「親がなくても子は育つ」と言われているように、生みの親がいなくても、周囲の助けがあれば子供はすくすくと育つ。昔からある言葉だが、今でも、親とはぐれた命を助けようと尽力する人々が大勢いるようだ。
今回紹介するコウモリくんも、事情があって人間の手で育てられた。その様子は、動画「BatWorldSanctuary – Lil’ Drac」に収められているのだが、育ての親である人間と1匹のコウモリくんの交流が、なんだか涙がこぼれてしまうほど、優しさに包まれているのである……。
・コウモリの赤ちゃん、リル・ドラク
リル・ドラクと名づけられた、この赤ちゃんコウモリ。果実や花の蜜などを食べるオオコウモリという種類で、2011年から米テキサス州のコウモリ保護施設「Bat World Sanctuary」で保護されている。実はお母さんコウモリが動物園閉鎖に伴った環境変化でストレスをため込み、育児放棄をしてしまったのだ。
今回紹介する動画は2011年の時のもので、リル・ドラクがまだまだ小さかった時期に撮られたものである。
・人間の手でスッポリ包めてしまうほどの小ささ
動画には、リル・ドラクがお世話をされる様子が写されているのだが、その体は「コウモリの赤ちゃんってこんな小さいの!?」 とビックリしてしまうほどに小さい。人間の手のひらにスッポリと収まるサイズで、そして体はフニフニと柔らかそうだ。
・スポンジに染み込ませたミルクを飲む
まずお世話係は、リル・ドラクの体をガーゼに包んでから、温めた耳かきでナデナデしてやるのだが、こうすることで、コウモリはお母さんの舌でなめられている感触が味わえるのだとか。確かに、気持ちよさそうに顔をこすりつけているぞ。
そしてミルクを染み込ませたスポンジを、口に含ませると、チュッチュッと吸い始める。動画のなかでは上手にミルクを飲んでいるが、この方法に慣れるまでちょっと時間がかかったという。あぁ……可愛すぎる!
・体を揺すってユ~ラユラ
ご飯が終わると……あらっ! いっぱしのコウモリらしく、お世話係の人差し指にぶら下がりだしたではないか!! そして、足でカイカイっと体をかくとすると、左右に揺れだすのだ。これぞ、リル・ドラクお得意のユ~ラユラである。この食事の後のユ~ラユラは、他のコウモリにはあまり見られない行動のようだ。
・最後までスポンジをくわえたまま
その後、人間用歯間ブラシで体をマッサージされて、最後には目をギュッとつぶって眠りに落ちるリル・ドラク……。「幸せそうで、よかったねぇ」と思わずにはいられない、なんとも心にジンとくる表情を浮かべているのだが、この時もまだ口にはスポンジをくわえたままなのだった。
・大きくなってもユ~ラユラ
現在、リル・ドラクは立派な大人に成長している。固形物の食事への切り替え、飛ぶ練習などを経て、今では大きなケージのなかを、仲間たちと一緒に飛び回る毎日だ。そして、あのユ~ラユラも健在! これぞ「三つ子の魂百まで」である。
リル・ドラクの暮らすNGO「Bat World Sanctuary」は、保護・救助活動の他にも、コウモリへの理解を深める教育にも力を入れており、「コウモリを保護する場合は、素手で触らないこと」などの詳しいハウツーから、エボラ出血熱との関係まで、幅広い情報をサイト上で公開している。コウモリのことなら、ドンと来い! という頼もしい団体である。
以前、コウモリの赤ちゃんの可愛さがヤバいことをお伝えしたが、今回は別の角度からコウモリの良さを垣間見ることができたかと思う。お世話係の人の優しい手つきと、安心しきったリル・ドラクの姿を見ると、なぜだろう、グッときてしまうのだった。
参照元:You Tube、Bat World Sanctuary、Facebook(英語)
執筆:小千谷サチ
▼これがゆ〜らゆらの後ろ姿だ!
▼固形物を食べる練習
▼リル・ドラクのベッド
▼仲間が住むケージに移される前に、リル・ドラクが使っていたカゴ
▼2012年1月のリル・ドラク フルーツ大好き!
▼2014年2月のリル・ドラク
▼今でも人間の手で育てられるコウモリの赤ちゃんはいるんだよ
▼数匹の赤ちゃんをいっせいにお世話をするボランティアさん
▼みんな口いっぱいにスポンジを頬張っている