2009年にNASAが打ち上げたケプラー宇宙望遠鏡。地球型の太陽系外惑星を探すことを目的に、これまでに約3000個の系外惑星候補を発見している。しかし、2013年に方向を制御する部品が故障し、主な観測ミッションは終了。その後は、太陽光の圧力を利用する観測「K2ミッション」が開始された。
さて、上記の概要は有名だが、いったいケプラー計画を運用しているのはどういった人々なのだろうか? そこでこの度は、『ケプラー計画』チームがネット上で行った質疑応答を紹介したい。「宇宙人はいるの?」「どんな仕事をやってるんですか?」など、私たちが気になる質問に10名のスタッフが答えてくれたのだ。
Q1:宇宙人を見つけたら、やっぱり秘密にするんですか?
A1:私は内緒にするのが苦手なので、秘密にしてもバレてしまうでしょうね。でも、すぐには公表せず、色々と確認をすると思います。そうすれば、より正確なことをみなさんに伝えることができます。これまでも早とちりで公開し、その後に間違いが見つかって撤回したビッグニュースだってありますしね。
Q2:探査中に宇宙人の存在が分かった場合、NASAはどうするのでしょうか?
A2:過去に、NASAが「宇宙人を発見した」と公表したことがあります。結局、誤情報だったのですが、公表に踏み切ったNASAの姿勢は評価できるとと思います。
Q3:これまでに生命が存在することができる惑星を発見しましたか?
A3:いいえ! ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)にいくつかの惑星を発見しましたが、“生命が住める惑星” というわけではありません。そのほとんどが木星のように、固体の表面が存在しない惑星ばかりです。
一方で、「ケプラー186f」 や「ケプラー62」のように、表面が岩石だと考えられる惑星も発見されていますが。
Q4:地球外生命はいつ発見されると思いますか?
A4:個人的な意見ですが、次の50~100年間には、私たちの暮らす銀河で生命が発見される可能性があると思っています。運が良ければ、それよりも前かもしれません。
Q5:これまでにケプラーが発見した惑星のうち、お気に入りはなんですか?
A5:「ケプラー37b」ですね。理由は、これまでで発見されている最小の惑星だからです。また、この惑星が発見されたときに私が論文を書いたので、個人的な思い入れも強いのです。でも、ケプラーのスタッフに「好きな惑星」を質問するのは、親に「お気に入りの子供は誰?」と聞くようなものですね。
Q6:地球外生命体を発見したらどうしますか?
A6:どういった “生命” を発見するかによって選択肢は分かれます。例えば、見つけたのが微生物の様に単純な生物だったら、より詳しい調査を開始するでしょう。実際に多くの科学者たちが、10年~20年後には単純な宇宙生命体を発見できると考えています。
もし知的生命体を発見した場合は、人類が受けるショックはそうとう大きいでしょうね。なので、どんな影響を受けるか予想することすらできません。
Q7:太陽系外惑星で行ってみたいのはどれ?
A7:「ケプラー10b」。誕生日が20時間毎に巡ってくるからね。
Q8:NASAで働くにはどうすればいいですか?
A8:あなたが興味を抱いている分野によります。例えば、科学やテクノロジー、エンジニアリング、数学の道に進みたいのなら、まずは大学に進学して下さい。そして、科学者やエンジニア、天文学者になれば、NASAに挑戦することができます。
私の場合は、大学で天文学を学び大学院に進みました。天文学には、物理と数学が何より大切です。高校の化学だって役に立ちます。また英語や歴史を勉強して、論文を書く練習をしてみるのもいいでしょう。外国語を学ぶことだって重要です。科学雑誌に目を通すことも忘れずに。
Q9:もしケプラーの存在に、宇宙人が怒ったらどうするんですか? 宇宙戦争に発展したらどうするのですか?
A9:ケプラーは受動的な探査をしており、他の惑星に向けて何の信号も発していません。ただ、星の光を探し求めているだけです。
もし、地球から宇宙船が飛び立つことを知っている宇宙人がいたとしたら、彼らは地球からとても近い場所にいて、とても高度な文明を備えていることになります。ということは、彼らは地球にいつでも飛来することが可能です。個人的には交通事故の方がずっと心配ですね。
Q10:私たちの住む銀河に宇宙人は存在すると思いますか? 宇宙ではどうですか?
A10:ケプラー・チームのほとんどのスタッフが、この銀河で地球外生命体を発見する日が来ると考えています。しかし、宇宙人と呼ばれる知的生命体となると、その可能性は全く分かりません。
また、この広い宇宙の中で地球だけに生命が発生しているとは考えにくいですね。宇宙には生命を構成する要素が観測されています。ただし、それがどのくらいの確率で生命に発展するかは分かっていません。そして、その生命体が文明を持つか? またその文明はどれくらい長続きするのか? という問いも残されています。
Q11:ケプラー計画を進める上で、一番難しい仕事は何ですか?
A11:科学の最先端の情報を、仕入れ続けることですね。毎日最低でも3つの論文に目を通したいのですが、ナカナカ時間が取れません。ミーティングに出て、たくさんの同僚たちと話すのも好きなんです。
Q12:通常はどんな風にお仕事しているんですか?
A12:自分のオフィスで、惑星のアルゴリズムを開発しています。他にも、同僚の科学者たちと新しいプロジェクトについて話し合ったり、問題を一緒になって解決したりします。オフィスの窓からは、モフェット連邦飛行場が見えて、色々なジェット機を眺めることができる。エアフォースワンだって見えます。
でもスタッフの立場によって、仕事内容はバラバラです。
Q13:ケプラー計画を応援するにはどうすればいいですか?
A13:科学や宇宙探査が好きだというあなたの気持ちを多くの人に伝えて下さい。家族や友人、知人などに、宇宙探査の興味深さ、重要さを語ってみて下さい。他にも「PLANET HUNTERS」に登録して、実際に惑星を探してみてもいいですね。
またNASAは米国の政府機関であり、税金でまかなわれています。なので、NASAを応援したいという声を議員に伝えることも効果的でしょう。
……つづきの質問は次ページ(その2)へ!
参照元:Reddit、Twitter @NASA Kepler(英語)
執筆:小千谷サチ
【NASA降臨】「ケプラー宇宙望遠鏡」のスタッフがネット上で質問を募集 「宇宙人はいるの?」「NASAで働くには?」など質疑応答39選(その2)
Q14:ケプラー計画で発見された惑星の中で、もっとも地球に似ていたのはどれですか?
A14:「ケプラー186f」ですね。地球と同じくらいの大きさで、太陽の半分の大きさの恒星のハビタブルゾーンに位置しています。
Q15:新たな惑星は十分に発見されていると思います。なぜこれ以上の探索を進めるのですか?
A15:私たちの太陽系がどのように形作られたのか、まだ解明されていません。なので、どういった種類の惑星が存在しているのか調査を続けます。これまでに、太陽系の惑星とは、まるで似ても似つかない惑星が太陽系外で発見されていますが、似た惑星は見つかっていないのです。
Q16:ケプラー計画は、人類が移住できる惑星を探すのが目的ですか?
A16:いいえ。太陽のような恒星周辺のハビタブルゾーンに、地球型の太陽系外惑星がどれくらいあるか調査することが目的です。
しかし、より広い視点で見てみると「この宇宙に、生命が生息できる世界があるのだろうか?」「地球以外にも、知的生命体は存在するのか?」という質問の答えを見つけることが目的とも言えるでしょう。
Q17:ケプラーやハッブルなど、NASAの大きなミッションで働くには、どうしたらいいですか?
A17:参加するためには様々な選択肢があります。例えば、私は博士号を取るために、カナダ初の宇宙望遠鏡「MOST」に従事していました。そこでケプラー計画に参加するために必要な技術を身につけました。
他にも、大学で天文学、物理学、数学の授業を受講し、とにかく天文学者を目指していた人もいます。
Q18:ハッブル宇宙望遠鏡が成功したのに、なぜケプラーで調査姿勢がガラリと変わったのですか?
A18:ケプラーの視覚はハッブルの1万倍も大きく、太陽系の17万個の星を一度に見ることができます。また、地球の周回軌道にのっていたハッブルは、次々と撮影する対象を変えていたのに対して、ケプラーは何カ月にも渡って同じ対象を観察し続け、いかなる変化も見逃しません。
ケプラーはあくまでも、地球型の太陽系外惑星を探すことに重点が置かれているのです。
Q19:これまで発見された惑星の大きさの平均はどれくらいですか?
A19:ケプラー計画を通して、小さな惑星の方が、大きな惑星よりも多いということが分かりました。最もよく見かけられるのは、地球の3倍かそれ以下のサイズです。その理由はまだ分かっていません。
Q20:太陽系外惑星を発見できても、実際に訪れることができないなんて、悲しくなったりしませんか?
A20:惑星のほとんどが地獄みたいな環境だから行きたいとは思いませんね。
Q21:次の50年間で何を発見したいですか?
A21:生命です! 次の世紀は、地球外生命体について学ぶ時代だと思っています。
Q22:ケプラー計画が終了したら、みなさんどうなるんですか?
A22:それは、計画でどのような役割を担っているかで大きく違ってきます。多くのエンジニアや技術者は、ケプラーが打ち上がった後に別のプロジェクトに移って行きました。科学者の場合は、ケプラーを打ち上げてデータを収集するまで、具体的にやることがそうありませんでした。
私はケプラー計画に従事しながら、2017年打ち上げ予定の、ケプラーの後継となる系外惑星探査プロジェクト「TESS」の準備も行っています。ケプラー計画が終わったら、今度はTESSにどっぷり浸かることになると思います。
Q23:ケプラーは部品が壊れ「K2ミッション」がスタートしましたが、どう変化しましたか?
A23:「K2ミッション」はケプラーとは大きく違って、空の一定の方向を長期的に観測するのではなくて、80日ごとに観測する方向を変えます。
なので若い恒星の周りを公転する惑星や、星団の中の惑星など、様々な環境にある星を観察することができます。
Q24:どういった条件の惑星なら、宇宙人がいると判断されるのですか?
A24:まず、岩石でできていて、そして太陽に似たような恒星の周りのハビタブルゾーンに位置していることですね。水や二酸化炭素、酸素などが、検知されれば、生命体が存在する可能性が出てきます。もしフロンガスなどが発見された場合は、知的生命体の存在が示唆されます。
Q25:“ケプラー” という名前をどう思いますか? ピッタリだと思いますか?
A25:ケプラーは素晴らしい名前だと思いますよ。この計画は、ヨハネス・ケプラーによって発見された太陽系の惑星の運動に関する法則「ケプラーの法則」を元にしています。私はケプラーの第三法則のポスターを壁に貼っています。昔、難問と格闘していたとき、そこに書かれている方程式を活用していました。
当初、この計画には「FrESIP(Frequency of Earth-Sized Inner Planets)」との呼び名が付いていましたが、「ケプラー」の方がずっといい名前ですよね。
Q26:太陽系外惑星に探査機を派遣する場合、どれくらいの時間がかかると思いますか?
A26:現在の技術では、探査機の最速スピードは、毎秒10~20キロの速さとなります。これでは、一番近い恒星に着くまでに何万年もかかり、途中で探査機がストップしてしまいます。
秒速30万キロにあたる光速の何分の一かの速度で移動できれば、数年〜数十年で辿り着くでしょうが、そこまで技術は発達していません。ということで、今のところは太陽系外に探査機を送ることは現実的ではありません。
Q27:もっとも宇宙人がいる可能性が高いのはどの惑星ですか?
A27:これまでに、太陽よりも温度の低い恒星の周りのハビタブルゾーンに、岩石性の惑星をいくつか発見しています。そこに大気や水が存在すれば、それらの惑星にはなんらかの生命体がいるかもしれませんね。
Q28:他の惑星に生命が発見された場合、その生命体の姿を直接見ることができるような望遠鏡が開発されると思いますか?
A28:もちろんです。もしそんな画期的な事態になったら、どんな生物なのか確かめたいという好奇心を押さえることは不可能でしょう。なんとしてでも、望遠鏡は開発されるはずです。
……最後の質問は次ページ(その3)で!
参照元:Reddit、Twitter @NASA Kepler(英語)
執筆:小千谷サチ
【NASA降臨】「ケプラー宇宙望遠鏡」のスタッフがネット上で質問を募集 「宇宙人はいるの?」「NASAで働くには?」など質疑応答39選(その3)
Q29:グラフィックデザイナーがNASAで働くことはできますか?
A29:はい、できますよ。実際に、私たちのチームにもグラフィックデザイナーがいて、プレスリリース用のイメージ画なんかを制作してもらっています。他にも惑星「ケプラー186f」のアニメーションを作ってもらったりしました。楽しそうなお仕事だなって思っています!
Q30:私たちが生きている間に、どれくらいの確率で、地球外生命体が発見されると思いますか?
A30:それは年齢や健康状態によりますね。もしあなたが95歳なら、かなり難しいかもしれません。今、私は29歳ですが、私が生きている間には地球外生命体は発見されるだろうと思っています。知的生命体については、話が別ですが。
Q31:他の国もこの計画を支援しているんですか?
A31:世界中の科学者が支援してくれています。
Q32:どういった人々がNASAで働いているんですか?
A32:色々な人が働いていますよ。私はイギリス出身ですが、同僚はインド人、アイルランド人、カナダ人です。ニューヨークの大都会で生まれ育った人から、ニューメキシコ州の小さな町からやってきた人もいます。
子供の頃からNASAに憧れていた人もいるし、たまたまNASAで働くようになった人もいます。
Q33:生命が存在することのできる惑星が発見されるまで、どれくらいかかると思いますか?
A33:ケプラーは、最先端の技術が結集されたものです。なので、今後どういった新しい技術が開発されるかによって、その時間も変わってきます。また、どれくらいの資金が必要になってくるかにもよります。
楽観的かつ現実的に考えてみて、もし、恒星からの光を遮断する高性能の望遠鏡が完成すれば、2015年には、水と二酸化炭素を有する岩石惑星を発見することができるかもしれません。そこから生命を発見するとなると、さらに大きく高性能な望遠鏡が必要です。もしかすると2050年までには、宇宙人を発見することができるかもしれません。
Q34:木星の衛星「エウロパ」から水が発見されましたが、生命は存在すると思いますか?
A34:エウロパで生命が発見されるかどうかは分かりません。もし見つかれば、幅広い環境で生命が進化できることが分かります。ということは、この銀河の他の場所でも、生命が存在している可能性が増します。
Q35:10光年先の惑星で生命体を発見したとしても、私たちは決してたどり着けません。なんの意味があるんですか?
A35:物理的に行けなくても、観察することで様々なことが解き明かされます。知的生命体と通信を取ることもできます。20年越しの会話になりますが。
Q36:「K2ミッション」が始まって、なにが変わりましたか?
A36:ハビタブルゾーンには多くの惑星が存在していることが分かりました。
Q37:ケプラー計画で、太陽系惑星に対する考え方は変わりましたか?
A37:ケプラー計画をスタートさせる前までは、太陽系惑星に似た惑星が、他の銀河でも確認できると考えられていました。しかし計画がスタートすると、そんな考えは吹き飛びました。なぜなら1番始めに発見したのが、公転期間が10日の巨大なガスの惑星だったのです。
Q38:太陽系外惑星を発見したとき、その惑星についてどれくらいのことが分かるのですか?
A38:ケプラーは、ものすごく遠くにある恒星の輝きを観測します。例えば「ケプラー186f」なんかは、500光年離れています。その星のほんの一部分を確認すると、そこを何度も観察して、輝きの変化を捉えます。そうすることで、周りを公転する惑星の存在を知ることができるのです。肉眼で夜空の星を見るような感じの遠さですが。
Q39:宇宙人探査において大気汚染物質を検出すれば、そこに公害を発生させる産業が発展している。ひいては宇宙人の存在が特定できると聞きました。ケプラー計画では、惑星の大気を調査しないんですか?
A39:面白い説ですね。今のところ、ケプラーは太陽系外惑星の存在を探っているだけなので、その惑星の大気を調べることは不可能です。次世代の望遠鏡では可能になっているといいですね。
ただ、地球では産業によって大気が汚染されていますが、宇宙人の産業が大気にどのような影響を及ぼすかは予想がつきません。もしかしたら、火山活動や惑星自体から発生する気体である可能性だってあります。
参照元:Reddit、Twitter @NASA Kepler(英語)
執筆:小千谷サチ