【コラム】完全に自宅以下! 斬新な設備の老舗旅館での仰天エピソード / 門限23時・暖炉にタウンページ・暖房の温度調節にビンのフタなど(その2)
・シミだらけのせんべい布団
驚きの「おもてなし」の連発に、期待に胸躍る我々は、続いて押入れをオープン。すると……、キタキタ! せんべい布団! シミだらけのせんべい布団キタ‼︎ 枕もシミだらけッ! これにはもう、笑うしかなかった。しかしなぜか、隣の部屋は羽毛の掛け布団であった。隣の部屋のまさかのスイートルーム感に、若干の不公平さを感じつつも、もはやその違いすら一興と思うようになっていた。
・紙ナプキンは夜だけ
そして、なんだかんだいってもお楽しみの夕食。席に着くと、目の前には骨つきチキン(通称チキボン)のトマトソース煮込み! わあ、美味しそう! 手で掴むことを想定してか、料理は完全に冷めきっていた。そして、大人でも難易度の高いこの冷めたチキボン……。子供たちは案の定、口の周りも手もベッタベタである。おしぼりで拭こうとあたりを見渡すも……、「拭き取れる何か」がどこにも見当たらない。
当然のごとく、「すみません、何か手を拭くものを……」と厨房をのぞくと、奥からでてきたオバチャンは。「紙ナプキンは夜だけなんだけど……」と言って、渋々紙ナプキンを手渡してくれたのだが……? 今食べているのは夕食、すなわち「夜」ではないのか? 紙ナプキン、堂々ともらってよかったのではっ⁉︎ ──そんな無粋なギモンにはフタをした。
その後も、食べてるそばから片付けられたり、団欒(だんらん)もそこそこに追い出されるなどの手厚いもてなしを受け、我々は風呂に向かった。ツアープランには、特典として「アメニティ無料。ご希望の方はフロントへ」となっている。アメニティ無料とあるが、アメニティは普通無料ではないのか? というか、部屋に人数分置いてあるものだと思ってた。などなど色々と思うところはあるが、郷に入っては郷に従うべきなので、フロントへ。
・色んな種類のバスタオル
するとここでも、出迎えたオーナーの苦笑いが炸裂! なにやらブツクサ言っているが、もはや意味がよくわからない。とにかくなにかが不満なようで、ここでも渋々と、少し埃をかぶったアメニティ(歯ブラシと歯磨き粉入りの袋)をサービスしてくれた。
ちなみに、バスタオルは、貸し出し1枚300円で、薄手のバスタオルを貸し出してくれた。隣の部屋の学生風の男子のに貸し出されたのは、カラフルでやや厚手の素材だったが、私に手渡されたのは無地で薄手のものだった。私は隣の男子が少し羨ましかった。
・家族風呂
今回、我々は5家族での宿泊だったので、念のため、全員一斉に入浴できるのか(そこそこ広いのか)? とオーナーに質問したところ、愚問だったようでオーナーは再び半笑いで「大丈夫ですよ。皆さんで入れますから(笑)」と述べた。
ところがどっこい、いざ入ってみると、家族風呂サイズの浴槽に、シャワーは左右に2台ずつの計4台! どこからともなく聞こえた「お〜い、シャワー1個足んねーぞ〜(笑)」という声に、裸の我々は爆笑の渦に包まれた。これが団欒である! ちなみに一番印象に残っているのは、絶対に冷たいと思ったトイレ(もちろん共同)の便座が、思いもいらぬ温かさであったことだ。あの旅館で一番の温かさを感じた。
・微笑ましいやりとり
そして、朝ごはんは「ご飯」か「パン」か、どちらだろうと盛り上がった我々であったが、答えはロールパン3個。大人も子供も、多かろうが少なかろうが3個だった!
そして、日本人の性(さが)だろう、どうしても朝はご飯が欲しい客がいたようで、女将との微笑ましいやりとりも垣間見れた。
客:「ご飯ありませんか?」
女将:「ありません」
客:「昨日の残りでもいいから……」
女将:「ありません」
客:「本当にないですか⁉︎ 昨日炊いてたでしょう⁉︎」
女将:「ありません」
客:「本当に……⁉︎ 少しも⁉︎」
女将:「……」
──そんな珍問答を眺めつつ、我々は半笑いオーナーの旅館を後にした。正直いって、自宅以下の宿泊施設だった。けれど、これらの仰天エピソード連発のおかげで、旅の楽しみ……そして、一緒に旅行した家族同士の絆は一層深まった。なお、この旅館の客間に鎮座するちゃぶ台には、ポットはおろか湯のみ、お茶菓子などは一切配置されていなかったことに気づいたのは、帰りのバスのなかであった。
最後に、あらためてこの仰天旅館の素晴らしき設備を写真集でご紹介したい。ダイレクト洗面台への驚くべきフォローは次ページ(その3)へGOである!
Report:DEBUNEKO
Photo:RocketNews24.