オウム真理教といえば、地下鉄サリン事件をはじめとする数多くの反社会的テロ活動を行った宗教団体である。1996年に宗教法人としてのオウム真理教は解散し、その後、2つの宗教団体に分裂したが……全盛期のオウムの勢いはマジでスゴかった。
テレビをつけたらオウムを報じるワイドショー。自然と『彰晃マーチ』も覚えてしまい、『極限修行者音頭』は気になる存在。そんな時に行ってみたのが、かつて渋谷にあった「オウム真理教ショップ」である。高校1年の夏だった。
・渋谷の雑居ビルの一室に「オウム真理教ショップ」はあった
渋谷西口から東急プラザの横道を入り、ストリップ劇場「OS劇場」を横目に見ながら、急な坂道をのぼっていく。その先にはライブハウス「渋谷La.mama」があり、さらにその先にはプロレスショップ「レッスル渋谷」が当時はあった。
目的地であるオウムショップは、「渋谷La.mama」近くにある雑居ビルに入っていた。ドアは金属製の重いヤツで、いかにも雑居ビルという感じである。営業しているのかどうかも不明であるが、とりあえずドアノブを回してみる。すると……!!
・ひとんちみたいな感じで玄関で靴を脱ぐのがルール
「こんにちはー!!」。やたらとテンションの高い声で私を出迎えてくれたのは、白いサマナ服を着た男性信者だった。その直後、レジカウンターから女性信者がニュッと顔を出し、私に向かって「そこで靴を脱いでね〜!」と言ってきた。フレンドリーだ。
足元を見ると、なるほどたしかに「玄関」だ。ワンルームの部屋にあるような、とても小さい玄関であり、一段上がって店が始まる……といった感じで、ショップというより「ひとんちの部屋(6帖)」だ。もちろん私は、素直にクツを脱いだ。
・電光石火の展開で「帰れなく」なった!
そして、靴下でヒタヒタと歩を進め、ショップ内部の書棚を眺めた。男性信者の白サマナが「何が欲しいのかなぁ?」とたずねてきた。……と、その瞬間! 背後に位置していたレジカウンターの女性信者が、いきなりこう言ってきたのだ!
「ここ、玄関狭いから、クツはこっちで保管しておくね! 帰るときに渡すから♪」
──えっ!? 玄関見ると、クツがない。もう、ない! おそるべきスピード! なんという収納名人!! てゆうか、状況的に帰れない! もしも何かがあったとき、クツがないと逃げられない!! 流れる冷や汗。ヤバい雰囲気になってきた……。
やたらとビビる私に向かい、白サマナはニコニコしながら「何が欲しい?」と再び質問。いま私が欲しいのは私の履いてきたクツなのであるが、そもそも欲しかったのは『極限修行者音頭』のカセットテープ。そのためだけに、ここに来たのだ。
ということで、私は白サマナに「極限修行者音頭のカセットテープが……」と伝えようとしたのだが、「カセッ」あたりの単語が出た瞬間、白サマナは予想外の言葉を絶妙なタイミングで “かぶせ” てきたのだ。続きは次ページ(その2)へ!
Report:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
【コラム】すごい昔「オウム真理教ショップ」でマイルドに軟禁された(その2)
極限修行者音頭のカセットテープをリクエストしようとした私に対し、白サマナは絶妙のタイミングで、私の口から「カセッ……」あたりの言葉が出た瞬間、以下の言葉をかぶせてきた。
「最近は冷やかしでカセットテープを買いに来るヤツらが多すぎて困ってるんだよね。もうカセットテープは完売してる。なんなんだろうね、ああいうやつらは。いやになっちゃうよね……。ったくもう……ね。……ね?」
──しょええええ〜ッ!! その「ああいうやつら」が、まさに俺ッ……!! あなたの目の前にいる高校生が、まさしく冷やかしでカセットテープを買いに来ているのです! だが、こんな事実を白サマナに話したら即効ポアされる気もするので、私は……
「ですよねぇ〜。きっと興味本位で買ってるんでしょう。本当に困った人たちですよね(キリッ)」
と言い切った。身の危険を感じたので、思い切りウソをついてみた。だが、私のこの発言をきっかけに、白サマナの顔は「パァァ」と明るくなり、「こいつは仲間」的な感じになり、やたらと饒舌に他の商品を説明しまくってきたのである。
・ノリノリで機関誌をオススメしてくる白サマナ
特に白サマナが熱心にすすめてきたのは、オウムの機関誌『ヴァジラヤーナ・サッチャ』であった。パラパラとページをめくりながら、何がどうすごいのかを説明する白サマナ。「次の号は、もっとすごいんだよ!」と、ノリノリ状態の白サマナ。
──完全に帰るタイミングを失った。口の両端に泡をためながら、熱心に「陰謀論」などを説明してくれる白サマナのイキオイは、もう誰にも止められない。どうしよう……。作り笑顔で相づちをうつのも疲れてきた……と、その時! 奇跡が起こった。
・狭い部屋に新たな3人が加わった
いきなり重い入り口のドアが開き、ドカドカドカッ……と、新たな客が3人も入ってきたのだ。これで、どさくさにまぎれて、3人が「靴預かり」をするときに「んじゃ、そろそろ帰ります」つって靴を出してもらえれば自然な流れ! よし!
……と期待していたのだが、新たな3人は客ではなく私服姿の信者だった。狭い6畳の部屋に、信者5人と高校生が1人。前よりもヤバイ状態になってしまった気がする。しかも、白サマナは、私を私服信者3人に紹介し始めようとしている始末だ。
だが、ここで白サマナのテンションは少し落ち着いた。私へのセールストークよりも、私服信者3人との情報交換のほうに流れはシフトしていたのだ。いい流れ。だが、このまま「帰ります」と言ったら、「まてまてまて」となりそうな雰囲気だ。
ということで私は『ヴァジラヤーナ・サッチャ』の最新号を購入し、「また来ますね!」と笑顔であいさつ。そして、ふと玄関に目をやると、いつの間にか私のクツが戻っていた。隠されたのはクツだけど、神隠しにあったような気分になった。
Report:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
▼書いてある内容もイケイケ無敵モード
▼政治家もバッサリと「暗黒帝王」
▼デーブ・スペクターさんも、この書かれよう