今はなき、東京・文京区の大沢食堂の「極辛カレー」は猛烈に辛かった。一口食べただけで血の気が引き、辛いという感覚を通り越して、痛いとさえ感じてしまうほど、強烈な代物だった。
その極辛カレーを、私(記者)は3度完食しており、多少の辛さには自信があるのだが、原宿に次元の違う辛さを提供する麻婆豆腐を発見した。王ちゃんの中華 原宿店には「地獄麻婆豆腐」なるものが存在する。地獄なんて大げさな! 名前だけだろ? 極辛カレーには絶対に負けるかと思い、挑戦したのだが、残念ながら完食に至らなかったのだ。チキショー……。
・敵は唐辛子だけではない
私は辛さというと、唐辛子の辛さをイメージする。ピリピリと舌を刺激する辛さこそが大敵であり、これとどう向き合うかが完食のカギだと考えていた。ところが、地獄麻婆豆腐は舌だけの刺激に備えていても意味がなかった。
・水分は辛さを増長する
そもそもここの麻婆豆腐は、ひき肉の類が乏しく、ほとんどが水分。オーダーして対面した時に驚愕したのだが、その水面には大量の山椒が浮かんでいたのだ。もう匂いが辛い。山椒辛さで目が染みるほどだ。完全に侮っていた、ピリピリとした辛さだけでなく、弾けるような山椒の辛さも存在するのだ。
・序盤は優勢と思いきや
実際に食べ始めると……。あれ? 匂いは猛烈な刺激を帯びているのに、口に入れても全然辛さを感じない。やはり「地獄」は名ばかりで大げさな売り文句だったのか? なんだよ、ビビらせんなよ。食えるじゃん。勢いをつけて豆腐をすくい上げて、どんどん口のなかに放り込んでいった。ところが!
・ボディブローのダメージ蓄積
山椒の辛さはボディブローである。「そんなへなちょこパンチ、全然きかないぜ!」とばかりに、打たれるがままにしていたところ、突然グハッ! と身体の内側でダメージがスパークした! まるで血ヘドも吐くような勢いで、倒れそうになる。辛いッ!! いや、その感覚さえ怪しく思われる。というのも、ダメージを感じ始めた時にはすでに、口の中全体がシビれていたのだ。
・ガクガクと身体が震えそう
舌がシビれている。頬がシビれている。アゴがシビれている。唇がシビれている。顔の下半分がシビれている。さらに頭がボーっとするような感覚に陥っている。たしかに大沢食堂の極辛カレーでも、頭がボーっとしたのだがそれとは違う。今、全身を支配しているのはシビレだ。汗をかくような刺激ではなく、内側から麻痺させられるようなダメージ。その蓄積である。今回の大敵は間違いなくシビレだ。
・3Rテクニカルノックアウト
ようやく理解した。これが「激辛麻婆豆腐」とネーミングされなかった理由が。このシビレはまさに地獄のようである。フラフラの状態でリングに立っていたのだが、もはや打ち合うことができないと判断したセコンドは、3R1分20秒でタオルを投げた。そこでTKOである……。無念である。
・奴らを侮るな
山椒の辛さを侮ってはいけない。奴らは、刺激的な見た目をしている訳ではない。むしろ地味だ。しかし体力を確実に奪い、身体にダメージが蓄積するボディブローを持っている。山椒の辛さと戦う時は用心が必要である。
・今回挑戦したお店の詳細
店名:王ちゃんの中華 原宿店
住所:東京都渋谷区神宮前6-4-1 八角館ビル 4F
営業時間:11:00~24:00
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
▼これが王ちゃんの中華 原宿店の「地獄麻婆豆腐」
▼水分多めで山椒が浮きまくってる。匂いがすでに辛い
▼ヨッシャ! やったる。地獄とか言い過ぎだろ
▼辛くないやん、全然イケるやん
▼あれ? 唇の感覚がない! アゴとかもシビレてなんか頭がボーっとするんだけど
▼やべえ……、ちょい無理め
▼舐めてたけど、やっぱ地獄だわコレ