遂容疑で逮捕される。

Alligatoah(アリガトウ)
ニーダーザクセン出身。プロフィールに説明はないが「アリガトウ」由来と見られる。Alligatoahはバンド名でKaliba69というラッパーとDJ Deaglew1人2役でやっているという設定。

Kamikazes(カミカゼ)
フランクフルト出身のギャングスタラッパーで2歳違いの兄弟。当初は「Kamikaze Brothers」と名乗っていた。別のMetrickzというラッパーも「Kamikaze」という曲を発表。なお「Kamikaze」はドイツやフランスなど、ヨーロッパのヒップホップ曲で頻出する日本語。

Joshi Mizu(吉光)
オーストリア出身。ゲーム「鉄拳」の「吉光」が由来。ビデオクリップやアートワークでカタカナ風フォントを多用するクールジャパン好き。

King Katana(刀)
ニュルンベルグ出身のギャングスタラッパー。「刀」由来。

Karate Andi(空手)
ベルリン出身のラッパー。ドイツには「アンドレアス・マーコート」という著名な空手家もおり、同氏も「karate Andi」と名乗っているが、無関係との事。

Kay One(K-1)
フィリピンとドイツのハーフ。ドイツで活躍するボクサーManuel Charrのプロモーターを務めており、自身もマッチョなため、「K-1」から名前を付けている可能性があるが、正確な由来は不明。

※オマケ Blumio
アーティスト名は日本語ではないが、ドイツ語でラップする「国吉史生」という名の日本人ラッパー。ドイツで日本人の両親の間に生まれた。実際、ドイツ本国ではある程度人気があった。

他にもゲーム「無双」と関係ありそうなハイデルベルク出身の「Muso」や、ベルリンの米軍居住地区ツェーレンドルフ出身の「Taichi」など、いかにも日本語っぽい名前のラッパーがドイツには数多く存在する模様だ。

また実はラッパー名は日本語ではないにしても、ビデオクリップがいかにも日本風だったり、日本ロケを敢行するラッパーも存在する。日本ではこの様に、ドイツのヒップホップで日本が人気がある事は、ほとんど知られていないのではないだろうか。

そしてこうしたヒップホップにおける「クールジャパン」現象は、ドイツ以外のヨーロッパの国々でも流行りつつあるのだが、それはまた別の機会に紹介しよう。

参考リンク:YouTube
執筆:ハマザキカク

▼Bushido『Electro Ghetto』、2004年にリリースしたこの曲で、それまでドイツに蔓延(はびこ)っていたパーティーラップを一掃する。

▼Joshi Mizu『MDMA // prod. by KD-Supier & Stereoids』、日本では全く話題になることもなく日本ロケのビデオクリップをリリース。渋谷が舞台に

▼Blumio『Hey Mr. Nazi (official video)Produziert von Don Tone』、純粋日本人なのにドイツ語でラップ。ネオナチとの対話を試みたビデオクリップが全ドイツで話題に

▼MASSIV『PALESTINE (OFFICAL HD VERSION AGGROTV)』、日本とは関係ないが、パレスチナ連帯を訴え続ける超コワモテMassiv。まるで格闘選手の様なルックス

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