ロケットニュース24

【心霊コラム】金縛りをかけるプロ! キャリーバッグを引く謎の女性を見た話

2015年8月16日

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先日ロケットニュース24では、「深夜の山道で乳母車を引く謎の老婆に出会った話」「金縛りにあっても『南無妙法蓮華経』と唱えられなくなった話」の2本の心霊コラムをお届けした。

今回は私(筆者)の心霊体験を紹介したい。あれは今から数年前、私は友人A、Bと一緒に北海道へ遊びに行ったときのことである。

・北海道での体験

旅行とはいっても、贅沢なものではない。男同士ということもあり、とにかく安く北海道を楽しめればOKだった。予約したホテルだって、コスパ重視で適当に選んだビジネスホテルである。

ちなみに、押さえたのはシングル3部屋で、同じフロアの隣同士。部屋の位置関係は、A → 私 → Bである。

・Aだけが先にホテルへ帰ることに

事件が起きたのは、旅行の最後の夜のこと。私とA、Bの3人は、札幌市内の居酒屋で飲んでいた。店を出た後、Bが「ラーメンでも食べて帰ろう」と提案し、私も一緒に行くことに。しかし、カロリーを気にしているAは、“深夜ラーメン” の抵抗が大きかったのか、先にホテルに帰ることになったのだ。

こうして、私とBはラーメン屋へ。当初は1時間程度かと思っていたものの、ラーメンを食べた後にしゃべっていたら遅くなり、結局私とBは、2時間後くらいにホテルに戻ることになった。疲れた体でホテルのエレベーターに乗り、自分たちの部屋があるフロアから降りたその時……! 

Aの部屋に、キャリーバッグを引く謎の女性が入って行くのが見えたのだ。

──「あれは誰だ!?」私とBの頭の中を、全く同じ言葉がよぎったに違いない。念のために女性が消えた部屋に近づき、番号を確認してみたが、やはり女性が入っていったのはAの部屋である。間違いない。

・隣の部屋から謎の声

思わずBと私は顔を見合わせた。だが、お互いに何と言っていいか分からない。本音を言えば、酔っているから結構どうだっていい。とりあえず、私とBはそれぞれ自分の部屋に戻ることにした。なお先述の通り、先に帰ったAのすぐ隣が私の部屋である。

カードキーをピッとあてがい、ドアを開けると、私はそのままベッドにゴロン。横になりながらリモコンに手を伸ばし、見慣れない北海道の番組をぼんやりと眺めていた。「今日は疲れた……。もうこのまま寝てしまって、お風呂は明日の朝に入ろうかな」なんてことを考え、私がウトウトし始めたその時……!

「あああぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ああぁ! あああぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ああぁ! あああぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ああぁ!」

Led Zeppelin の『移民の歌』の歌い出しを彷彿とさせるような、強烈なシャウトがAの部屋から聞こえてきたのである。

なんて長いブレス! その叫びを聞いた途端、私は思わず身の毛がよだったが、「隣にロバート・プラントが宿泊していて、深夜にボイトレしているんだ」と無理に自分に言い聞かせ、そのまま眠ることにした。

そして翌朝……Aが、自らの心霊体験を告白することになるのだが、それは次ページで明らかになるぞ。

執筆:和才雄一郎
イラスト:稲葉翔子

【心霊コラム】金縛りをかけるプロ! キャリーバッグを引く謎の女性を見た話(後半) 

・正面突破で聞いてみた

次の日の朝、ホテルのビュッフェに集まって朝食をとっているとき、Bがさっそく話を切り出した。

「ラーメン屋から帰ってきたら、キャリーバックを引いた女の人がお前の部屋に入って行くところを見たわ」

Aにとっては予期しなかったBのストレートカウンター。その一撃によろめいたのか、Aは思わず顔を伏せた。それから……Aは皿によそったパリパリのウィンナーをフォークで突つきながら、重い口を開いたのだ。

「実は昨日の夜、出たんや。幽霊が!」……このようにして、Aが語った恐ろしい心霊体験は以下の通りである。 

・Aの金縛り体験

A:「確かに昨日の夜、俺の部屋に女性の幽霊がやって来たんや。しかも俺がベッドで寝てたら、入ってきた幽霊にあっさりと金縛りにされてな」
B:「マジで……。金縛りって、どんな感じでなったん?」
A:「幽霊がキャリーバッグからロープを取り出して、俺の体を縛り付けてん」
私:「そんな物理的な方法で!?」
A:「あの手際の良さは、幽霊の中でもプロの部類やな。しかもや!」

私とBは、思わずAの方へ身を乗り出した。

A:「俺が金縛りで動けなくなったところで、その幽霊が俺の顔面に乗ってきてん。息が出来んくて、苦しかったわ……」
B:「それは大変やったな……その後どうなったん?」
A:「幽霊が部屋に入ってきて50分くらいした頃かな。タイマーがピピピっと鳴って、金縛りは解けたんや。そしたら、女性の幽霊は急いで消えていったわ。タイマーが鳴ったら即やで」
私:「メッチャ時間に律儀な幽霊やん!」
B:「他に何か覚えてないん?」
A:「そういや……その幽霊が去った後、俺の口の中にイソジンの香りが残ってたわ。あの幽霊、金縛りの前後で、なぜか俺にイソジンをさせたんや」
私:「えらくキレイ好きな幽霊やな」
A:「人間界よりも幽霊界の方が、衛生面を気にするのかもしれへんで」

私は『移民の歌』のことも質問したかったが、Aの強ばった面持ちを見ていると「昨夜の悪夢を思い出させてはいけない」という気持ちが自然と強くなり、自分の胸の中にしまっておくことにした。

・急いでホテルを出る

とにもかくにも、私とA、B、3人の意見は一致している。このホテルはヤバい! 幽霊が出る! 幸いにしてと言うべきか、私たちはその日にチェックアウトの予定だったので、朝食を済ませたら さっさとホテルを出ることにした。

すると……! チェックアウトの際、またしても驚愕の事実が明らかになったのである。フロントで会計をしているAが、焦った表情で私の方を見てこう言ったのだ。

ごめん、金貸してくれへん? 幽霊が俺の財布から2万円ほど抜いていったの忘れてたわ」と。

執筆:和才雄一郎
イラスト:稲葉翔子

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