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2012年の夏、筆者は取材でサハリンに行った。北海道稚内から船に乗り5時間半で港町のコルサコフへ。そして帰りも同じ船に乗り稚内に戻った。サハリンは完全にロシア化していて、昔の日本の面影はほとんど見られない。もちろん随所に日本の建造物が残されていたり当時の写真が博物館に展示されていたり、見所はたくさんあった。日本人にとって非常に感慨深い場所であったことには間違いないだろう。

さて、そんなサハリンで、ある日本人男性に出会った。彼は北海道で会社を経営していてユニットバスやキッチン、トイレの施行や販売をしている。今回はある大手メーカーの依頼でユニットバスやトイレの組み立て方をロシア人に教えにいったそうだ。

<その男性との旅のはじまり>

・車で4時間半、約245kmの旅
稚内港到着後、筆者が「これから旭川に行くんです」と言うと、彼は「方向が一緒だから私の車に乗っていきませんか?」と言ってきてくれた。なんでも彼は旭川に住んでいて今回稚内港までは車で行ったそうなのだ。筆者は最初「悪いなぁ」と思ったが、有り難く乗せて頂くことにした。

・車中では…
話はとても盛り上がった。家族の話、会社経営の話、北海道の話、もちろんサハリンの話など。彼はとても聞き上手であったし、その一方で話し方も非常に優しかった。「会社の社長なのにこんなに謙虚でいいのか」と思ったぐらいだ。だが、筆者はそれが好きだった。

・ホテルの予約
車中、旭川でビジネスホテルを取ろうとネット検索してみる、が! 空きがまったくない。すると彼はパーキングエリアに車をとめ知り合いに電話を掛け始めた。旭川近くにあるホテルの名前を聞き出してくれたのだ。そしてなんとかホテルの予約を取ることができた。

・夕食を食べに回転寿司屋へ
旭川に到着後、お腹が空いたということでオススメの回転寿司屋さんに行くことに。30分ほど並びようやく席に着く。運転が大変だったのか彼の口数は少ない。しかしお寿司を食べてテンションも上がりまた会話が盛り上がっていく。お会計の際には筆者が払おうするも「全然だいじょうぶです、東京に行った時、ごちそうしてください。」と言ってごちそうしてくれた。

・ホテルへ
夕食後は車でホテルまで送ってくれることに。しかも別れ際には余った通貨「ルーブル」を全額くれた…。

「私はもうサハリンには当分行かないし、でもYoshioさんは行くかもしれないでしょ。だから少しだけどもらってください」

感謝 感謝 感謝(涙)こんなすばらしい出会いがあっていいのだろうか、こんな初対面の人間に優しくしてくれていいのだろうか、私も同じような状況になったら優しく他人に接することができるのだろうか…この出会いは色々なことを考えさせられたし、もっと人を大事にしたいと思った。人生って意外と素晴らしい…。

(文=写真 Yoshio)

Russia, サハリン州 P488