厚生労働省と警視庁は2014年7月22日、社会問題になっている脱法ドラッグの新名称を「危険ドラッグ」に選定したと発表した。7月5日〜18日までに応募された新名称案は1万9887件で、「危険ドラッグ」の応募数は102件。
ほかにも「準麻薬(183件)」や「廃人ドラッグ(140件)」などが応募されたというが、“規制の有無を問わず、使用することが危ない物質であると明確に示すもの” として選ばれたのが「危険ドラッグ」であるという。そんな新名称について、ドラッグ事情通のボブ麻亜礼(仮名)氏に話を聞いてみた。
──脱法ドラッグや脱法ハーブが『危険ドラッグ』という名前になりましたが
ボブ「応募してない俺が言うのもアレだけど、なんかさ、チョット違うと思うんだよな。ドラッグは何だって危険だろ。覚醒剤だって危険だろ。ヘロインやコカインだって危険だろ。大麻は法的に危険なだけかもしれないけれど……ともかく言葉としてのインパクト弱いよな」
──ボブさんならどんな名前をつけますか?
ボブ「そうだねぇ……まず思いついたのが『バカ薬』だな。次に『粗悪ドラッグ』。言葉にするのが嫌になるくらいのバカな名前にするべきだと思うよ。バカ薬で問題起こしたら『◯◯◯氏が使用していたのはバカ薬で……』とか報道されるんだぜ? 恥ずかしいだろ」
──それは確かに恥ずかしい。報道する方もバカバカしい
ボブ「俺が思うに、危険ドラッグをやる奴らってのは “ちょっとかっこいいかも” とか思ってるフシがあると思んだ。今流行のチョイワルなドラッグに手を出したぜ、俺ってワイルド……みたいな。でも、俺とかから見たら “恥ずかしい奴らだぜ……” となる」
──何がどう “恥ずかしい” んでしょうか?
ボブ「よし、じゃあビールに例えてみようか。生ビールで酔っ払う人もいれば、発泡酒や第三のビールで酔っ払う人もいる。それはいい。だが、危険ドラッグってのは、ションベンにガソリン入れたドリンクで酔っ払うようなもん。酔っぱらいとして恥ずかしくないか?」
──ションベンにガソリン入れたドリンクで酔っ払うようなもん!!
ボブ「汚い例えになっちゃったけど、的は外れてないと思うよ。危険ドラッグの製造工程とかは、俺も映像でしか見たことないけど、噂とかでは詳細も聞いている。それらを俺の脳内で解釈すれば、ションベンにガソリン入れてビール作ってるようなもんだよ」
──それがボブさんの第二案「粗悪ドラッグ」につながるわけですね
ボブ「そう。まさに。そんな粗悪な偽ビールで酔っ払ってる奴ら、どう思う? 恥ずかしくないか? あとは、口を酸っぱくして言ってるけど、何が入ってるか分からないんだよ。その粗悪さが、なにより一番怖いんだよ」
──危険ドラッグで失明しかけたボブさんが言うと説得力があります
ボブ「おれ、一時期、カンボジアのスラムで生活してたんだ。そんときのスラム仲間たちと酒を飲むとき、彼らですら、ウイスキーを買うときはホンモノかニセモノか注意してたよ。『粗悪なニセモノで失明した仲間がいる。粗悪品には注意だ』と言っていた」
──以前の記事でも、危険ドラッグの怖さについて力説していましたね
ボブ「ちょっと見てみようか……って、ほら! 2013年3月29日の時点で、俺、こんなこと言ってるよ!
『いろんな脱法ドラッグがあるけれど、基本的には正体不明のケミカルだろ。やりすぎたらどうなるのか? 下手すりゃ死ぬと思うよ。少なくとも、体と頭にはよくないよな』
下手すりゃ死ぬって書いてあるだろ! ちなみに神奈川県警のホームページ見たら、平成25年(2013年)で危険ドラッグの死亡者数は5人もいるって書いてあったぞ。神奈川県だけで5人だぞ。悲しいことだけど、俺の言ったとおりになってるだろ」
──確かに。それでは、どうしたらもっと危険性を啓蒙できるでしょう?
ボブ「まあ、危険ドラッグって名前は、もうそれでいいよ。でもね、どんだけ危険なのかってことは、もっと警視庁や厚生労働省、メディアが本腰入れて告知していくべきだと思うな。たとえば製造工場に潜入して、それをドドンと公開してみるとか。どんな奴らが作ってるのか。どんな奴らが儲かってるのか」
──珍しくマトモな意見ですね
ボブ「あとは、じゃあ何で危険ドラッグをやる奴は『やろう』と思うのかってことを考えたほうがいい。きっと『気持ちよくなる』からなんだと思うけど、“その情報しかない” からやっちゃうんじゃないのかって思うんだ。もしかしたらヤバイってことも知ってるかもしれないけど、ナメてるからやるんだろうね」
──なんでナメちゃうんでしょう?
ボブ「そいつらのまわりに “ヤバイ経験値が高い人” がいないからじゃねーの? 先輩みたいなやつらが、いないからじゃねーの? もっとね、どんだけヤバイもんなのかってことを、先輩方が教えるべきだよ。酒の飲み方を年上の人に教えてもらうようにさ」
──その先輩方が危険ドラッグの先輩だったら元も子もないんですが……
ボブ「かもな。でもまあ、経験値の高い先輩が『やめとけ』って言うのは効果あるだろ。今の啓蒙ポスターとかも甘いよな。この前の『脱法ドラッグ撲滅キャンペーンin新宿』で配られたポスターのイメージキャラクターはゴルゴ13だったみたいだけど……方向性が違うよな。ゴルゴ13は人殺しだぞ」
──かといってアイドルを使うのもアレでしょうし……
ボブ「ガツンと一発、インパクトのある、凄味のある、説得力のある芸能人をイメージキャラにしたほうがいい。たとえば内田裕也とか、井上陽水とか、長渕剛あたりがイイと思うな。彼らが『危険ドラッグやめろ』と言ったら説得力あるよ。あ、人選に深い意味はないから」
──ASKAさんとかはどうですか?
ボブ「アイツはダメだ。のりPもダメだしシミケン(清水健太郎)もダメだ。違う話になってくる。キャラのインパクトと説得力が大切なんだ。ファミリーに向けてなら美川憲一とか、コロッケもいいかもしれない。でもやっぱ、内田裕也がいいなぁ。キャラ的にも最強だろ」
──最後にまとめの言葉をお願いします
ボブ「危険ドラッグだろうが何だろうが、よく分からないものに手を出すなってことだよ。あとはダサいことをしてるんだって認識がもっと広まって欲しいな。シンナーとかと同列だよ。ダサいだろ? だからやめとけ。俺から言えるのはそれだけだ」。
参考リンク:厚生労働省、神奈川警察、Twitter @MPD_koh
Report:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
▼こちらが『脱法ドラッグ撲滅キャンペーンin新宿』の様子
【実施結果】本日(7/19)午前10時30分から、新宿駅西口世界時計前広場で「脱法ドラッグ撲滅キャンペーンin新宿」を開催し、都民の皆様に脱法ドラッグの危険性を訴えかけました。脱法ドラッグの撲滅に向けて皆様のご協力をお願いします。 pic.twitter.com/YBdpDYdRLm
— 警視庁広報課 (@MPD_koho) July 19, 2014