ねえ、みんな。上を見てごらん。上には何が見える? 天井? 高層ビル? 雲? もっと上だよ、そのもっともっと上には何がある?
そう、宇宙(そら)が広がってるんだよ。君の上にも、僕の上にも宇宙は広がっている。僕たちはどんなに遠く離れていても、宇宙から見ればひとつなんだ。
もしも宇宙から地球を見ることができたら……。その夢を実現した一人の若者についてご紹介したいと思います。彼は何度も何度も、気球撮影に挑みましたが、失敗続き。それでもあきらめずに10回目にようやく成功したそうですよ。その画像が美しいッ! 素晴らしいッ!! 地球はひとつ! 宇宙もひとつだーーッ!!
・すべては手さぐりから
北海道在住の岩谷圭介さんが、気球撮影にチャレンジし始めたのは2010年8月のこと。海外で、個人が気球撮影にチャレンジしているのに刺激を受け、日本でも実践してみたいと考えたそうです。当時学生だった彼は夏休みを利用して、トライしてみることに。しかしやってみると、これが全然思うように行きません。
すべてが手さぐりです。気球はどのように飛んでいくのか、カメラはどの向きで固定したら良いのかなどなど。初めての挑戦は撮影どころではありませんでした。しかしこれによって、「知るべきこと」を知ることができたのです。
・容易にチャレンジできた
その後も失敗は続きます。ですが、幸いだったのは比較的簡単にチャレンジできたことではないでしょうか。必要な材料はホームセンターとインターネットで調達できます。また、北海道という場所が彼のチャレンジをより容易にしていたともいえるでしょう。
他の地域では、飛んで行った気球が海に流されて回収不能になることも想定されます。また山林に紛れてどこに行ったのか、わからなくなることも考えられます。広大な平野を持つ北海道だからこそ、撮影は可能だったのです。
・撮影の流れ
写真撮影の流れは以下のようになっています。
1.カメラとGPSを付けた気球を空に放つ
2.上空で風船が割れ落下
3.着陸するとGPSが作動
4.場所を特定し回収
5.カメラの画像を回収
「気球はジェット気流に乗って大体100キロ程度流されるので、とても長い旅をします。落下位置は正確に予測できないので30キロ程度の誤差が出ます。北海道でないと回収するのがとても難しいかと思っています」と、彼は説明してくれました。
やはり、北海道在住だからこそ、継続してチャレンジできたのではないでしょうか。
・3万3000メートル
挑戦を開始してから2年。2012年9月28日、岩谷さんはついに成功と呼べる瞬間を迎えます。改良に改良を重ねた10号機は、高度約3万3000メートルに到達しました。でも、気球が飛んで行っただけでは、まだ成功と呼べません。カメラで撮影したデータを回収しないことには。どこに落ちるかということも、経験上予測がついています。運も味方してくれたおかげで、山の一歩手前に落下。安全に回収したのです。10号機の画像を初めて確認した感想について、彼はこう語っています。
「画像そのものも神秘的で感動的なのですが、それ以上に自分が手を放しふわふわと空に飛び立っていった頼りない気球が、長い旅をして再会できた時の感動はとても素晴らしいものでした」
・今度は深海に挑戦!
ちなみに彼は、今後もたくさん撮影をして行く予定とのことです。ただし今度は深海にも挑戦して行きたいと考えているのだとか。好奇心の続く限り、彼のチャレンジは続きそうです。なお、岩谷さんの気球の打ち上げは、航空法にのっとった申請を行った上で安全かつ万全の注意を払い行われています。
参照元:気球宇宙撮影(数多くの画像を見ることができます)
▼ 2012年10月8日撮影
▼ 2012年9月28日撮影
▼ カメラを回収した岩谷さん
▼ 気球宇宙撮影の原理を説明する動画